気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【上手なおつきあいのための「心得」】では、心地よいつきあいに関するしきたり44~61をご紹介します。
今回は、しきたり47:人を訪ねるときは手みやげを持参し、いただいたら「お持たせ」でもてなす、についてです。
●上手なおつきあいのための「心得」●
家族、友人、恋人、親戚、子ども同士、仕事など、人と人とのコミュニケーション=つきあいほど難しいことはありません。電車の中で肩が触れた、触れないの言い争いから喧嘩となり、重傷を負ってしまった、近所のピアノの音がうるさいと、近所づきあいが疎遠になってしまったなど、つきあいはときとして争い事にもなり、そのために人を傷つけてしまうことだって起こりかねません。
我慢すべきときは我慢、言うべきときは言う、そして、かかわりのないときにはかかわらない、といったように、つきあいにはほどよい距離感を保つことが欠かせません。すべて自分の価値観と同じと思うのではなく、人には人の考え、思い、思惑などがあり、無理してつきあっても決してうまくいくとは限らないのです。
つきあいをうまくするには、まず自分の性格、家族の性質などを十分に把握して、欠点をわきまえておくことが大切です。それがわかれば無理することがなく、背伸びすることもない、身の丈に合った、心地よいつきあいができるに違いありません。
しきたり47
人を訪ねるときは手みやげを持参し、
いただいたら「お持たせ」でもてなす
若いころ、叔母の家に遊びにいくのに手みやげひとつも持たずに行ったところ、たとえ親戚だからといえども人を訪ねるのに手みやげを持参しないのは、礼を失している、と言われました。それからは、どこへ行くのにも手みやげを持っていくようになりました。若き日の失敗ということでしょうか。
手みやげも、親しい方であればその方の好みもよくわかり、お好きな手みやげが選べますが、それほど親しくないときには、自分の好みで選んでしまうことがあります。
手みやげを差し上げたお宅の方が、「お持たせでいただいたものですが、おひとつどうぞ」と言って、持参した手みやげでもてなしてくれたときは、お持たせが効果を発揮したことになります。でも、逆にせっかく好みを選んだとしてももてなされず、そのままのときには、せっかく選んだのにといった気持ちにもなるものです。
先日、若い仕事仲間が訪れ、最近評判のものを自分が選んできた、と手みやげを持ってきてくれました。ちょうどお昼時だったので、用意していたサンドイッチを一緒にいただいてしまい、手みやげをもてなす機会を失しました。このときは気心の知れた仲間でしたから、「このお菓子人気なんですよ」と、ちょっと促されたかたちになり、忘れかけていた手みやげを分けてお持ち帰りいただくことができました。
来客にと、こちらが用意していた茶果があったとしても、来客からの手みやげは、必ず開けていただくようにしています。どんなものを持っていったらよいか迷ってしまうときには、季節のもの、果物、評判のもの、自分が好むものを持参してしまいがちだからです。そこには、私もそうですが、「開けていただけたらいいな」という期待が含まれているからです。ストレートには言えませんが、そんな気持ちが手みやげにはこもっていて、つきあいは、そんな思いを察することも大切だと思うからです。
おつきあいは手みやげひとつでどうなるわけでもありませんが、でも、気持ちを手みやげに込めると込めないのとでは、親しみの度合いが違うような気がしますが。そんな意味で、叔母は手みやげは持参するもの、と忠告してくれたような気がしています。私たちのしきたりとは、ちょっとした気持ちの通わせあいなのだと思います。
次回は、しきたり48:人を紹介するには、両者の長所・短所をよく知ったうえで責任をもってする、についてご紹介します。