こんにちは!
「元気が出るお金の相談所」所長の安田まゆみです。
今日は「親の介護費用」についてお話ししたいと思います。
「先生、今のうちから親の介護について心積もりしておきたいんです。
老人介護って一人当たりどれくらいのお金がかかるものなんでしょうか」
といって私のところへ相談に来られたY子さん。
東京の郊外に暮らす54歳のパート主婦です。
家族構成は同年齢の地方公務員の夫と大学生の長女、高校生の長男。
「うちは私が長女、夫は長男。
私の両親は電車で1時間ちょっとのところに住んでいて
夫の両親は私の家から車で30分くらのところに住んでいます。
私も主人もお互いに妹がいますが、遠くに嫁いでいるのであてにできません。
このままいくと将来自分の両親、夫の両親の計4人の介護はおもに我が家が担うことになると思うんです。
なので介護に必要な金額、今から準備できることが何かあるんであれば教えてほしいんです」
夫の両親、Y子さんの両親はともに80代の前半。
ありがたいことに、今はまだ全員が健在とのこと。
とはいえ、整形外科をはじめとした高齢者の日課ともいうべき医者通いは始まっています。
「介護が始まるのは、もう時間の問題だと思うんです。
長男である主人と結婚するとき、いずれは自分が義父母の老後の面倒をみるんだろうと覚悟したのでいいのですが、今何より心配なのがお金です。
うちは子どもが高校生と大学生、これからまだまだ子どもたちにお金がかかります……
夫の両親も私の両親も倹約家なので蓄えがあるだろうから大丈夫って思ってみたり、いや親のお金だけで足りるのか、うちが少しでも援助しないといけないことになったら……
と不安になってみたり。
介護費用を我が家が負担しなくて済んだとしても、介護のために私がパートを辞めることになったら家計がその分苦しくなってしまいます」
心配する気持ち、よ~くわかります。
でもY子さんはスタートからすでにひとつ、大きな間違いをおかしているんですよ。
それは……
「介護っていくらかかるの?」
と思い、すでに不安になっていること。
介護は
いくらかかるのか
ではなく
○○○○で計画を練るべきなのです。
★○○○○の中に入る言葉は一体何? 気になる続きは次ページに!
介護は
いくらかかるのか
ではなく
自分の家(親)はいくらかけられるのか
で計画を練るべきなのです。
〈自宅で親の面倒をみる場合〉だけをとっても
●在宅介護
●在宅看護
●訪問リハビリ
と受ける支援内容にバリエーションがあります。
〈施設に親を預ける場合〉であれば
●サービス付き高齢者向け住宅
●住宅型有料老人ホーム
●介護付き有料老人ホーム
●ケアハウス
●特別養護老人ホーム
と施設の種類も複数あり、費用もそれこそピンキリです。
Y子さんのところは実の両親、義父母ともにまだなんとか老夫婦だけで自立して暮らせているそうですから、今のうちに次のことをしておくよう強く勧めました。
それは
〝親の経済状況を把握する〟
です。
①預貯金残高
②月々の年金額
③入っている保険は何か(生命保険、民間医療保険など)
④借金、ローンの有無
⑤不動産、金融資産の有無
この5つをきくとよいでしょう。
けれど
「いきなりそんなこと切り出せません」
とY子さん。
そうなんですよねぇ、そうおっしゃる方が多いんです。
そこで私はこうアドバイスしています。
★親にうまくお金のことを切り出す方法とは? ためになるアドバイスは次ページに
「この前友達の親が亡くなったんだけど、保険はどこの何に入っているのかとか何も知らなかったから、とても苦労したって言ってたわ。
お母さんたちはどうなの?」
「今エンディングノートていうのが流行ってるんだよ、実は私も少しづつ書き始めてみたの。
