国産オリーブを牽引する香川県小豆島
香川県の北東部に位置する小豆島は、瀬戸内海で淡路島に次いで二番目に大きな島です。年間を通して温暖で雨が少ない瀬戸内型気候で、過ごしやすい気候です。明治40年に当時の農商務省が三重・香川・鹿児島を指定してオリーブの試験栽培を開始したところ、小豆島のオリーブだけが栽培に成功。オリーブ農家の人たちのたゆまぬ努力の甲斐があり、現在も国産オリーブを牽引。現在は、瀬戸内海沿岸だけでなく、九州や関東地方でもオリーブが栽培されるようになりました。
(自然豊かな小豆島。こちらは観光スポットとしても有名なエンジェルロード。1日2回引き潮のときだけに現れる砂の道は、大切な人と手を繋いで渡ると天使が舞い降りて願いを叶えてくれるといわれている)
日本初・オーガニックオリーブオイルが誕生
そんな小豆島で、日本で初めてオリーブの有機栽培に成功したのが「山田オリーブ園」。山田オリーブ園の山田典章さんに有機栽培に至るまでの苦労やオリーブ栽培で大切にしていること、そして化粧品をつくるに至った経緯をお聞きしました。
(山田オリーブ園内。秋には彼岸花やカタバミの花が咲き、園内をにぎやかに彩る)
「オリーブを枯らしてしまう害虫オリーブアナアキゾウムシや、実や葉に病斑ができる炭疽病の発生など、農薬を使用しないオリーブ栽培は試練続き。ですが、畑に生きるオリーブや草花、虫たちの小宇宙を継続させていくために、命を殺す薬は使いません。オリーブアナアキゾウムシは1匹ずつ手で捕まえて駆除します。炭疽病は、実が熟すほどに増えていく傾向があるので、実が熟す前に収穫したりして対策。毎日1本1本、オリーブの木との会話も大切です」(山田さん)
そして、収穫したオリーブを鮮度が落ちないようできるだけ早く搾るために、企業に委託するのではなく自家搾油しているのも山田さんのこだわりです。
(山田オリーブ園の搾油所。汚染の可能性があるため有機以外の原料の取り扱いは一切行わない。品種や熟度など実の状態を数値的に計測し、記録を残す徹底ぶり)
無農薬のオリーブオイルでつくられたスキンケア
山田さんはオリーブアナアキゾウムシを自宅で飼育して、その生態を調べたことで農薬を使用しない栽培方法を確立。そんな中、スキンケア用のオリーブオイルを商品化することに。
「先輩農家がこれまでに試したことを伝え聞き、化粧品に向く品種や作り方に関して、漠然とした知識はありました。そこから3年ほど試行錯誤の末、肌に塗ってもベタつかないスキンケアオイルが完成。しかし、それらを商品化する工場が見つけるのにまたひと苦労。せっかく有機栽培で育てたオリーブオイルですから、汚染を防ぎ高品質な状態を保ちたいのに、有機栽培の原料に対応している工場が日本にはあまりないんです。ようやく長野県に工場を見つけて商品化にこぎつけることができました」
(化粧品用に集荷されたブラックオリーブ。よく熟した実からとれるオイルは、肌への浸透がよい)
山田オリーブ園が展開する化粧品はスキンケアオイルと石鹸のみ。スキンケアオイルは、山田さんが育てたオリーブオイル100%のプレーンタイプと、長野県の工場が扱う国産有機バラ水を発売。農薬を使用しないで育てたオリーブは、花や実を害虫から身を守るためにより多くのポリフェノールやビタミンEを蓄えるため、抗酸化作用が高く美肌効果も抜群。敏感肌や赤ちゃんにも使えるほど優しく、そして何より食べられるほど安全なところも魅力。
(スキンケアの最後の潤い補給としてもブースターとしても使用できる。わずか1滴でたくましく育ったオリーブオイルのパワーを実感することができるはず。左から/小豆島産オーガニックオリーブスキンケアオイル 30ml ¥9,790・10ml ¥3,630※国産有機バラ水配合タイプは30ml ¥10,120・10ml ¥3,850)
そしてもう1品、食用の有機エキストラバージンオリーブオイルで作られた石鹸。原材料はオリーブオイル、水、シア脂、水酸化Na、ハチミツの5つだけ。正真正銘の無添加石鹸です。
(80gの石鹸に40gもの小豆島産有機エキストラバージンオリーブオイルを贅沢に使用。小豆島産オーガニックオリーブ石鹸 80g ¥4,860)
このシンプルな処方が成立するのは、手間暇をかけ、愛情たっぷりに育てた極上のオリーブを使用しているから。自信があるからこそ、余計なものを入れずに素材で勝負しているのです。毎日使うものだからこそ、私たち消費者もちゃんと取捨選択して、よりよいものを使いたいものです。
取材・文/新田晃代