気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【上手なおつきあいのための「心得」】では、心地よいつきあいに関するしきたり44~61をご紹介します。
今回は、しきたり52:就職したら経済的に、社会的に、精神的に、市民的にしっかり自立させよう、についてです。
●上手なおつきあいのための「心得」●
家族、友人、恋人、親戚、子ども同士、仕事など、人と人とのコミュニケーション=つきあいほど難しいことはありません。電車の中で肩が触れた、触れないの言い争いから喧嘩となり、重傷を負ってしまった、近所のピアノの音がうるさいと、近所づきあいが疎遠になってしまったなど、つきあいはときとして争い事にもなり、そのために人を傷つけてしまうことだって起こりかねません。
我慢すべきときは我慢、言うべきときは言う、そして、かかわりのないときにはかかわらない、といったように、つきあいにはほどよい距離感を保つことが欠かせません。すべて自分の価値観と同じと思うのではなく、人には人の考え、思い、思惑などがあり、無理してつきあっても決してうまくいくとは限らないのです。
つきあいをうまくするには、まず自分の性格、家族の性質などを十分に把握して、欠点をわきまえておくことが大切です。それがわかれば無理することがなく、背伸びすることもない、身の丈に合った、心地よいつきあいができるに違いありません。
しきたり52
就職したら経済的に、社会的に、精神的に、
市民的にしっかり自立させよう
まわりには就職したての人はおりませんので、いま時の卒業や就職祝いの実態などはよくわかりません。いまのような経済状況では、就職したからとのんびりしてはいられません。いついかなるときに、職がカットされるかもしれないほど、実社会は厳しいものです。
就職し、社会の一員となったのは、一人前の証でもあるのです。これを機に、本格的に自立していくことです。自立には次の四項目が達せられなければなりません。
●経済的自立 これは、経済的に自分の力ですべてを賄うことで、どこからの援助、手助けも得ないことです。借金したとしても、それも経済的自立のうちです。取り立てにあい、自己破産宣告をしても、それも自分で始末しなければならないのです。経済的に暮らしのすべてを運営できることが、自立には欠かせません。
●精神的自立 精神的にいつもグラグラしているようでは、自立はおぼつきません。何事も、困難、難問などにぶつかっても、自分で解決できる精神がなければなりません。難しい問題や解決できないこと、失敗したときも、それを自分で引き受けるだけの強い心が必要です。こうした問題を解決して、精神的に安定してきますので、気持ちはいつも強く、そして穏やかでいられるように保つことが精神的な自立には大切です。
●社会的自立 社会の一員として、この国で暮らす以上は、国が決めたルールに従って暮らすことです。違法な行為をすることは、ルールに反することですから、社会の一員としては許されません。このルールを守るのが社会的自立につながります。
●市民的自立 一市民として、迷惑をかけないことです。ゴミ、騒音、排水など、暮らしに自分さえよければいいという考えを慎むことです。自分だけよいとの考えは、他人にとって迷惑なこととなるかもしれないのです。迷惑は自立にはふさわしくありません。市民として、迷惑をかけないのが市民的自立です。
このように、就職を機に自立してほしいものです。自立のしるしには、初サラリーでこれまでの感謝を込め、両親や祖父母にささやかな品を贈呈するなど、自分らしい就職した表明を考えてはどうですか。
一方、両親や祖父母も、就職までして社会に認められた人をいつまでも子ども扱いするのはやめ、一人前として扱うことです。それで、就職した自覚や自立が芽生えてくると思います。ドイツで出会った弱冠13歳の少年。まだ幼顔が残る歳で、レストランへ行けば女性をエスコートし、大人の集まりにも参加し、最後までぐずぐず言わずに聞いている。こうした態度は大人と同じでした。ここまでしっかりしなくても、就職したらやはりしっかりしなければなりません。
次回は、しきたり53:家族・親戚づきあいはなによりも話し合いが大切、についてご紹介します。