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91歳の料理研究家・小林まさるさんのモットーは「年だから…なんて思わずどんどんチャレンジ!」疲れた時につくるのが『豚バラ肉の黒こしょう焼き』

小林まさるさんは義娘(息子の妻)である料理研究家の小林まさみさんの調理アシスタント。同時に自身もテレビや雑誌、講演会などで活躍するシニア料理研究家です。そんなパワフルなシニアライフを送るまさるさんの、若々しいマインドを保つ秘訣や、健康を支える食事、ライフスタイルとは?

 

調理中の小林まさるさん

小林まさるさん
1933年生まれ。終戦後15歳で樺太から北海道に引き揚げる。炭鉱の機械エンジニアになり、27歳からは3年間ドイツに赴任した経験を持つ。定年後は息子夫婦と同居。70歳より、義娘(息子の妻)まさみさんの調理アシスタントに。現在は自身もシニア料理研究家としても単独でテレビ、雑誌、書籍などで活躍中。著書に『人生は、棚からぼたもち!』(東洋経済新報社)など。YouTubeの動画配信「小林まさる88チャンネル」では、持ち前の明るいキャラクターが話題を呼んでいる。

■YouTube/https://www.youtube.com/@user-tk9ur8bu8s

 

料理で「誰かを喜ばせたい」という気持ちがパワーに

 

91歳にしてテレビに出演したり、料理本を出版したり、精力的に活動する小林まさるさん。その活動的なパワーはどこから湧いてくるのでしょうか。

 

「やっぱり、毎日料理をしているというのがいちばん大きいと思う。料理すること、食べることは昔から大好きだったからね。この食材をどう調理したら、よりおいしく食べられるかって考えるだけでワクワクするね。それに、食べ物の記憶をたどるといろいろな思い出が浮かんでくる。やっぱり食べることは、人間にとってすごく大事なことなんだと思う」(まさるさん)

 

こうした食事を大切にする気持ちは、幼少時代に住んでいた樺太で、ひもじい思いをした戦時中の体験からくるのだと言います。

 

「食べるものが何もない、マイナス30度の樺太で、とにかく腹いっぱい食べられれば、ほかには何もいらないって思ってた。山に入って木の実を探したり、土の中に埋められているじゃがいもを探して何mも雪を掘ったりしたね」(まさるさん)

 

そして戦後、日本に戻って仕事に就き、結婚。そして離婚。シングルファーザーとして二人の子どものために作り続けた料理や、その後、復縁した病弱な妻のために作った料理、そして定年後に同居した息子の妻であるまさみさんの家事負担を軽くするために作る料理など。いつも「大切な誰かのことを思って」料理をしてきました。

調理中の小林まさるさん
↑家にある材料で手早く作るというまさるさんのレシピは、シングルファーザー時代に二人の子どものために料理した経験から

 

「料理をすることでいいことはいっぱいあるけど、何よりもいいことは、誰かに喜んでもらえるということだと思うね。自分の料理を喜んで食べてくれる人がいるというのはやはりうれしいし、幸せなことだと思う。それに、おいしいものを食べると、誰でも楽しくなって笑顔になるでしょ。料理は人を幸せにすると思うんだ」(まさるさん)

 

そして、そんな幸せな記憶は、料理を食べた人の心にも、その味とともに深く刻まれるようです。まさるさんはよく、子どもたちのためにカレーを作ったそうですが…。

 

「夫(まさるさんの息子)は、親父の作るカレーが家庭の味! と言いますよ」(まさみさん)
調理中の小林まさみ・まさるさん
↑現在、家庭での食事作りはまさみさんが中心ですが、まさるさんも副菜や汁物を作るなどしてサポート

70歳にして持ち前のチャレンジ精神で出会った天職

 

料理が大好きで、「料理は人を幸せにする」と語るまさるさん。「家庭料理の楽しさを伝える」という料理研究家の仕事は、まさに天職といえるでしょう。

 

でも、まさるさんがそんな天職に出会ったのは、70歳を過ぎてからのこと。同居する息子の妻、小林まさみさんの調理アシスタントを務めるようになったことがきっかけです。「70歳にもなる男が息子の妻のアシスタントをするなんて恥ずかしい」ということを少しでも考えていたら、今のような、ワクワクするシニア料理家としての人生はありませんでした。

 

「60歳からの人生は意外と長いよ。ワクワクするもの、やってみたいことがあったら、どんどんチャレンジするべきだと思う。『もう年だからできない』とか『いい年をして恥ずかしい』と言って、諦めてしまうなんてもったいないよ」(まさるさん)

 

その言葉通り、好奇心が旺盛なまさるさんは「面白そうだな」と思ったものにはどんどん挑戦してきたといいます。例えば彫刻。

 

