調理器具の「鬼おろし」をご存じですか?
周囲の50代に聞いてみたところ「知っているけれど持っていない」「必要なの?」という人がほとんどでした(マイナンバーカードのCMみたいですね 笑)。
私も以前はそうでしたとも。
今、私は声を大にして言いたいのです。
大根おろすなら「鬼おろし」。そのほうが断然お得でしょ!
と。
そもそも鬼おろしとは?
よくご存じの方も多いと思いますが、念のために説明しますと、鬼おろしというのは、竹で作られた大根おろし器で、一般的なおろし金に比べて、大根おろしが粗めに仕上がります。恐ろしげな名前の由来は、刃の部分のギザギザが鬼の歯のように見えるからとか。確かに、節分の鬼の絵でも、こんなギザギザの歯が描かれがちですよね。
竹の木枠に竹の刃が差し込まれています。このタイプは釘を4本だけ使用。精密な作りで日本製ですが、価格もそれほど高くありません。こちらは昨年東急ハンズで1760円で購入しました。ネットで検索すると(生産国は確認していませんが)だいたい1000円台~2000円台で、いろいろ売られていましたよ。
さて、かくいう私も、以前は鬼おろしの存在を知ってはいても持っていませんでした。なぜ、その魅力にはまったかといいますと。
「これが大根!?」鬼おろしの魅力に気づかせてくれたのは料理家の渡辺有子さん
そもそも90年代から自宅で使っていたのは、京都の老舗のおろし金。
いいといわれるものは使ってみたいタイプです、はい。しかしですね、使い方が雑だったからか最近使っていないからか、今となってはこんなムラができてしまいました、すみません。見た目はともかくとして、長年満足して使っていましたよ。
一方、鬼おろしとの出会いは2009年。金沢のガラス作家・辻和美さんの食器に、料理家の渡辺有子さんの料理を盛っていただくという、夢のようなコラボの作品展示ランチ会が開かれ、友人に誘われプライベートで参加した時です。
美しい器でいただくお料理はどれもおいしく、心ゆくまで堪能させていただきましたが、その中の小さな一品が、めちゃ好みの味なのだけれど、食材がよくわからない。当時、バーニャカウダの流行もあって新野菜がどんどん世に登場した時期だったので、未知の野菜なのか!? と渡辺有子さんにお聞きしましたところ、意外な答えが返ってきました。
「これ、大根なんです。鬼おろしでおろしたから歯ごたえもあるでしょう?」
おお~。いつもの大根のように辛くないしサクサクしている!「味」も「歯ごたえ」も全然違うではないですか~!
それまで鬼おろしを使う意味合いを理解していなかった私、このおいしさを家でも味わいたい! と即、買いに走りましたよ。
その時からかれこれ12年使っていた鬼おろしが、キッチン水栓の水漏れでカビてしまったことを、昨年書きました(「キッチン水栓(蛇口)の寿命が約10年って知っていましたか?」)が、それがこちら。すみません。かびた写真しか残っていません。
使った後さっと水洗いして、半日程度キッチンに立てかけて乾かしてからシンク下にしまう、の繰り返しで、12年間、問題なく使えていましたよ。シンク下の水漏れに気付くのが遅れ、カビさせてしまったのは本当に悔やまれます。
この初代鬼おろしは、竹筒を利用し、釘を1本も使わない作りでした。すごい!