私だっていつ何があるかわからないし、だったら子どもたちが後々困らないようにって思って…。
お母さんも一緒に書いてみる?」
といった感じで切り出してみてはどうでしょうか。
夫の両親には夫から言ってもらうとベストです。
親の経済状況を早めに把握し、いざというときはその予算内で受けられる介護(看護)サービスを探す
これが一番無理がありません。
そして介護(看護)が始まったら、きちんとお金の記録をとること。
介護とお金の問題というのは、当事者にならないとわからないことがあります。
それは
介護にかかるお金は、介護そのものにかかる費用だけではない
ということ。
精神的な負担のほかにすでにY子さんが懸念しているように、介護のため仕事を辞めたり減らして収入減になっても、当事者以外誰も気に留めないのが現実です。
その他にも介護に通うための交通費、介護に通う際に伴う外食費用、留守番している家族が惣菜を買ったり店屋物をとる費用等々。
介護が長期戦になれば疲れがたまり、Y子さん自身の体調も悪くなってくるかもしれません。
そうなればそのメンテナンスにも費用がかかります。
介護に関わったことで細々とした支出はじわりじわりと増えていき、家計に食い込んでくるのです。
Y子さんの実妹も義妹も兄夫婦が介護を担うことで収入減になることや支出増になっていることまでは、気がつかないかもしれません。
Y子さん夫婦が親を介護してくれていることに感謝してお礼(お小遣い程度)でも払ってくれると良いのですが、まだまだ世の中は長男・長女がやって当たり前という考えの人が多く、介護の対価にお金をだすということに気が回らないと思います。
実際、Y子さんと同じ54歳で遠距離介護をしていた女性も同様の悩みをお持ちでした。
父親が倒れてしまったために、東京から秋田の両親のもとに通い月の半分を実家で介護していました。
母親は往復の交通費は出してくれますが、彼女が秋田に行っている間に家族の生活費が増えていることまでは気がついていません。
秋田には兄と弟がいるのですが「仕事があるから」と介護は彼女にまかせっきり。
金銭面でのサポートを申し出るそぶりもありません。
介護を続けていた間、心の中はずっと嵐が吹き荒れているようだった、と親を看取った後にその女性は話していました。
さて、Y子さんに話を戻しましょう。
ご兄弟姉妹がいるのであれば、Y子さん夫婦だけが経済的な負担をするのは不平等です。
お金のことを言い出すのは卑しいのでは、と躊躇する方が多いのですが、親の介護に必要なお金のことなんですよ。
卑しいことではありません。
きちんと兄弟姉妹に現状を話し、負担がかかっている場合はそれを伝えましょう。
介護にかかるお金のことをきちんと話して理解を得ておかないと、この先さらに困ったことが起きる確率はグンと高くなります。
この先起きる困ったこと……
それは……
★それは何? 気になる続きは次ページに!
それは相続です。
Y子さんのように介護を担う長男夫婦がどれだけ辛抱しても、相続の際にもめた場合それまでの負担分を考慮されることはありません。
ご兄弟姉妹が遺産分割の際に
「兄さん(姉さん)今まで大変だったでしょう。
遺産を多めに受け取っていいよ」
なんて言ってくれるケースは稀です。
ご長男(長女)が遺産分割の際「今まで負担してきた親の介護費用を上乗せした取り分が欲しい」と要求したらもめてしまい、家庭裁判所で争うことになったという話はよくあるのです。
でも家庭裁判所での調停や裁判では、
●家計の減収分や生活費の増額分を遺産分割に上乗せして多くもらいたいと要求することに対して、認められることはほとんどないのが現状です。
兄弟姉妹で平等に分けましょう、と和解を勧められてしまいます。
これをきいてみなさんは、どう思われますか?
