人とのつき合い方をテーマにした話題の絵本『子どもを守る言葉 「同意」って何?』から、大人になっても難しい「上手にNOを言えるようになるための6つのステップ」前編をご紹介します。
お話を伺ったのは
藤岡淳子さん
Junko Fujioka
大阪大学大学院名誉教授、もふもふネット代表、臨床心理士、公認心理師。非行や犯罪行動のある少年と成人の教育プログラムの実施や管理・監督などに力を注ぐ。『性暴力の理解と治療教育』(誠信書房)など著書多数
『子どもを守る言葉 「同意」って何? YES、NOは自分が決める!』
レイチェル・ブライアン 作
中井はるの 訳
世界中で大人気の動画『Tea Consent(お茶と同意)』のアニメーターである著者が「同意」の概念とともに、自分自身と相手を大切にする意義とハウツーを紹介する絵本。ポップなイラストとともに“人間関係”のABCがわかりやすく描かれ大人にも人気。
¥1,760/集英社
◆『子どもを守る言葉 「同意」って何? YES、NOは自分が決める!』詳細はこちら
あなたにも言える!
NOを言うための6つのステップ 前編
自分をどうするか、本当に決めていいのは「自分」だけ
絵本『子どもを守る言葉 「同意」って何? YES、NOは自分が決める!』で、最初に紹介されているのは、「自分は“自分の国”の王」だということ。
ステップ1
自分は「王」だと知る
まず、大前提として心に刻みたいのは、「自分は自分のもの」ということ。たとえ家族や長年の友人、自分より強い立場の人であっても、自分以外の誰かが自分の心や体(行動)を支配するのは間違っています。自分が望まないなら「しなくていい」んです。
「日本人はその認識が希薄。特に女性は『親には孝行しないと』とか『夫には従うべき』など、自分を後回しにして家族に尽くすことを長年求められてきました。目上を立てる文化も根強い。それらが重なって、親やパートナー、立場が上の人にNOが言いづらいのです」(藤岡淳子先生)
だからこそ「自分は自分のもの。他者に心や行動を支配されることはない」と、再認識することが大切。
「ただし、それを実践するには自分の考えや想いを明確にするなど、自分と向き合う作業が必要です。なんとなく流されがちで来てしまった人も、まずそこから始めてみてはどうでしょう?」
自分の「バウンダリー(境界線)」を決める
改めて自分を見つめると、「本当はこう思っていたんだ。こうしたかったんだ」といった気づきがあり、「もっと自分を大切にしよう」という気持ちになれるかもしれません。同時に「これはOKだけど、これはイヤ」などと、「バウンダリー(境界線)を決める」と、断わるのもスムーズになります。
ステップ2
「バウンダリー」を決める
ほかの人に踏み込まれてもいい/イヤの境界線=バウンダリーは、人それぞれ違います。まずは自分のバウンダリーを改めて考えてみて。バウンダリーは相手により、状況によっても違うし変わる。昨日はOKだったことが今日はイヤなど、自分の気持ちで撤回しても問題ナシ。自分の国の境界線を守ることこそ、王の役目なのだから。
本当にそうしたいか否か、自分が「決める」
自分にとっての境界線が確認できたら、次にすべきは、どうするかを「自分が決める」ことです。
ステップ3
自分が「決める」
バウンダリーが決まったら、それを基準に相手の提案に同意するか否か、自分で決めればいい。「ここでNOを言ったら、相手が怒りそう」「YESと言わないと、あとで面倒なことになりそう」などと相手の気持ちや反応を気にせず「自分は本当にそうしたいか否か」を優先して。
本当にイヤなときは断ったり、逃げたりしていい
本当はイヤなことでも、「拒んだら激怒されそう」などと心配し、NOが言えない場合もありますが、「イヤなときは断ったり、逃げたりしていい」のです。
ステップ4
イヤなときは断ったり、逃げたりしていい
そういう時は、かまわず逃(に)げるなど、イヤって言う気持ちを言葉や行動(こうどう)で示(しめ)してもいいんだよ
頑張ってはみたものの、やっぱりNOが言えない、拒絶しても相手が受け入れてくれない。そんなときは逃げ出してもOK。相手との関係が悪化したり、途切れたとしても、最優先すべきは、自分を守ること。心と体が悲鳴を上げる前に「逃げるorかわす」「相手と距離を置く」「仲間に入らない」「SNSをスルー/ブロックする」などの対策を。
「基準にするのは、相手の気持ちや反応ではなく、自分はどうか。大切なのは、自分の心と体、ということを、今一度思い出してください」
次回は、「NOを言うための6つのステップ」後編をご紹介します。
イラスト/©レイチェル・ブライアン(『子どもを守る言葉「同意」って何?』より) 構成・原文/村上早苗