体と脳の健康には、どうやら「油」が大事らしい、とわかってきたミーナです。いま人気の、ココナッツオイルやエゴマ油についても、解説いただいてます。
今日の料理に使いたい種類がわかる!
オイル選びの基礎知識
健康に深くかかわる油脂。健康効果で話題の油もいろいろあり、何を選んだらよいのか迷ってしまいます。
ここでは、どの油にどんな効果があるのか、そして、それはなぜなのか、油を研究する専門家の後藤直宏さんに教えていただき、3回に分けてご紹介しています。
今回は、必須脂肪酸はどのくらいとればいいのか? その他、オイルが体と脳にどんな影響を与などについてです。
後藤直宏さん Naohiro Goto
profile
東京海洋大学大学院、海洋科学技術研究科海洋科学系、
食品生産科学部門准教授。
工学博士。日本油化学会、日本栄養・食糧学会会員。
共著に『機能性脂質の新展開』(シーエムシー)、
『第二版 油化学辞典』(丸善)がある
Q
必須脂肪酸って何? どのくらいとればいいの?
A
オメガ6系の油は過剰摂取の傾向。意識すべきはオメガ3系の油
脂肪酸の炭素の結びつきに二重結合があるものを不飽和脂肪酸、ないものは飽和脂肪酸と呼びます。さらに、二重結合がひとつのものは一価不飽和脂肪酸、ふたつ以上は多価不飽和脂肪酸になります。
多価不飽和脂肪酸(オメガ3系、オメガ6系)はヒトの体内で合成できない「必須脂肪酸」。食べ物から摂取しなくてはなりません。
「重要なのはその摂取バランス。オメガ6系脂肪酸の過剰摂取は、アレルギーをはじめとする不調の原因になります」と後藤先生。
現代人の食生活はオメガ6系過剰、オメガ3系不足の傾向。そこで近年、オメガ3系脂肪酸の摂取が推奨され、オメガ6系脂肪酸を控えるよう言われているのです。
Q
健康のためには動物性食品を避け、コレステロール摂取を控えるべき?
A
血中のコレステロール値上昇に対する懸念は薄らぎつつあります
以前は、血中のコレステロールの量が多いと、血管の内側にたまって動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞などの危険が高まると言われてきました。しかし、近年、食事からコレステロールをとっても、血中のコレステロール値は上昇しないことがわかってきました。また、血中のコレステロールは、動脈硬化の原因ではないと考えられるようになっています。
そこで、厚生労働省は今年3月改訂の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で、コレステロール摂取の上限を撤廃しました。
食べすぎない限り、コレステロールを気にして、動物性脂肪の摂取を控える必要はないでしょう。
Q
えごま油やココナッツオイルはなぜ「脳にいい」と言われるの?
A
脳細胞を活性化するα-リノレン酸や脳のエネルギー源、中鎖脂肪酸に注目!
えごま油などに含まれるα―リノレン酸はオメガ3系。脳を活性化する働きで名高いDHAの仲間で、体内でDHAに変換されます。
「DHAには脳の神経細胞の発達を促し、細胞膜を柔軟に保つ働きが。脳細胞に含まれるDHAが多いほど学習機能が高いという研究結果も多く発表されています」
また、ココナッツオイルには、ラウリン酸などの中鎖脂肪酸が多く含まれます。脳は通常エネルギー源としてブドウ糖を利用しますが、中鎖脂肪酸から作られることの多いケトン体も利用します。そのため、ココナッツオイルは脳のエネルギー不足を補い、活性化に役立つと言われています。
Q
元気な体と脳のためにはどんな油をどのようにとればいい?
A
ひとつの油、脂肪酸摂取にこだわらず「バランスよく適量を」が基本
動物性脂肪は「動脈硬化の原因となるコレステロールを増やす」と避けられた時代がありました。そして、その時代には血中コレステロールを減らす作用のあるリノール酸が推奨されましたが、近年は逆にその過剰摂取が心配されています。
また、血中コレステロールを減らすと注目されたオレイン酸も、血中コレステロール値への懸念が薄らぎつつある昨今、話題から遠ざかりつつあります。
「結論から言えば、とってはいけない脂肪酸はなく、大量にとればいいという脂肪酸もありません。脂肪酸はそれぞれに固有の機能を持っています。適切な量をバランスよくとることが大切です」
次回は、実はあまり知らない「油脂」にまつわる用語についてご紹介します。
撮影/板野賢治 構成・原文/瀬戸由美子 撮影協力/UTUWA