「服を着替えるときに腕が上がらない」…40歳を過ぎた頃から、そんな肩の痛みを覚える人が増えます。それは「四十肩・五十肩」かもしれません。つらい肩の不調は、正しく知って正しく治す! もう痛みを我慢しないで!
お話を伺ったのは
菅谷啓之さん
Hiroyuki Sugaya
東京スポーツ&整形外科クリニック院長。整形外科医、肩肘専門医。米国ハワイ大学医学部客員教授、東京女子医科大学整形外科客員教授
正しい診断と対処で早い治癒と再発の防止を!
白髪や老眼のように、年をとると話題になるのが「肩の痛み」。その体験談や治療方法もさまざまです。
「まさに40歳を過ぎたら、誰もが一度は経験する…といってもいいほど、肩の代表的な不調が『四十肩・五十肩』です。医学的には『肩関節周囲炎』といい、このふたつは発症する年齢が違うだけで、同じ病気です」と、肩の専門医である菅谷啓之先生。
「症状は外傷がないのに肩が痛む、肩関節が動きにくいなど。長い間、肩を守ってきた腱板や関節包という組織が加齢によって劣化し、炎症を起こすのがおもな原因です。
通常、数カ月~1年で痛みは自然に治まりますが、その時期に適した治療や運動療法をしないと、治るまでに時間がかかったり、肩の動きが元に戻らないこともあります」
痛みの程度は個人差があり、痛みが続くようなら、肩専門医を受診することが大切だと菅谷啓之先生。
「肩が痛む病気はほかにも、下でご紹介している腱板断裂、石灰沈着性腱板炎などがあります。それぞれ治療法が異なるので、まずは正しく診断を受けたうえで、正しい治療を行うことが、早い治癒と再発を防止する秘訣です」
40代から多い肩の病気
●正常
肩関節は、上腕骨のまわりの筋肉やそれを骨とつなぐ「腱板」、関節をスムーズに動かすための関節液が入った「関節包」などがあり、複雑な構造をしています
●肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
加齢により、腱板や関節包が劣化。肩への過度な負担、血液循環の悪さなどが加わり、炎症が起こった病態です。炎症期には強い痛みがあり、その後、肩関節の可動域が制限されることがあります
●腱板断裂
肩関節を安定させている「腱板」が切れた病態で、部分断裂と完全断裂があります。痛みが長びくことが多いのですが、なかには痛みがないケースも。画像検査で診断し、早期に適切な治療が必要
●石灰沈着性腱板炎
肩の腱板内に石灰が沈着して、急性の炎症が起こる病気。特に誘因がなく、突然強烈な痛みが出ます。石灰を吸引して、運動療法などで治療します
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/山村浩子