『更年期世代の睡眠トラブル を解消』。最後にお届けするのは睡眠にまつわる病気のこと。
単なるトラブルと思っていても、それが続くようなら病気が隠れている可能性も!
眠りにまつわる病気について、内田直先生にうかがいました。
あなたの睡眠悩み、実は病気の可能性も!
知っておきたい眠りの病気
不眠症
眠れないことに神経質にならず、日中、活動的に過ごして改善を
「眠る時間は十分にあるのに眠れないのが不眠症。不眠症には、ショックな出来事があったなどで一時的に不眠になっている3カ月未満の短期睡眠障害と、3カ月以上続いている慢性睡眠障害とがあります。病院では睡眠薬での
治療が中心です。睡眠薬は非常に安全ではありますが、ただ、服用すると日中の活動性が低下しやすくなります。ですから薬に頼りすぎないことが大切。OurAge世代になるとどうしても中途覚醒が増えますが、それが続くと"ま
た眠れない"と考え、睡眠に対して神経質になり、余計に眠れなくなってしまいがち。睡眠に意識を向けすぎず、日中に寝る間も惜しんでできるような夢中になれることを見つけて活動的に過ごすことが一番の改善策です」
ナルコレプシー
日中の重要な場面でも居眠りをしてしまう病気
「日中の会議中や運転中などにも居眠りをしてしまうならナルコレプシーの可能性が。この病気には4つの症状があります。日中の重要な場面で寝てしまう睡眠発作があること。驚いたり、大笑いしたときに体の力が抜けてしま
う情動性脱力発作があること。寝始めに夢か現実かわからない幻覚や幻聴が起こること。入眠期に金縛りのように体が動かなくなる睡眠麻痺が起こることです。これは2,000人に1人の割合でみられる病気で、脳のオレキシンと
いう物質を作る神経細胞が壊れることが原因と考えられています。根本治療は難しいのですが、日中に眠気を起こさせない薬などで治療をします。夜に十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心がけるなどの生活指導も行います」
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上ある状態
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中に10秒以上呼吸が止まることが1時間に5回以上ある状態。睡眠時に舌が喉に落ち込み、気道がふさがれて呼吸が止まることが原因で、あごが小さい人や肥満の人がなりがちです。いびきをかく人はSASの可能性大。治療は、睡眠時に下あごを前に出すマウスピースをつける方法や、睡眠時に専用マスクを鼻に装着し、無呼吸が起きない程度の空気圧をかけて気道を開くCPAP(シーパップ)という方法などです。無呼吸が1時間に20回以上あるなら、CPAPが保険適用となり、月5,000円程度で装置を借りられます。軽症なら横向き寝にするだけで改善することも。日中に強い眠気がある人はSASの可能性もあるので受診を」
ムズムズ脚症候群
寝ているときに脚などがムズムズして眠れない病気
「ムズムズ脚症候群は、寝ているときに脚や体がムズムズして睡眠障害が起こる病気。多くは大腿部の内側などがムズムズし、脚を動かさずにはいられない感じがあります。脚だけでなく腰のあたりがムズムズする場合も。日本人では20〜50人に1人がこの病気といわれています。これは脳のドーパミンという神経伝達物質の機能障害が原因とされ、パーキンソン病の治療薬であるドーパミンの働きを強める薬で改善します。また鉄欠乏症になるとドーパミンの合成が十分に行われず、ムズムズ脚症候群になることがあり、その場合は鉄剤も服用。この病気は自然に軽快することもありますが、病気だと気づいていない場合も多いので、気になる症状があったら一度診察を受けて」
お話を伺った方
すなおクリニック院長
内田 直さん Sunao Uchida
1956年生まれ。医学博士。精神科医。スポー ツドクター。早稲田大学スポーツ科学学術院 教授などを経て現クリニック開業。睡眠にまつわる病気やうつ病、認知症の診療にあたる
撮影/天日恵美子 取材・原文/和田美穂 撮影協力/アワビーズ