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【更年期、田中ウルヴェ京さんの場合。】ちゃんとイラつく、ちゃんと落ち込むことも大切です(インタビュー後編)

その年齢も、期間の長さも、症状の有無も。驚くほど個人差のある更年期。閉経する年齢も大きく異なります。大活躍しているあの人は、どんな更年期を体験しているのでしょう? それぞれの貴重なエピソードを、自身の言葉でお届けします。

子宮頸がんの手術やストレスフルだった大学院の博士課程を乗り越えた田中ウルヴェ京さん。メンタルトレーニングの専門家だけあって、毎朝自分の心と向き合い、気持ちの浮き沈みにも対応しています。「きちんとイラつく」「きちんと落ち込む」ことが大事だと語るウルヴェさんに、更年期のメンタルを整える方法についても伺いました。

 

子宮頸がん、閉経後の性交痛について語った田中ウルヴェ京さんのインタビュー前編「閉経後に、心と体の思わぬ変化が」はこちら

 

田中ウルヴェ京さん(57歳・スポーツ心理学者、五輪メダリスト)

田中ウルヴェ京 更年期、私の場合。後編

 

メンタルのバランスを整えるため、朝は自分の頭と対話

子宮頸がんになったことがきっかけとなり、ピラティスを習慣化したウルヴェさん。更年期に乱れやすい自律神経のバランスも整ったということですが、そもそもウルヴェさんはメンタルの専門家です。自身の心も上手にコントロールされているのでしょうか?  イライラしたり落ち込んだりしたときはどう対処していますか?

 

「更年期の症状はほとんど自律神経の乱れからきていますからね。マインドフルネス、感情の調整は心がけています。

感情のコントロールというと“抑制”と思われがちですが、大事なのは『ちゃんとイラつく』『ちゃんと落ち込む』ことなんです。ただ、落ち込み続けないコントロール力はトレーニングしないといけないので、そういう意味で気をつけています」

 

メンタルのバランスを整えるために、毎朝行っていることがあるのだそう。

 

「私自身が行っていることは、交感神経と副交感神経を意識すること。起きたらまず、『今日はまったりしていて副交感神経が優位な感じだね、ミヤコ〜?』とか独り言を言って自分とお話しします(笑)。

朝の自分と話すことはすごく有用なんです。体調を気にするのと同じく、『今日の調子はどうですか〜?』と頭の中と対話をすることで、そのときの“気分”と本当の“自分”を分けて考えられます。例えば、私、雨の日はたいていやる気がなく憂鬱なんですが、『これは雨のせいであって、自分のせいじゃない』と分けて考えられるようになるんです」

弾ける笑顔が印象的なウルヴェさんですが、意外なことに「楽観的という言葉があまり好きじゃないんです」と言います。

 

「ちゃんと自分のネガティブに気づくことは大事です。気づかないと修正すらできないから。人生って真剣に生きようとすれば、当然難しく苦しいものだと私は思っています。そう思っていれば、ちょっとしたありがたいことにも感謝ができます。でも、何でもかんでも楽観的になっていたら、日々の大事なことに気づけない。反省もしなくなっちゃうし何のチャレンジもできない。

体だって、年齢とともに衰えるし、それを受け入れるときは、簡単には受け入れられない自分のネガティブさに気づくしかない。実際、何に対して私はネガティブになっているのか、分析する力をつければいいだけなんです。自分の感情や思考を分析し、次の行動をつくっていくことこそメンタルトレーニングでできることです」

 

田中ウルヴェ京 更年期、私の場合。後編

 

何もやる気がなかった時期を乗り越え、今は“ハマり期”

 

心理学的にも、40代後半から60歳までは非常に大切な時期なんだとか。

 

「女性ホルモンが激減するという体が変化する時期ですが、心理学的にも大切な人生の節目の時期なんです。しっかり過去の自分の棚卸しをしようというか。棚に上げていた自分の課題を下ろして、ちゃんと向き合うことが60代以降の自分ならではの幸せをつくるために必要なことです。

