年齢を重ねるにつれ、寝つきが 悪くなったり、夜中に目が覚めたりと、 眠りのトラブルが増加するもの。
夏はさらに、 暑さも加わって睡眠の質が低下しがちです。
でもちょっとしたコツで睡眠の質は 上げることができ、それだけで 若返り・健康・美肌効果が倍増するんです!
そんな快眠テクニックをお教えします。
こんなにある!「眠り」のスゴイ効果
若返り、美肌、ダイエット、疲労回復…。しっかり眠ることの恩恵は私たちが思っている以上に絶大!
まずはそんな睡眠の多大なる効果を知っておきましょう。
お話を伺った方々
すなおクリニック院長
内田 直さん Sunao Uchida
1956年生まれ。医学博士。精神科医。スポー ツドクター。早稲田大学スポーツ科学学術院 教授などを経て現クリニック開業。睡眠にまつわる病気やうつ病、認知症の診療にあたる
ハーバード大学医学部客員教授
根来秀行さん Hideyuki Negoro
1967年生まれ。医学博士。パリ大学医学部客 員教授。事業構想大学院大学理事・教授。専門は抗加齢医学、睡眠医学など。著書『「毛細 血管」は増やすが勝ち!』(集英社)も話題
快眠セラピスト
三橋美穂さん Miho Mihashi
寝具メーカー勤務を経て独立、睡眠のスペシ ャリストとしてメディアや多方面で活躍。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100』(かんき出版)など
若返り効果をもたらす2大ホルモンはこれ!
成長ホルモンの 若返り効果
ハリのある肌を作る
成長ホルモンには肌組織の修復・再生を促し、 新陳代謝を活発にする働きがあり、ハリのある肌を作ります
筋肉と骨を作り丈夫にする
傷ついた筋繊維を修復し、筋肉を増強するのも成長ホルモンの作用 のひとつ。骨を育て、 丈夫にする働きも
体力を回復させ免疫力を高める
体を修復し、体力を回 復させる働きによって免疫力を高め、さまざまな病気を防ぐのも成長ホルモンの役割
細胞を修復して老化を防ぐ
成長ホルモンは傷ついた体の組織を修復し、 疲労や体力を回復させ、 体の機能を正常に保ち、 老化を防ぎます
メラトニンの 若返り効果
抗酸化作用で老化を防ぐ
メラトニンには高い抗 酸化作用があり、体のサビつきを抑えて、シミ・シワ、動脈硬化などの生活習慣病を予防
良質な睡眠をもたらす
メラトニンが分泌されると眠気が生じ、さらに分泌が高まると深い眠りに落ち、良質な睡眠がもたらされます
成長ホルモンの分泌を促す
メラトニンの分泌が高 まり深い眠りに落ちると、それが成長ホルモンの分泌を呼び込み、 その活動が始まります
免疫力を高めて病気を防ぐ
免疫機能を持つT細胞を多く作り出すメラトニン。風邪をひきにくくしたり、がん予防効 果も期待できます
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睡眠中に分泌される 「成長ホルモン」が老けない体をつくる
忙しいからと、つい睡眠時間を削ってしまっている人も多いと思いますが、美と健康への睡眠の効果は想像以上に絶大。そのカギを握るのが 睡眠中に分泌されるホルモンです。
「睡眠は、"若返りのための再生工場"ともいわれ、工場の働き手として欠かせないのがホルモンです。そしてその代表格が"成長ホルモン"。ご存じのように、成長ホルモンには、 子どもの体を大きく育てる働きがありますが、大人になってからも体でさまざまな働きをします。そのひとつが、全身の細胞を修復する働きです。これによって体の疲れが取れた り、傷が治ったりします。肌の組織 の修復・再生も促し、新陳代謝を活発にする働きによってハリと潤いのある肌を作るのも成長ホルモンの役割です。また、筋肉を増強し、骨を丈夫にする働きや、免疫力を強化する働き、脳の働きをよくする働き、 視力をよくする働きのほか、脂肪を分解し、エネルギーとして使う働きもあります」(根来秀行先生)
このように成長ホルモンの働きは、 実に多彩で重要。そしてこのホルモ ンをしっかりと分泌させるのに不可欠なのが十分な睡眠です。
「成長ホルモンの約 70 %は睡眠中に分泌されるので睡眠不足だと分泌量が減ります。そもそも成長ホルモンの分泌は加齢とともに減り、 40 歳では 20 歳の頃の半分に、 60 歳では4分の1ほどに減少。それに睡眠不足も加わったらさらに分泌量が減り、老化が進むうえ、体に不調が出たり、太りやすくなったりとトラブルが続出。これを防ぐためにも良質な睡眠をとるべきなのです」(根来先生)
良質な睡眠をもたらし、 若さをキープする「メラトニン」
成長ホルモンとともに、"若返りの再生工場"の主役となるホルモン が"メラトニン"。
「メラトニンは、暗くなると分泌さ れる"睡眠ホルモン"です。メラトニンも、病気にならない体づくりと 若返りに欠かせません。まず、メラトニンには、眠りを誘い、良質な睡 眠をもたらす働きがあります。朝起きて太陽の光を浴びると、その約 15 時間後にメラトニンが分泌され、眠気がもたらされます。そしてその分 泌が盛んになると眠りに落ち、深い 眠りに入ります。それを合図に成長 ホルモンが分泌されるので、メラトニンは成長ホルモンの分泌を呼び込 むうえでとても重要な役割があるのです。また、メラトニンは非常に高 い抗酸化作用があります。その作用 は、これまでに発見された抗酸化物 質の中で最も強いともいわれています。これによって体のサビを取り、 シミやシワを防いだり、動脈硬化や がんなどの病気も防ぎ、老化を防ぐのです」(根来先生)
さらに、メラトニンには免疫力を 高める働きも。
「風邪の原因となるウイルスを撃退 したり、腫瘍に対抗したりするのは、 体の中で免疫機能を担うリンパ球と いうグループの細胞です。このうちのT細胞という細胞をたくさん作らせる働きのあるのがメラトニンです。 このためメラトニンがたっぷり作ら れると、T細胞もたくさん作られて 免疫力が高まり、風邪をひきにくくなったり、がん予防にもつながるのです」(根来先生)
残念なことにメラトニンの分泌量も加齢とともに減っていくそう。
「メラトニンの分泌量は思春期に最大となり、それ以降は年齢を重ねるとともに減っていくことがわかっています。年をとると眠りが浅くなったり、朝早く目覚めるのはこのことも関係しています」(根来先生)
ただし、メラトニンもちょっとし たコツで分泌量を増やせるので、その方法はこの連載の3回目以降でご紹介。いずれにしろ、メラトニンと成長ホルモンは、 老化を防ぐうえで非常に重要なホル モン。このふたつの恩恵を受けるた めにも、質のよい睡眠を心がけるこ とが大切なのです。
撮影/天日恵美子 ヘア&メイク/榛沢麻衣 モデル/栗本奈央 スタイリスト/程野祐子 取材・原文/和田美穂 撮影協力/アワビーズ