「青春は飴のようにのびる!!」を実現し続ける、奇跡の70歳
50年の長きにわたり、少女マンガ界のトップランナーとして活躍してきた一条ゆかりさん。現在は第一線を退いたものの、あふれる好奇心と鋭い感性は衰えることがありません。OurAge連載のコラム、「今週を乗り切る一言」も、大好評。みずみずしい若さを保つ、その暮らしぶりを取材しました。
(19年12月取材)
Yukari Ichijo
一条ゆかりさん
1949年、岡山県生まれ。高校1年生のとき、「雨の子ノンちゃん」で単行本デビュー。’67年、第1回りぼん新人漫画賞に「雪のセレナーデ」が準入選し、「りぼん」にデビュー。以降、コメディからシリアスな恋愛ものまで、次々と大ヒットを生み出し、長きにわたり少女マンガ界に君臨。’86年、『有閑倶楽部』で第10回講談社漫画賞少女部門受賞。2007年、『プライド』で第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞
長年の夢だった家庭菜園を実現。
おかげですっかり早起きになりました
東京・杉並区の閑静な住宅街。真っ赤なポストが目を引く瀟洒な一軒家が一条ゆかりさんの住まいです。長年住み慣れた吉祥寺からここへ引っ越したのは約10年前。現在はマンガ家として第一線を退き、一人で悠々自適の生活を送っています。
「マンガを描くのをやめた理由は、いろいろあります。描くべきものは描いてしまったこと。腱鞘炎(けんしょうえん)やら緑内障やらで体が悲鳴を上げていたこと。それとこれがいちばん大きいけれど、まだ十分動けるうちに『一条ゆかり』をいったん横に置いて、藤本典子(一条さんの本名)に『よくやった!』とご褒美をあげたかったんです。これまでずっと一条ゆかりの奴隷だったけれど、その足かせをはずして藤本さんの好きにさせてあげようと。そして健康を取り戻しながら、日々を自由気ままに過ごしたいと思ったの」
大ヒット作『プライド』を最後に、セカンドライフへと踏み出すことを決断した一条さん。そうして、まず本格的に取り組んだのが家庭菜園でした。
「家庭菜園は以前から何度かトライしていたんですけれど、長続きしなかったんです。吉祥寺の家でも、庭に3歩下りれば花壇があるのに、その3歩がとても面倒くさくて。でも一方で、ベランダにはしょっちゅう出る。ということは、ベランダに菜園を作って、スリッパで出られるようにすれば続けられるんじゃないかと。それで、新居では2階に広いベランダを作って、そこに菜園を作りました」
予測はズバリ的中。菜園の手入れは日課となり、今ではトマトにアスパラ、ゆずにブルーベリーと、自家栽培した季節の野菜や果物が食卓を彩っています。
家庭菜園は冬場の閑散期ながらレモンが鈴なりに
「いちじくとレモンは土壌が合ったのか木がすくすくと大きく育って、菜園の二大巨頭になっています。昨年の夏はいちじくが300個近くできて、知人にお裾分けしたら大好評でした。ブルーベリーもたくさんとれたので、食べきれない分は冷凍保存して楽しんでいます」
もともと「創意工夫と研究が大好き」というだけに、腐葉土を作ったり、米のとぎ汁を発酵させて堆肥にしたりと、手のかかる作業はお手の物。さらに、菜園のおかげで生活サイクルも改善!
「マンガを描いているときは、朝になって寝るような昼夜逆転の生活でしたけど、ズッキーニの受粉は朝の9時までにやらないと花がしぼんじゃうんですよ。しかもひとつの花に1回のチャンスしかないので寝坊は許されない(笑)。おかげですっかり早寝早起きになりました」
かつては酒豪&愛煙家として知られていましたが、お酒もタバコもやめ、超健康ライフに大変身。まさにストレスフリーの生活を実現しています。
お茶好きな一条さん。ダイニングの棚にはティーカップや中国茶器など高級品がズラリ。
次回は、一条ゆかりさんのハイテクライフをお届けします。
撮影/山田英博 取材・原文/佐藤裕美