「歴史が好きだから仏像を彫ってみたいなと思って、知り合いに木材を分けてもらって彫ってみたらこれが意外と上出来でね。それから楽しくなって、ワシとかヘビとか彫ったよ。譲ってほしいという友達にプレゼントしたら、すごく喜ばれたのでうれしかったね」(まさるさん)

まさるさんの手彫り作品
↑小さなのみと刀で彫ります。彫り方は自己流。現在は自分で描いた龍の彫刻を少しずつ彫っています

 

「やってみて、これは合わないなとかちょっと違うなと思ったら、さっと切り替えて、次に興味のあるものに移ればいいと思う。俺は絵はやってみたけど、向いていないなと思って彫刻に変えたんだ。高齢者は切り替えを早くしたほうがいいね。『なんか違うな』と思いながら、無理に続けていられるほど時間は残っていないからね」(まさるさん)

コーヒーを挽くまさるさん
↑30代の頃からコーヒーを淹れるのが好き。豆をミルでひいて淹れます。お客さんが来たときに喜んでもらえるとうれしい!

 

夢は「男のシニア料理教室」

常に「やりたいこと」「ワクワクすること」にチャレンジしてきたというまさるさん、今後の夢をたずねると「シニア男性向けの料理教室」だと言います。

 

「若い人たちの間では『男子厨房に入らず』なんて言葉はもうとっくに消滅していると思うけど、高齢男性の中にはまだそんなふうに思っている人もいるかもしれないね。料理は楽しいよ。料理をすることでいいことがいっぱいあると思う。例えば、頭も体も使うから認知症・老化予防にもなる。誰かを喜ばせることもできる。そして何よりもまず、自分自身が生きていくために必要なことだということ。食べることは生きることだよ」(まさるさん)

 

まさるさんが思い描く「シニア男性向けの料理教室」とは、酒のつまみのような簡単にできるもの5品くらいをみんなで作って、出来上がったらそれをつまみにして一杯飲むといったスタイル。

 

「定年になると、趣味がなくて、どこに出かけたらいいかもわからないっていう男性が多いらしいから。そういう人が集まっていろんな話をする場ができるだけでも楽しいと思うし、そこで、料理の面白さに目覚めてくれたら、家に帰ってもどんどん作ったらいいと思う。そしたら家族にも喜ばれていいことだらけだよ」(まさるさん)

 

このように「夢」を生き生きと語るまさるさん。今回教えていただくレシピは、そんなパワフルな毎日を送るまさるさんでも、「さすがに今日は疲れてちょっと元気がない」という日に作るという「お守りごはん」です。

 

「俺の場合、体がだるいとか重たく感じるときは豚バラ肉を食べると元気になるんだよね。シンプルに塩・こしょうで炒めただけで食べることも多いけど、今日はにんにくとしょうがを加えてさらにパワーアップしてみたよ。ちょっと夏バテぎみだなと思うときにも、豚バラ肉を食べるとパッと元気が出るんだ」(まさるさん)

調理中の小林まさるさん
↑豚バラ肉はまさるさんのパワーの源。炒めたあと、余分な脂はきってさっぱりと

 

「豚バラ肉と聞くと、脂っぽいのかなと思ってしまいますが、炒めたあと、しっかりと脂をきってあるので、意外とあっさりしています。また、ゆでたもやしを合わせることでボリュームアップ。脂質のとりすぎを防ぐことができますし、さっぱりと食べやすくなります。シャキシャキとした食感もいいです」(まさみさん)

 

豚バラ肉は、元気回復に最適の「お守りごはん」

 

豚肉にはタンパク質のほか、代謝を促すビタミンB群が多く含まれており、タンパク質とビタミンB群を併せてとることで、より疲労回復効果が期待できるといわれています。もやしはゆでて軽く絞り、水気をきっているので、カサが減ってたっぷり食べられます。豚肉との相性も抜群です。

 

豚バラ肉の黒こしょう焼き

豚バラの黒こしょう焼き

 

【材料(2人分)】

豚バラ肉(薄切り・長さ5cmに切る):200g
もやし(根切りタイプ):1袋(200g)
サラダ油:大さじ1/2

塩:ひとつまみ

粗びき黒こしょう:小さじ1/3

 


にんにく(すりおろす):少々
しょうが(すりおろす):小さじ1/4
玉ねぎ(すりおろす):小さじ1/2
塩 小さじ1/4

 

 

【作り方】

①鍋に湯を沸かし、もやしをさっとゆでる。ザルに上げ、粗熱が取れたら水気を絞って皿に盛り、塩をふる。

 

②フライパンにサラダ油をひき、強めの中火で熱する。豚バラ肉を入れたら火を弱め、火が通るまで炒める。油をきり、ボウルに取り出す。

 

③②にAを加えてあえ、もやしの上にのせて粗びき黒こしょうをふる。

 

*豚肉ともやしを一緒に食べれば、よりさっぱりとおいしく!

 

 

撮影/砂原 文 取材・文/瀬戸由美子

 

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