 

人によって棚に上げていたことが家族関係のことだったり、仕事のことだったり、プライドやコンプレックスの問題とか…いろいろありますよね。それまで見ないようにしていたものを直視して『うわー』っとなって、そして、これからどうする?  やれることは何だろう? そういったことを60歳頃までに…ちょうど更年期と重なる時期ですが、考える。とても困難な時期だけれど、このときの自分のつくり方で、60歳以降に本当の意味で人の役に立つ高齢者になっていけるんです。

これ、20代の頃から私が大事にしているエリク・H・エリクソンという発達心理学者の考え方です」

40代前半に子宮頸がん、40代後半に更年期に入ってからは博士号取得のために大きなストレスを抱えていたウルヴェさん。閉経して更年期の後半といえる今は…?

 

「自分はどうかと言われれば、少し前までは“バーンアウト(燃え尽き症候群)”状態でした。博士号を取ったあと、去年の秋くらいまでは、仕事はしていたんですけどその実、なーんにもやる気がなかったです。

人にはメンタルセッションで、『どんなにやる気がなくても、今やれることをやればいいだけです』なんて偉そうに言ってたくせに、『あー、やる気ない、やる気ない』ってずっとブツブツ言ってました(笑)。最近になってようやく復活したというか。やっと次の人生の目的や目標が頭の中で明確になり始めてきています。そうすると、プライベートにも元気は出てくる。若い頃は全然好きじゃなかったゴルフが急に楽しくなってハマったりしています。明日もコースに出るんですよ」

 

やる気が復活したことで、ほかにも趣味が増えたのだそう。

 

「ゴルフ同様、まったく興味がなかった着物にも今夢中です。実家の母や祖母の着物を処分することになり、着物屋さんに持っていき始めたのがきっかけなんですが、古い着物を直してもらったりするうちに、着付け教室にも通うようになりました。着付けができるとさらにハマってしまって。祖母の着物に包まれると、大好きだった祖母の思いに近づけそうな気がするし、ちょっとした機会に着物を着て出かけるのが楽しいんです!

もともとこれやりたい、と思うとハマるタイプではありますが、30代40代、54歳まではスポーツ心理学にしかハマってこなかったので。今、人生でいちばん、あれこれハマりやすい年頃なのかもしれません」

 

家事もウルヴェさん流で楽しんでいるのが印象的でした。

 

「子どもたちも独立してしまったからやるべき家事は減ったんですが、掃除とか料理とか家事をしながらちょっとしたエクササイズをしています。掃除は瞑想の時間にもなるの! 『らららららら〜〜♪』って掃除機をかけたり、拭いたりするのは頭をリセットする作業でもあるんです。皿洗いなんかもっといいです、頭のリラックスタイムなんですよ」

 

●HAPPYに過ごす秘訣●

田中ウルヴェ京 着物

いちばんのお気に入り、パリの地図柄着物。ひとめ惚れした「ケイまつい」の着物に、祖母から譲り受けた帯で。パリの地図が描かれ、背中にはParisの文字も。もちろんセルフ着付けです。

 

 

田中ウルヴェ京
Miyako Tanaka-Oulevey, Ph.D.
1967年生まれ。’88年、ソウル五輪シンクロ・デュエットで銅メダル獲得。引退後は日米仏の代表チームコーチ業とともに、米国大学院へ留学して修士号取得(スポーツ心理学)。2021年、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科博士課程にて博士号取得。現在、慶應義塾大学特任准教授、日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング上級指導士、また、IOCの委員や報道番組のコメンテーターなどを務め、トップアスリート・経営者・ビジネスパーソン等幅広くトップパフォーマーの心理コンサルティングに従事。アスリートが学び合うコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰。著書に『心の整えかた トップアスリートならこうする』(NHK出版)ほか多数。

Instagram:@miyako.tanaka.oulevey

 

撮影/富田一也 取材・文/蓮見則子

 

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