先ほどお見せしたのは昨年買った2代目です。今は2代目の作りのほうが主流のようです。
私が「鬼おろし」を推す3つの理由
我が家では10年以上、大根おろしはおろし金でなく「鬼おろし」でおろすのがお決まりになりました。その結論に至ったのにはこんな理由があります。
1. 水分が出にくいから栄養を丸ごと摂れる
左がおろし金、右が鬼おろしでおろしたものです。おろし金は水分がかなり出ますが、鬼おろしは、ほぼ出ていないのがおわかりになるでしょうか。
基本的に「もったいない気質」の強さゆえ、栄養をすべて摂り尽くしたい私。おろし金でおろしていた当時などは、おろした大根を軽く絞って夫の皿に盛る ⇒ 残ったものを全部自分用の小鉢に入れる ⇒ 箸で運べる分を食べた後、残りの汁を完全に飲み干す、が私の一連のルーティンでした…。はい、お行儀が悪くて、よそ様にはお見せできませんとも。
大根には、ビタミンCや消化酵素、血栓や発がん性を抑制するイソチオシアネートなどが含まれますが、煮るとビタミンCや消化酵素が損なわれてしまうそう。また、ビタミンCやイソチオシアネートは皮の近くに多く存在するそう。つまり皮をむかずに火も通さない、「そのまま鬼おろしでおろす」のが、いちばん栄養を逃さない食べ方ではないですか! その結論に至り、ずっと実践してきております。
2. 歯ごたえがあって、食べた満足感を味わえる
鬼おろしでおろすと、大根がみじん切りのようになり、シャキシャキとしたほどよい歯ごたえが出ます。もちろん、おろし金でおろした、さらっとした大根おろしがお好きな方もおられると思いますが、私はしっかり噛んで食べて、満足感を得られる点を気に入っています。薬味や添え物としてではなく、簡単におかずの一品になる点でもお得感があるなあ、と。
何の工夫もない時短おかずですみません…。味付けもせずに、そのままの味を楽しむ派です。
3. 辛味が出にくい分甘みが味わえ、たくさん食べられる
大根の辛み成分は、細胞が破壊されることで出てくるのだそう。鬼おろしは、細胞を細かく破壊しないため辛みがでにくい。よって大根が持つみずみずしい甘みを堪能できて、たくさん食べられるのです。今日はランチやおやつに糖質ばかり食べ過ぎたなあ、と罪悪感を感じることってありませんか。そんな時は夕食に大根を鬼おろしで多めにおろして、味のしっかり付いたおかずと交互に食べると、ごはん減らしやお酒減らしができるんですよ~。私は、これで罪悪感を減らしています、はい。
往復?引く? 鬼おろしの正しいおろし方は
さて、大根おろし作業の問題点といえば、手や腕が疲れること。少しでも軽く楽におろしたいですよね。
伝統的なおろし金は、刃の向きが一定なので、おろす向きがおのずと決まってきます。向こう側から手前に引きますよね。
その点、竹製の鬼おろしは刃が真上向きで往復できてしまうので、私は無意識に往復でおろしておりました。
ところが。今回メーカーさんのサイトで知ったのですが、鬼おろしもおろし金と同様「引くだけ」が正解なのだそうです。比べてみますと、たしかに往復した場合は、向きを反転する際に抵抗や引っ掛かりが出ていちいち強い力が必要です。それが手前引きの一方向にすると抵抗がかかりにくく、力のかけ具合を統一でき、リズミカルに軽くおろせました。慣れると手前引きだけのほうが俄然楽でしたよ~。
ちなみに、鬼おろしのことを調べようと、検索窓に「おに」まで入れたら、ダダーっと出てくる候補は「鬼滅の刃」関連が上位を占めました。ちょくちょく鬼おろしのことを調べた私の検索窓ですらなので、「鬼滅の刃」の盛り上がりは続いていますね~。
実は私も「鬼滅の刃」の主人公・炭治郎が困難な戦いの最中に「考えろ、考えるんだ」と戦い方を冷静に分析・思索する場面で、毎回心動かされます。自分自身も困難な状況に陥ったときには焦らず逃げず「考えろ、考えるんだ」と言い聞かせるように。
ま、私の困難と言いましたら、電車の乗り継ぎに失敗したとか、肝心な時にログイン出来ないとか、撮影用のいい大根が見つからない、とかその程度のことなのですが…。
さてさて、今回も失礼して「定年女子あるある(かもしれない)川柳」を。
大根も 漫画もなぜか 推しは「鬼」
おまけです。
実は、軽くおろせるのを売りにした樹脂とステンレス製の現代版鬼おろしを見つけて今回買ってみました。さまざまな工夫がされていて惹かれたのですが、私が試すと、どうにも竹の鬼おろしのほうが早くきれいにおろせてしまうという結果に。
うん、私はこれからも、伝統的な竹の鬼おろしで大根を堪能しよう、と思いを新たにしました。
竹製鬼おろしは、真横から見た姿も美しい!