管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食、SDGsに力を注ぎ、2014年に管理栄養士の業務を行う会社を起業。レシピ開発を行うほか、全国で講演・講座・ワークショップを行う。NHK「あさイチ」、日本テレビ「ヒルナンデス! 」「ZIP! 」、TBS「マツコの知らない世界」「王様のブランチ」などテレビ・ラジオに出演多数。缶詰レシピ、レトルトレシピの達人としても活躍中。『からだにおいしい缶詰レシピ(法研)』『体と心がよろこぶ缶詰「健康」レシピ』(清流出版)ほか著書多数。
食品の備蓄の目安は1日3食×3日間×家族の人数
今泉:管理栄養士・防災食アドバイザーの今泉マユ子です。
ギリコ:今泉先生、私は近年、防災に備える気持ちがどんどん高まっていて、いざというときのための品物がどんどん増えている状態なんです。例えば食品のほかにも発電機や蓄電池まで買いそろえてあります。が、今、困っているのが食品についてです。
非常時に備えて食品を備蓄するあまり、賞味期限が切れる前に消費するのを忘れてしまうこともあって…。
買いすぎているような気もしています。
適量ってどのくらいなのでしょうか?
今泉:人によって1食分の満足する量は違うので、一概には言えないのですが、自分や家族の食べる量を把握し、ストックの量を決めるようにしましょう。
政府は非常食について、最低でも3日分は備蓄する(※)よう呼びかけています。
1日3食×3日間×家族の人数分です。
水なら1人1日3ℓ×3日間=9ℓ×家族の人数分が目安。
※ただしこの3日分は最低量。できれば1週間分を、また新型感染症発生などに対しては2週間分の備えはあったほうがよいとされている
この数字をもとにつねに3日分は備蓄されているよう、賞味期限の近いものから食べては買い足す、を繰り返すローリングストックを行ってみてくださいね。
ギリコ:ローリングストックを実践したいのは山々ですが、実際はつい面倒になったり忘れてしまったり。うまく続ける方法はありますか?
今泉:定期的に「非常食を食べる日」を決めておくとよいですね。
そして、家にストックしてある非常食を、災害時を想定した「ガスや電気、水が使えない状態」で調理して食べてみることも大切です。
ただ、毎回そうやって食べるのも大変なので、普段の食事として消費する際には、いろいろな食材、調理の工夫で、おいしく食べていただきたいですね。
ギリコ:缶詰を開けて食べるだけだとわびしいですもんね。
多少は手を加えて、おいしそうな料理に変身させられるのはうれしいです。
アボカドのビタミンEや葉酸は美肌に効果的
今泉:今日はイワシのかば焼き缶とアボカドを組み合わせて、グラタンにしてみましょう。
ギリコ:えー、なんだかイワシのかば焼き缶でグラタンだなんて意外です。しかも、アボカドは大好きなのでうれしいです。
今泉:缶詰を料理に使用する際は、フレッシュな野菜などをたっぷり使うと、「非常食」感がなくなりますよね。
チューブ入りのにんにくやシュレッドチーズなど、冷蔵庫にある好きな調味料や食材をどんどん組み合わせてみてください。
ギリコ:イワシには、どんな栄養があるのですか?
今泉:イワシは、ほかの青魚同様、認知症予防や血液サラサラ効果の高い、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富です。また、魚全般に含まれているビタミンDは、カルシウムの吸収を促してくれます。
イワシの小骨は、かば焼き缶に加工することで、骨ごとふっくら食べられるようになっていますので、カルシウムがとっても豊富。
ビタミンDがその吸収をサポートするということで、強力な骨活食材です。
コエンザイムQ10やビタミンB2などの美肌効果の期待できる栄養素や、血液の循環をよくして脳神経の働きをサポートするナイアシン(ビタミンB群のひとつ)も含んでいます。
ギリコ:この小さな缶の中に、そんなに栄養がいっぱい詰まっているなんて、すごいですね。
今泉:今回はさらに、アボカドを組み合わせることで美肌効果、アンチエイジング効果をアップします。
アボカドに多く含まれているビタミンEは別名、「若返りのビタミン」と言われ、細胞の酸化を抑える強い抗酸化作用を持っています。
そのほか、細胞の生産・再生に関与する葉酸や、腸内環境の改善に大切な食物繊維も多く含んでいます。
ギリコ:女性が好きなアボカドは、女性にうれしい栄養素がいっぱいということですね。
今泉:そうですね。今回は、さらに高い抗酸化作用を持つリコピンやビタミンCを含むトマト、カルシウムやタンパク質のとれるチーズを組み合わせて、栄養を充実させています。
さっそく作っていきましょう。
材料を混ぜ合わせるだけ! あとはチーズをのせたらトースターへ
今泉:アボカドは、種をとって皮をむいた後、今回は角切りにしましたが、スプーンでつぶすだけでもOK。
まずは、イワシのかば焼き缶とアボカドをスプーンで混ぜます。
トマトを加えてさらに混ぜたら、マヨネーズ、チューブ入りのおろしにんにくを加えます。
グラタン皿に入れて、シュレッドチーズをのせたら、
オーブントースターでこんがり焼けばOK!
★いわしとアボカドのグラタン
〔材料(2人分)〕
イワシかば焼き缶…1缶(100g)
アボカド…1個
トマト…1個
マヨネーズ…小さじ1
おろしにんにく…少々
シュレッドチーズ(スライスチーズでもOK)…40g
〔作り方〕
①アボカドは縦半分に切り、種を取り除いて皮をむき、角切りにする(スプーンでつぶすだけでもOK)。トマトはざく切りにする。
②ボウルにイワシかば焼き缶(缶のたれごと)、アボカド、トマト、マヨネーズ、おろしにんにくを入れて、混ぜる。
③グラタン皿に①を等分ずつ入れ、チーズをのせてオーブントースターで、チーズに焼き目がつくまで約3分焼く。
今泉:どうでしょうか?
ギリコ:うわっ、すごくいい香り~。そして、なんだかおしゃれ。
女子会で作ったらすごくウケそうな、カフェ飯風料理ですね。
今泉:今回は大きめのグラタン皿に2人分まとめて、どんと作りましたが、1人分ずつグラタン皿に入れて焼いてもいいですし、小さめのココットでかわいく作ってもいいと思います。
ギリコ:おいしい!
アボカドの濃厚な味わいに、イワシのかば焼き缶の甘辛い味つけがアクセントになっていて絶妙です。
非常食を使ったローリングストックのメニューだなんて、全然思えないですね。
今泉:防災は日々の備えです。無理なく日常生活で続けられるよう、楽しみながら続けてくださいね。
取材・文/瀬戸由美子
★今泉マユ子さんのオフィシャルブログ「レトルトの女王 缶詰の達人♪」はこちら!