進行性で誰にでも起こる可能性がある骨盤臓器脱。その種類と治療法について詳しくご紹介します。
もし臓器脱になっても慌てずじっくり治療法を相談
骨盤臓器脱は進行性のもの。何もしないでいると、腟口が緩み、さらに腟から出やすくなります。
飛び出すたび簡単に手で戻すことができるため、意外にそのまま放っておく人もいますが、さらに症状が進めば、ちょっと腹圧をかけただけで腟や臓器が落ちてくるようになってしまうのです。
服の上から手で押し戻したりしても、内臓は傷つくことがないとはいえ、QOLは明らかに下がってしまいます。
初期のうちなら、専門家に正しい骨盤底筋トレーニングを受けることで治るのもこの病気の特徴。
また、軽度の場合や手術をしたくない場合には、骨盤底サポーターや腟に入れる「リングペッサリー」を使う方法もあります。
根治手術としては、腟からと腹部からのアプローチがあり、人工メッシュを使わない従来手術(腟壁形成術、子宮摘出)、経腟メッシュ手術(TVM手術)、腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC手術)が選択肢に。
骨盤底フレイルの最終形
骨盤臓器脱のいろいろ
腟から子宮が落ちてくる子宮脱
子宮の一部、または全部が腟から出てくる症状。子宮の前方にある膀胱、後方にある直腸も一緒に下がってくることが多く、子宮が落ちかかっているときは、すでにほかの臓器もその可能性が高いようです。
●正常な子宮
健康な人は、すべての臓器が骨盤底にしっかり支えられ、適切な位置に保たれています
●軽〜中度の子宮脱
腟口からはっきり顔を出すまで落ちてくると、骨盤底筋体操では戻らなくなります
●完全な子宮脱
子宮が全部腟口から脱出している状態。戻すのも大変な状態で、手術を推奨されます
そのほかの臓器脱
骨盤底が緩むと、骨盤内にある臓器はどれも落ちてくるリスクがあります。「子宮を摘出したから何も落ちてこない」と思うのは間違いで、腟壁自体が靴下を裏返したように落ちてくることも!
●膀胱瘤(りゅう)
いちばん多いのが、前側の骨盤底が緩み、膀胱が腟壁とともに落ちてくる膀胱瘤
●直腸瘤
直腸が腟壁と一緒に落ちてくる状態。飛び出た部分に便がたまり排便障害にも発展
●腟断端脱
子宮を全摘出した人に起こるのがこれ。腟壁自体が落ちてきてしまった状態です
●小腸瘤
小腸と腹膜が腟と直腸の間に垂れ下がった状態。子宮全摘出したあとに多い症状
お話を伺ったのは
対馬ルリ子さん
Ruriko Tsushima
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。産婦人科医、医学博士。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評。
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八田真理子さん
Mariko Hatta
産婦人科医。1998年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』 (アスコム) など。
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イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子