「そんなことになるなら、介護なんて引き受けたくない!」って思ったりしちゃうかもしれませんね。
でもこれが現実です。
実際に私が体験したことを例にお伝えしましょう。
私の夫は長男で義母はアルツハイマー型の認知症を患っていて現在89歳。
発症してもう10年近くになります。
3人兄弟の長男である夫は、義父亡き後一人になった義母と暮らして介護をしています。
つまり私たち夫婦は介護別居中です(仲良しですよ、念のため)。
夫は65歳で、まだ現役で働いています。
出張もあります。
そのため週6日のデイサービスと月10日~2週間のショートステイを組み合わせ、さらに夜夫の帰りが遅い場合は夕食と寝かしつけをヘルパーさんに頼んで介護を続けています。
ショートステイの送り迎え、病院への同行は私の担当です。
ヘルパーさんが来られないときや緊急の際は、私が夕食を食べさせ、入れ歯の管理、着替えなどもやります。
肝心の費用についてですが、介護保険が適用されない分は全て自費になります。
義母の場合自己負担額は、月に約7万円。
今まではこうして乗り切ってきましたが、現在〝要介護2〟の義母。
この1年でぐっと様子が変わりました。
どう変わったかというと……
・膝の具合が悪化し自立歩行が困難になってきた
・朝や昼寝の際の失禁が始まり、寝るときにリハビリパンツをはかせるようになった
・義母自身で排泄の処理をするのがだんだん怪しくなってきている
とくに最後の排泄処理が怪しくなってきたことで、施設入居を考えるようになりました。
そこで先日、夫と義弟と3人で千葉県八千代市の老人ホームを2か所見学してきたのです。
一口に〝介護施設〟といっても最初の方に書いた〈施設に親を預ける場合〉でご紹介したようにいくつもあります。
例えば、経済的に一番負担が少ないのが特別養護老人ホーム。
よく〝特養〟と省略されて呼ばれている公的な施設です。
ただ要介護3以上が入居の条件。
また経済的負担が少ないので希望者が多く、入居するのに順番待ちとなっている場合が多いようです。
要介護3以上で順番を待てる余裕がある場合、検討してみるといいかもしれません。
私たちは義母が要介護2の認知症なので、特養ではなく
・日中一人で部屋に閉じこもるようなことのない有料老人ホームの介護型
(デイサービスのように、毎日、習字や塗り絵、体操といったイベントがある施設)
で費用面の条件が合うところ、具体的には
・一時金(支度金、準備金)が50万円以下
・月々のコスト(居住費や食費、管理費の基本コストに加えて、介護保険で使う介護費用も含んで)が義母の年金(本人の老齢厚生年金と遺族年金を合わせた)の範囲(約20万円)で賄えるところ
・夫の家から電車で1時間以内のエリアにある
で探していきました。
「いくらぐらいかかるのか」ではなく「いくら払えるか」を具体的に算出してから探したのです。
(ちなみに義母が100歳まで生きた場合を想定して算出しました)
結果、自宅から1時間程度で行ける八千代市で条件に合う施設が見つかりました。
在宅介護に比べて費用は倍以上になりますが、同居して介護をしていた家族にしてみれば、自分達が対応できなくなった分の介護をしてもらえるわけですから、精神的、肉体的な負担感からは解放されます。
よい介護施設も見つかり、すぐにでも義母の入居を進めたいと思ったのですが、夫は排せつの始末ができなくなるまでは在宅で面倒を看たいと言うのです。
早く夫を介護から解放してあげたいと思うのですが、夫の親のことですから夫自身が後悔の無い介護を選ぶべきなのです。
私が口をはさむことではありませんので、夫の気持ちを尊重しています。
親や義父母を介護するということは
それまでの親子という人間関係、兄弟姉妹という人間関係が影響してくることは間違いない
です。
お金についてもストレートに言える関係であれば、心から感謝しあい、お互いを支えあうことができるのではないでしょうか。
Y子さんには介護が始まる前に、これからの介護の負担について
・率直に夫と話すこと
・義妹と話すこと
・義父母と話し合うこと
そして
・在宅介護を選択した場合どこまで介護できるのか、地域包括センターのケアマネジャーに相談すること
・ケアマネージャーから得た情報は夫、義妹、義父母と共有し話し合うこと
をお勧めしました。
「なるほど……
使えるお金がどれだけあるかを把握することがまず先決なのが、よくわかりました。
今までそんな発想、思いつきもしませんでした。
まずは自分の両親からとりかかってみます」
と不安が小さくなってきた様子のY子さん。
でも帰り際にぽつりと漏らした言葉は……
「義父母の介護費用を考えたとき、義父母世代は年金など金銭面がしっかりしていてよかったと思いました。
でも私たち夫婦が年を取ったときって自分達の介護費用を払えるだけ年金をもらえるのか、貯蓄はできているのかと心配になります。
将来、子供たちに私たちの介護のことで経済的な負担をかけたくないですもの。
でも今の日本の人口の年齢構成をみているとどんどん厳しくなるばかりですよね。
そう思うと今のお年寄りは恵まれている、なんて思ったりしちゃいます」
だからこそ早めに老後についてしっかり計画を練ることが大事なんです!
そのためにもこの連載「女50歳からのキラキラ老後生活」をぜひご愛読くださいね。
●明るく気さくな人柄の安田さんが所長の「元気が出るお金の相談所」↓