コロナ禍の中、自分との向き合い方を語ってくれた松本孝美さん。そのひとつが、「もの作りがストレス解消になる」という発見でした。今回は特にハマったというマスク作りについて、詳しくご紹介してくれました!
マスクの手作りで、前向きな気持ちになりました
ステイホームで生活が規則的になり、時間的余裕はあるはずなのに、3度の食事作りに追われる気分になるのがちょっとしたストレスになりました。
「もともと、時間の使い方がうまくなかったんだなあ…」と自覚しましたが、しだいに物事を長いスパンで考えられるように、気持ちが変化していったんです。
きっかけは、マスクの手作り。作っているうちに、ミシンでちょっとしたカーブが縫えるようになったり、中心をつまんで十字にステッチを入れると、鼻と口の間に空間ができて、呼吸が楽になったり(つまむ分量を多くすると、鼻高効果も!)。
そんなふうに、自分の作るものがどんどん進化していくプロセスが面白くて、マスクばかり作っていました。
材料不足で入手困難だった時期は、家にあるハンカチやさらしなどを利用しました。絹の真綿は重ねて使えることがわかったので、フィルターの代わりに縫いつけてみたりして。
100円ショップで1mのゴムを見つけたので、「マスクホルダーにすればなくさないのでは?」と思いついたりもしました。
消費する生活から、知恵と工夫に立ち返る機会に(松本孝美さん)
ちょうどその頃に、日本全国の古本屋さんが登録しているサイトで、ずっと探していた『わたしは驢馬(ろば)に乗って下着をうりにゆきたい』という本を入手。著者は、白のメリヤス下着しかなかった1950年代、新聞記者から下着デザイナーに転身した鴨居羊子さんという方です。
先駆者としての生き方やセンスにはすごく刺激を受けましたね。自分ができるのは小さなことだし、未来は今よりもっと便利なものがあると思いますが、「もしかすると、こんな工夫が何かの形で後世の人の役に立つかも?」なんて、ちょっと壮大かもしれませんが(笑)、そんなことを思いながら楽しんでいます。
消費が中心の生活から、身のまわりにあるものを工夫して暮らす――。コロナという出来事を通じて、今はそんな原点に戻っているのかもしれませんね。お店だって昔は6時には閉店だったし、24時間のコンビニもなかった。何もかもが便利じゃなくても成り立っていた時代。
今は、もう一度、知恵を使うことに立ち返る機会でもあるのかな、と。そんなふうに、少しでも前向きに、このパンデミックの経験を役立てるように生活していくことが大事なのでは、と思っています。
松本孝美さん Takami Matsumoto
モデルとしてファッション誌や広告で活躍中。服や小物のリメイク、料理などに造詣が深く、アイデアに富んだもの作り、自然体で丁寧に楽しむ暮らしは憧れの的。近著に『暮らし彩る“大人のままごと”』(光文社)
Instagram:@t_mimi1414
撮影/天日恵美子 ヘア&メイク/小澤実和 取材・原文/井尾淳子