イーク表参道副院長。産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。ヨガ指導者。婦人科の診察を通して女性の健康を支える。テレビや雑誌、Webなどでの心や体の悩み相談をはじめ、音声発信アプリstand.fmで毎日発信している「高尾美穂からのリアルボイス」は、再生回数1100万回を超える人気番組。著書多数
不調と原因。因果関係の観察が重要と実感しています
疲労感から関節痛、ホットフラッシュ、睡眠問題が
私が働き方のスタイルを変えたいと思うようになったのは、30代後半頃。夜中のお産が続くと日中は集中力が落ちる感覚になり、大学病院の医局を辞める決心をしました。夜しっかり眠れるようになって不調は解消したと思いきや…。再び「あれ?」となったのが40代半ば。30代の疲れとは違い、仕事が終わると電池が切れたように、カクッと動けなくなったのです。
20年以上続けているヨガでも、床に手をつくポーズで、手首の関節が時々痛むように。「このままずっと痛かったらどうしよう」と、しばしば不安な気持ちになりました。また、2年ほど前は、ホットフラッシュにも悩まされました。時間にすれば短いものの、夜中でも大量の汗をかいて目が覚めてしまう。
睡眠アプリ「スリープサイクル」を7年続けているほか、「フィットビット」も活用するなど、睡眠には関心があって学んでいるのですが、昔ほどよく眠れていないという感覚は続いています。とはいえ、あまり深刻には考えていません。
日常生活を振り返って不調の原因を探る習慣を
私は今も、そんな更年期の真っただ中です。以前2回のエクオール(女性ホルモンに似た働きをするエストロゲン様作用)検査を経て、自分はエクオールを作れないと知っているため、サプリを5年ほど飲み続けています。疲労や関節痛、ホットフラッシュや睡眠の質が悪いといった不調はあるものの、あまり悪化せずに対応できているのは、エクオールでカバーできているからなのかなと思います。あとは好きな運動をして食事に多少気をつけるなど、生活習慣からも更年期症状の対策をするようにしています。
更年期の相談で来院される患者さんに必ずお聞きするのは、「何が不調の原因だと思いますか?」ということ。それは必ずしも正解でなくてもOKで、まず原因と不調の因果関係を、自身で一度考えてみることが大切だと思っています。
わかりやすいのが睡眠。例えば、「昨日は遅くまで動画配信を観たな」「寝る前にコーヒーを飲んだな」など、朝起きたときの状態は、原因を探しやすいわけです。自分の昨日、1週間、1カ月の間にいったい何が不調の原因になっているのか見つめる習慣を持つ。すると「今週はなるべく早く寝よう」とか「一度、婦人科で数値を診てもらおうかな」といった解決策にも、自分でたどり着けるようになっていきます。
更年期の不調を抱えている方は、目の前に霧がかかっているような状態で落ち込みがちですが、日常生活の振り返りの習慣を持つと、できることはたくさんあることに気づき、霧は晴れていきます。私自身さまざまな体験をしたいと考えているため、意図的に特別な対策をせず、ホットフラッシュを“味わっていた”ときは、睡眠アプリで観察し、ベッドサイドに着替えを置いて、明かりをつけずに着替えるなど、自分でできる工夫をして乗り切ってみたことも。
更年期症状の原因の中でも、「そんなこと」と思えるようなことに、実は体調にかかわる要因がたくさん隠れています。受け身でやり過ごすままではなく、能動的に、アクションを起こしていきましょう。
MY更年期STORY
40代半ばで突然、電池が切れたような疲労を感じるように。エクオール検査の結果から、エクオールを飲み始める。同時期、ヨガの際に手首の関節痛を感じるようになり、睡眠中のホットフラッシュから中途覚醒に悩まされるように。現在は更年期真っただ中。エクオールと前向きな考え方で、毎日を楽しく過ごしている。
構成・原文/井尾淳子