進化する京都ラグジュアリーを体現するホテルの魅力は、しみわたる「アート」な意識
先のゴールデンウィークは、ひさしぶりにさまざまな規制のハードルが下がった連休。気をつけながらも「旅のある日常の楽しさ」をあらためて味わった方も多いのでは?
中でも人気だったのは、やはり京都だったようですね。歴史も、自然も、世界有数の観光地としての風格も趣も、すべて兼ね備えた「都」、京都。OurAge世代なら、何度も訪れている方も多いでしょう。そんなOurAge世代だからこそ、今、京都に行くなら、ぜひ訪れたいホテルがあります。
鴨川のほとりに立ち、東山三十六峰を一望できる「ザ・リッツ・カールトン京都」。ここでは、京都の伝統と、ザ・リッツ・カールトンというホテルブランドならではの卓越したサービスが融合。このホテル独自の切り口で「知らなかった京都」を楽しめるのが、魅力です。
なかでも同ホテルブランドの得意分野は、「アート」。そのエッセンスが、こまやかに表現された中で、五感で京都を感じるアート滞在の愉しみに注目しました。
眺めも最高な鴨川沿い、二条大橋のほとりに立つ同ホテル。祇園や河原町にもすぐです
京の四季の味わいを、畑から直接いただく「シェフズ・テーブル」
ザ・リッツ・カールトン京都の「食すアート体験」とも言えるのが、「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」。井上勝人エグゼクティブ イタリアン シェフが昨年からスタートさせた、限定6名のみの個室レストランです。
「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」は、イタリア料理「ラ・ロカンダ」の奥の奥にあります。靴を脱いで上がるつくりにも、秘密を体験するようで胸が高鳴ります。
中に入ると、テーブルの上には木の枝、そこに本物の苔が敷き詰められているのにびっくり。ホテルの専属の庭師さんとともに設えられたそう。まさに自然との融合を表現しています。
テーブルの上には、コースで用いる食材が美しく盛り付けられてゲストをお出迎え
ここでは、日本で旧来から季節や天候の移り変わりを表すとされてきた「七十二候(しちじゅうにこう)」の細やかな季節感を表現した、クリエイティビティ溢れる料理の数々を堪能できます。たとえば、5月後半は、竹笋生(たけのこしょうず)だったり、蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)と表現されている時期。その時々の自然と、食や暮らしのつながりが、メニューにも色濃く反映されるのが特徴です。
訪れた時期は、まだ肌寒いころでしたが、その日のテーマ食材は、なんと“水”。メインの一品には、京都の名水の一つ「銅駝(どうだ)の井戸水」を用いた料理が登場。
「“水”を、大地と海の食材と合わせることで、生命の循環を表現しました」と井上シェフ。なんとロマンチックな! 命の芽生えと循環を感じさせる料理は、他のどこにもない濃やかな創意工夫を感じる美味しさです。
「美山豆乳の豆腐 スナップエンドウ 宇治茶のオイル」。テーブルに敷き詰められた苔と織りなす緑のハーモニーに心を奪われる
「ホワイトアスパラ WABISUKE 卵 毛ガニ」もそれぞれあじわい豊かな食材の力強いコンビネーション。ひと皿ひと皿の新鮮さが伝わるコースは11品
この、京都ならではの自然の味わいを、どうやって取り入れているのか? その秘密は、京都駅から車で約15分の距離にある石割農園にある、とうかがって、実はお食事の前に取材のために訪ねてきました。
桂川の河川敷に広がる一町五反の広さの農園では、10代目の石割照久さんが、20年以上にわたって有機野菜の生産に取り組んでいます。京野菜をはじめ、数多くの野菜がここで作られていますが、それらの多くは、全国各地はもちろん海外からも届くプロの料理人の要望に応じた「オーダーメイド」。
畑に着くと、まず見せてもらったのは、野菜でなく、土でした。
「ほら、微生物に働いてもらっているので、畑の土がふわふわでしょう。野菜づくりは土づくりが大切です」と石割さん。野菜作りのマジシャンです。
『農業は科学とセンス』という石割さん(左)。良質の土づくり技術や栽培法で国内外に知られる。シェフの井上さんとの野菜トークは、絶妙
「プロの料理人が求める美味しくて栄養価の高い野菜を作り上げて、料理人に美味しく料理をしてもらって、幸せな時間を作ってもらうのが何より幸せ」、と言う石割さん。
ホテルまで車で約20分。京都では、ファーム・トゥ・テーブルの距離が、とても近いことを実感します。シェフの井上さんも、よく訪れているそう。朝採れの野菜からその日のメニューを決めることもよくあるとか。
たとえば、ケールと言えば、大きな葉を食しますが、石割さんのアドバイスでケールの若芽を料理に用いたりすることも。美味しくて新しい料理のクリエーションが、この畑で生まれているのです。
