気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【上手なおつきあいのための「心得」】では、心地よいつきあいに関するしきたり44~61をご紹介します。
今回は、しきたり44:遠くから訪れる友とのつきあいには覚悟が必要、についてです。
●上手なおつきあいのための「心得」●
家族、友人、恋人、親戚、子ども同士、仕事など、人と人とのコミュニケーション=つきあいほど難しいことはありません。電車の中で肩が触れた、触れないの言い争いから喧嘩となり、重傷を負ってしまった、近所のピアノの音がうるさいと、近所づきあいが疎遠になってしまったなど、つきあいはときとして争い事にもなり、そのために人を傷つけてしまうことだって起こりかねません。
我慢すべきときは我慢、言うべきときは言う、そして、かかわりのないときにはかかわらない、といったように、つきあいにはほどよい距離感を保つことが欠かせません。すべて自分の価値観と同じと思うのではなく、人には人の考え、思い、思惑などがあり、無理してつきあっても決してうまくいくとは限らないのです。
つきあいをうまくするには、まず自分の性格、家族の性質などを十分に把握して、欠点をわきまえておくことが大切です。それがわかれば無理することがなく、背伸びすることもない、身の丈に合った、心地よいつきあいができるに違いありません。
しきたり44
遠くから訪れる
友とのつきあいには覚悟が必要
もう、ずいぶん前の話しですが、友人が故郷から仕事で訪れました。友人ですから、お客さまのようにもてなさなくてもよいと、私は思いました。それで、自分の好きにしてもらおうと、モノのありかを教え、自由に滞在してほしいと言ったのです。仕事に追われる身なので、そのときは了解を得たように勘違いしてしまったのです。彼女はお客のような対応を期待していたのでした。特に、朝ご飯を食べさせてくれなかった! というのが不満だったようでした。これはあとでわかったことですが、彼女の希望をハッキリと聞くべきだったと、反省しました。以来、彼女は我が家には滞在しません。
友人とのつきあいは、親しければ親しいほど、難しいように思います。つきあいが長くなったり、深くなったりすると、人の性格の見えないところまで見えてしまいがちだからです。数時間のつきあいより、数十時間のつきあいのほうが、また、宿泊で丸々数日ともなれば、文字通り「寝食をともにする」ことですから、人となり、癖、習慣などがよりわかってしまいます。親しければなおさらで、これまでには見えなかった欠点なども、お互いにしっかり見てしまいます。見てしまうと、人は欠点をつい他人に話したくなってしまうのです。
ここがつきあいには肝心なところです。「人は欠点を持っているのが当たり前」と、思わなければなりません。欠点のない人なんて、かえっておかしいと思っていて当然です。そこを理解していなければ、つきあいなどは成り立ちません。また自分の欠点を話されても仕方ない、と覚悟もしておかなければなりません。それが、深い親しいつきあいというものではないかと、そのとき以来、私は親しいつきあいには覚悟が必要だ、と考えるようになりました。
人の性格とは、生まれながらに持っているものですが、年齢を重ねるごとに、多くの人とのつきあいが生まれ、そこから影響を受けたり、学んだりして、自分のつきあいのかたちを整えていくようになるのだと思います。
ですから、若いときは、つきあいも少なく、学校時代の友人くらいですから、お互いがつきあいを変化させているときなのです。次第に歳を重ねるごとに、つきあう人も多くなり、学習、影響を多く受けるようになり、徐々に自分にとってのつきあいを、性格に合うか合わないか、性格が好きか嫌いか、考え方が似ているかどうかなどで判断するようになっていくのではないでしょうか。
でも、つきあいを自分流で決めてしまうのも寂しいものです。歳を重ねると、自分の欠点を見せたくない気持ちが働き、友人など見せられる人とのつきあいが次第に決まってきます。それが自分にとって、一番ラクなつきあいであるからですが。でも欠点もつきあいのかたちを変え、数時間のつきあいにすれば、ラクなつきあいに変化させることもできるはずです。なにより、人生にとって友人は大切です。自分流で決めてしまうのではなく、つきあいを知らなかった若いときの気持ちに戻り、学ぶつもりで、「人との出会いを楽しむ」ゆとりを持つのが、最もラクなつきあいだと思うのです。
次回は、しきたり45:急に約束を変更するときは早めにする、についてご紹介します。