コースを基本にアラカルトでも楽しめる
11月に西麻布にオープンした「洋食ビストロ TŌYAMA」。JR、京成線上野駅からすぐの「上野の森さくらテラス」2階にある「上野洋食 遠山」の姉妹店です。観光やショッピングの最中に寄れるカジュアルな上野の店に対し、西麻布は大人が静かにくつろげる隠れ家のような立地。店内には厨房をぐるりと囲むカウンターをメインにテーブルが3卓あります。
なんと言ってもおすすめはカウンター席。遠山忠芳エグゼクティブシェフの作業を間近に見られて、ライブ感も高まります。
まずコースは6,000円、10,000円(税別、以下同)の2種類。6,000円のコースはシェフが厳選した食材を使った前菜を3種類、コンソメロワイヤル(茶碗蒸しのようなコンソメを使ったアレンジ料理)、そしてメイン、〆のひと皿を選びます。
メインのラインナップはハンバーグ、ポークソテーやカツレツ、ビーフシチューなど。〆のラインナップはカレーやクリームシチュー、オムライスなど。間違いなく惹かれるメニューばかりで、これを一度に食べられるのは“オトナの贅沢”に他なりませんよね。
「メニューになくてもこれが食べたい、こんな調理法で食べたいとおっしゃってみてください。できることはやってみますよ。洋食には皆さん、それぞれの好みや思い出がありますから」とシェフ。
ポイントはフレンチの技法や発想も取り入れられていて、どれもがド直球の洋食なのではなく、時には洗練された素材の組み合わせだったり、あえて軽いソースに仕上げられたりすること。なので、重たすぎることなく、程よく洋食尽くしを楽しめるのです。また、こぢんまりした店内ゆえ、こちらの食欲や食べるペースにシェフがさりげなく目配りをしてくれているのも感じます。そんな優しさに胸を借りるつもりで、少しワガママを言ってみるのもアリかもしれませんね。
絶対に外せないデミグラスハンバーグ
「リクエストを聞いているうちに、種類が増えてしまって…」とシェフが苦笑いするように、アラカルトも充実。カウンターでひとり、ワイン1杯とひと皿で夕飯を食べるのにも最適です。
なんと言っても外せないのは遠山特製デミグラスハンバーグ2,200円。洋食には一家言ある人の多い京都で店を任されていた時代に、グルメな京都人に行列を作らせたというシェフの看板料理です。
仕入れた塊肉を厨房で捌くところからスタート。肉質、脂の入り方や水分の状態など、肉の状態を触って見極めながら、今日の肉で作る最高のハンバーグ用肉のバランスを探って行きます。基本的には国産の牛の腿肉と豚肉の合挽きですが、その割合や挽き(やや粗挽きのタイプではあります)、混ぜ具合はその日の肉によって異なるとのこと。シェフの指の感覚だけが正解を知っています。
ラグビーボール型に成形して火を入れていくので、焼き上がった時、端の部分はしっかりめに火が通り、中央はややレア感が残り、食べる場所で明らかに食感が異なります。うーん、これがたまらない! ぜひナイフを端から入れて食べ進めてください。
真っ黒なデミグラスソースは前編でご紹介した通り。コースを頼むにしても、アラカルトで頼むにしても、絶対に外せないメニューです。
●遠山特製デミグラスハンバーグ
信頼する熊本の食材を取り寄せる
遠山シェフの生まれは熊本県。オーナーシェフとして地元で正統派フランス料理店を経営したこともあり、慣れ親しんだ熊本の食材がたくさんあります。
「熊本は肉も魚も野菜もとても美味しいんです。地元との繋がりで市場を通さずに直接仕入れることができるので、熊本の美味を皆さんにも知っていただけたら」。
例えば天草地方で飼育されている地鶏「天草大王」。「大王」と呼ばれるほどの大きなサイズが特徴の鶏で、大自然のもと、ストレスなく育てられたその肉は、脂がのってジューシー、絶妙な歯ごたえが美味です。
これらを唐揚げ、ガーリックソテー、チキンカツなど、好みの部位を好きなように調理してもらうことができます。
●天草大王の軽いタタキのマリネ コース料理の前菜より
●天草大王のタルタル仕立て コース料理の前菜より
その鶏ガラを使って取ったスープで、〆の選択肢にはこんなメニューも!
●天草大王のラーメン コース料理の〆より
「洋食屋と看板を掲げるのは、フランス料理店とは違うプレッシャーがあるんです。例えば、6,000円のコースのメインにハンバーグ?と思われるお客さまもいらっしゃいます。一般的に洋食は安くてカジュアルなイメージが持たれていますから。だからこそ、期待に応えたいし、いい意味で予想を裏切れるようでありたい」と遠山シェフ。
好きなものをアレもコレもと頼め、小さな頃の夢を叶えてくれる「洋食ビストロ TŌYAMA」。子供のようにワクワクしながら、大人ならではの新しい食の体験をしてみてはいかがでしょう。
※緊急事態宣言終了まで、営業時間は16時~20時。日、月曜休み。
※取材時は写真撮影のときのみ、マスクを外して行いました。