皆様、MyAge春号に掲載された対談「がんと言われたとき知っておくといいこと」を、読んで頂けましたでしょうか?
保坂隆先生から精神腫瘍医としての貴重な情報が得られのではないかと嬉しく思います。なにせ病気と心は密接ですから。
今乳がんを扱う乳腺外科はどこも超のつく満員状態です。
メディアでも海老蔵夫人の麻央さん、南果歩さん、それに加えて先日は藤山直美さんが乳がんを発表され、主演舞台をキャンセルされましたね。
今乳がんの平均発症年齢は60歳前後、かつては30代後半から40代後半の患者さんが多いのが日本の特徴でしたが、この10年で発症年齢が急激に上がっています。
乳がんの治療は癌の中でも最も進んでいると言われ、タイプ別、進行度別に細分化され、それぞれにあった標準治療がほぼ確立されています。けれども手術、抗がん治療、放射線の他に、私も含めた乳がんの約7割の人が取り組むホルモン治療についてはあまり理解されていないのではないでしょうか。抗がん治療の激しい副作用の陰に隠れて、5年から10年という長期に渡るホルモン治療の副作用の苦しさ、つらさは乳がん担当医(ホルモンは内分泌なので外科医はあまり知識がない)もわかっていないように思います。
乳がんのホルモン治療とは更年期のホルモン補充療法の真逆で一切の女性ホルモンを体からカットする治療です。女性ホルモンに反応する乳がんのタイプに適応されます。閉経後は、副腎から分泌される男性ホルモンが、体内の酵素の働きで、僅かですが女性ホルモンに転換する仕組みがあります。閉経後の乳がんホルモン療法は、その酵素の働きを邪魔するので、結果身体中から女性ホルモンを根こそぎ奪います。副作用というのは個人差がありますが、根こそぎ状態を5〜10年続けなければならないのはかなり厳しいことです。
その代表が骨密度の低下です。どの程度落ちるかは個人差がありますが、女性ホルモンが全くなくなるのでほぼ100%の人の骨密度が低下すると言われています。閉経でただでさえ骨密度が低くなっている所に追い打ちをかけます。結果乳がんの再発は免れても骨粗鬆症になり、骨折、寝たきりなどQOLが大幅に低下する可能性があります。私はこのことを知っていたのでホルモン治療を始める時に、医師に「骨密度低下を防ぐ処置を同時にスタートしてほしい」と頼みましたが、その時点では骨密度が減っていないので、予防行為となるため保険適用にはならないと言われました。大きな病院では保険適用外の治療を医師から勧めることは少ないです。実際知り合いも些細なことで手を骨折し、自分の骨密度低下を初めて知り、低下を防ぐ注射をうちました。でもその時点で既に骨密度は下がっています。
手術から1年が経とうとしています。あと4年、私の女性ホルモン根こそぎ状態は続きます。何とか上手く乗り切っていけることを願っています。