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自分で遺言をつくりやすくなった「自筆証書遺言保管制度」とは

「新しい生活様式」を明るく前向きに送るための、読んでトクする新連載。今回は、誰でも手軽に遺言をのこしやすくなった「自筆証書遺言保管制度」についてのセミナーレポートです!

夏休みやお盆は、普段はなかなか会えない親族と集まるのが楽しみな時期。残念ながらこの夏はコロナ禍で遠方には帰省しづらいですが、せめて電話で話したり、オンライン帰省を検討しているという人も多いでしょう。

 

家族が集まったときこそしっかり話し合いたい…でもなかなか話しにくい話題でもあるのが「遺言」。その最新情報についてのセミナーで、私たち世代の遺言の必要性を学んできました。

 

 

「相続」「遺言」と聞くと、「大金持ちには関係あるけれど、一般家庭の私には関係ないわ~」と思っていませんか? でも実は、そんなことはないんです!

 

下のグラフは、遺産相続トラブルの件数の割合を遺産額別にみたもの。これによると、遺産額1000万円以下のトラブル件数が約3割、遺産額5000万円以下のトラブル件数が約7割を占めています。金額としては、親が都市部で持ち家に住んでいれば当てはまってしまいますね。

 

 

▼遺産額別の認容・調停成立件数

 

「相続争いの原因はさまざまです。でも、少なくとも遺言書があれば、亡くなった人の意思が見えない中で残された人が遺産について話し合う…という、もめがちなシチュエーションを避けることができます」と話すのは、三井住友信託銀行の若松広明さん。

 

 

手軽に遺言をのこしやすい「自筆証書遺言保管制度」が誕生!

 

 

とはいえ、遺言をどのように書くのか、具体的に考えたことがないとよくわかりませんよね。遺言にはいくつか形式がありますが、主に使われているのが、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」

 

下記のように、「公正証書遺言」は公証人にきちんとした形式のものをつくってもらえるけれど、お金と手間がかかりがち。一方、「自筆証書遺言」は自分で書いて手軽につくれるものの、気をつけないと不備があって無効になったり、活用されなかったりする恐れがあるといったメリット・デメリットがあります。

 

 

▼公正証書遺言と自筆証書遺言の違い

 

この自筆証書遺言について、2020年7月10日から、法務局の「自筆証書遺言保管制度」がスタート。これは自筆証書遺言を法務局に預け保管してもらうことができる制度。預ける際には形式もチェックしてくれ、自筆証書遺言にありがちだった

 

「書いた遺言が形式不備だった」

「相続発生後に発見されない」

「偽造や破棄の恐れがある」

「家庭裁判所の検認が必要」

 

といったデメリットを解消。より手軽に費用をかけずに、遺言書をのこすことができるようになりました。ただ、新制度でも内容チェックはしてくれないので、遺産を分割しやすいかどうか、相続人同士でもめる内容になっていないか、などはしっかりご自身のチェックが必要です。

 

 

▼自筆証書遺言保管制度の概要

 

 

遺言はいつから書き始めたらいい?

 

 

今の時代、70代でも80代でも元気な人がいっぱい。自分や親がいくつになっても「遺言なんてまだ早い」と考えがちですが、

「例えば女性だと、80代で10人に3人が認知症になるというデータが。認知症発症後だと、意思能力の問題で遺言が作成できないリスクがあります。逆に、意思能力がはっきりしていれば、何歳になっても、何度でも書き換えられます」(若松さん)

 

いったん遺言を作成しても、親からの遺産相続があったり、孫の誕生で家族が増えたり…といった変化に合わせて遺言を見直し、修正することができます。また、例えば子どもがいない夫婦の場合、のこされたほうが今住んでいる家に住み続けられるように配慮し、父母やきょうだいとの相続分を考えた遺言にすることも可能です。

 

 

▼シニア期における遺言作成と見直しのイメージ

 

 

「2015年の相続税法改正で、今まで課税対象でなかった世帯も課税対象になったのに伴って、幅広い資産階層の人が遺言を書くようになりました。今後はさらに、遺言作成の若年化と資産階層の拡大が予想されます」と若松さん。

 

何となく、遺言は一度書いたら大事にしまいこんで終わり、なイメージがありましたが、早めに作成して、むしろ定期的に見直したほうがいいんですね。

 

 

昔より身近になってきたとはいえ、自分で遺言を書くのは難しそう…という人には、サポートしてくれるサービスもあります。例えば三井住友信託銀行では、無料の「WEB遺言信託サービス」を昨年10月から開始。WEB上のガイドに沿って相続人や財産の概要を入力することで、遺言書のイメージを確認することができたりします。一度こういったサービスを体験し、自分で遺言を書いたり、遺言信託のサービスを検討したりするのも役立ちそう。

 

思い切り外出ができないこの夏、家族や夫婦で「この先」のことをゆっくり話し合ってみるのもいいかもしれません。

 

 

◆資料提供/三井住友信託銀行

 

取材・文/倉澤真由美

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