美しいケールの若芽。これがサラダやパスタなどに用いられて新しい料理に
自然の恵をいただくだけでなく、守る。サステナブルな取り組みが、次の美味しさを生み出す
素材も信頼感も、農園に近いテーブル。その美しく美味しいコースには、さらに優れた秘密がありました。
通常はあまり出回らない魚など、地の食材を用いた貴重な料理を供するだけではなく、サスティナビリティを重視して、食材をはじめから終わりまでですべて使い切る廃棄物ゼロへの高い意識も特徴。京都に受け継がれてきた「始末の心」を大切にしているのにも共感できます。
「銅駝(どうだ)の井戸水と石割檸檬、琴引の塩ゼリー」。アカザエビやカワハギ、ウニ、スマガツオなど、それぞれに仕事を施した魚介類を、井戸水と石割農園のレモンと京都・琴引の塩のゼリーをからめて。高知県産フルーツトマトと真鱈のムースで旨味も際立つ
シェフが調理する様子がすぐ間近で見られて、食べながら、素材や料理法などについてもやりとりできるのがシェフズテーブルの醍醐味。日本各地の生産者とも深い繋がりをもつ井上シェフは、まず使用する食材を見せてくれるところから始まり、一皿一皿をはさんでの会話が、発見を深め、美味しさを引き立てて、知的好奇心をも大満足。
目の前で調理が進むのも楽しい。井上シェフは、イタリアとスペインで5年間修業をした後、銀座の「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のヘッドシェフを務めた経歴の持ち主
地元の野菜、魚を味わいつくし、旬の一瞬の価値を捉えたシェフズ・テーブルは、まさに食すアート体験と言えます。
話題の作家たちによる館内のアートピースのコンセプトは「源氏物語」
今回のホテル滞在でとても興味深かったのは、館内のアートピース。
随所に置かれているアートワーク、その数はなんと409。中でも、2つ目の扉を通過して、すぐ左手にある名和晃平氏による作品は必見です。真珠のように光輝く素材を貼り付けたアートピースは、古い琵琶が素材なのだとか。
京都をホームグラウンドに世界で活躍する名和晃平氏作の、琵琶を用いた作品。平安の音色を現代に奏でているよう
ロビー階に備わるアート作品は、「源氏物語」がテーマ。レセプションの壁は、よく見ると竹をモチーフにしたガラスのアートで、三嶋りつ惠氏作。同氏のガラス作品が、壁の素材として用いられているのは珍しくて素敵。
チェックインを行うスペースの壁は、竹をモチーフにしたガラス製アート
ホテルが立つ場所は、桃山時代の豪商・角倉了以、明治時代の男爵藤田傳三郎らの邸宅となった由緒ある土地。東山三十六峰を借景に、往時の著名人たちが京と鴨川の絶景を楽しんでいた場。そこで今、アートに囲まれて、自分の客室から現代の絶景を眺められるなんて、なんとも贅沢です。
アートな要素はスパやプールにもいっぱい
70年代「ホテルフジタ」があった当時の石壁と滝が、今もロックガーデンとして残されているのも京都人には懐かしいそう。このガーデンの下、地下2階には「ザ・リッツ・カールトン スパ」が。滞在ゲストだけが使うことのできるプールもあります。流れる滝の音に包まれながら、ゆったりと泳げる20メートルのプール。実は底に敷き詰められたブルーに輝くモザイクタイルも、アート作品! 長谷川仁氏による「群青の泉」です。
ドライサウナやスチームルームもあり、プールのチェアに横になると、ロックガーデンを流れ落ちる水が目に入る
スパトリートメントのプロダクは英国の高級スパブランド「ESPA」がメインのうえ、さらにパリ発の「アブソリュション」も採用。日本でも限られたホテルスパのみでしか体験できない、成分もパッケージも、肌、健康、地球環境に配慮した上質なオーガニックプロダクトです。
白と黒の手描きイラストがキャッチーな「アブソリュション」のプロダクト。印刷もベジタブルインク、というこだわりぶり
「アブソリュション」のフェイシャル 『ソワン リフト』は、白い花を思わせる上品な香りで、テクスチャーもソフト。顔だけではなくて、肩や首、デコルテまでトリートメントしてもらえ、さらには頭と手のプチマッサージ付き。最後は、石膏パックでリフトアップ効果を実感できます。
食も滞在もスパも、アートと融合して質を極めた、「ザ・リッツ・カールトン京都」での滞在。もちろんお値段も特別ではありますが、満足感でいっぱいにしてくれて、価値ある時間を満喫できるはずです。
—————————————-
ザ・リッツ・カールトン・京都(公式サイト)
京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔
TEL:075-746-5555
1泊1室¥110,000〜(税・サ込み)
アブソリュション フェイシャル『ソワン リフト』:90分 ¥34,155/要予約
「シェフズ・テーブルby Katsuhito Inoue」:コース¥32,000(税サ込)定休日:日・月・火(変更あり)/要予約