こんにちは小野アムスデン道子です。11月2日の“死者の日”が近づくメキシコ、それも“魔法の村”を訪ねて!メキシコ中西部ミチョアカン州の州都モレリアで開かれた「魔法の村フェスティバル Feria Pueblos Magicos」に行って参りました。
“魔法の村”とは、メキシコ政府観光局が「魔法がかかっているように魅力的な村」と認定したメキシコ全州の120カ所の村や自治体。その魅力を知ってもらうために、毎年、このフェスティバルが開かれています。2018年の開催地はメキシコシティから北西へ飛行機で1時間のモレリア。ミチョアカン州の州都であり、スペイン植民地時代の建物が残る世界遺産の歴史地区を持つ美しい街です。
“死者の日”は、世界的に大ヒットして日本でも家族愛に涙した人が多くいたアニメ映画『リメンバー・ミー(原題:COCO)』を観た人は、イメージがわくかも。11月2日の当日はメキシコの祝日で、その前から全土でいろいろとお祝いが開かれます。
故人に思いを馳せて祝う日本のお盆のようなものですが、とても明るい雰囲気で、マリーゴールドの花、がい骨や十字架、キャンドルで派手な飾り付けがされます。
モレリアの有名なキャンディマーケット(メキシコのフルーツ羊羹的な甘味菓子アテや、工芸品などもあります)にも、“死者の日”に向けてがい骨のお菓子が売られています。
この市場はクラビヘロ宮殿のすぐ近くで、ミチョアカン州名物の塗り物の工芸品ほか、カラフルなメキシコらしいお土産もいっぱいでおススメ。
親切な甘味屋のご主人がココアやナッツなどを入れて、メスカル(メキシコの有名なお酒)で造ったリキュールをいろいろ味見させてくれました。
市内中心にあるアルマス広場の周りなど、世界遺産の歴史地区を散策。まず、18世紀に建てられ、歴史を語る壁画が内部を彩る州庁舎へ。階段の前面には、メキシコ独立革命の英雄であるミゲル・イダルゴ神父と赤いスカーフを頭に巻いたホセ・マリア・モレーロスがメキシコ軍を率いる場面が描かれています。モレーロスはこちらの街出身で、モレリアという名前の由来にもなった人物。彼の生家も広場から近くにあります。
ランチは、広場にある歴史的な建物に入ったレストラン「ラ・コンスピラシオン・デ1809」で。ピーマンのように大きいチリの肉詰めフライが、適度にスパイシーでビールに合います。ライム果汁を絞ったグラスにビールを注いで飲む“ミチョラーダ”という飲み方が、お昼間にはアルコールも少なめで爽やか、そしてビタミンも取れて気に入りました。
ラ・コンスピラシオン・デ1809 la Conspiracion de 1809
https://laconspiracionde1809.com
広場からちょっと離れますが、20世紀初めまで使われていたという18世紀に造られた水道橋へ。
石畳の並木道に愛の小径と名づけられた美しい横道。街並が美しくて歩いていてとても心地よいです。
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さて、夜はいよいよライトアップされたカテドラルが美しい広場の特設会場で「魔法の村フェスティバル」のオープニング。
ここで新しい魔法の村が9つ発表されました。メキシコの自然や文化が今も息づく美しい街としての認定は、ルールを定めてその美観や伝統を守らなければならない一方、観光地として国が援助を与え、雇用を生み出す経済効果も生み出します。
ミチョアカン州には8つの“魔法の村”がありますが、州都であるモレリアは大きな街なので、フェスティバルの開催地ですが“魔法の村”ではありません。
夕食は、地産地消の食材を使ったフレッシュな味が持ち味の、レストラン「ルー」へ。蝶をモチーフにしたテーブルコーディネートで、3種類のメスカルをティスティング。チーズをかじりながら塩とオレンジで飲みます。ミチョアカン州には、冬になるとカナダから数万から億という数の蝶がアンガンゲオという村に飛来するのだとか。
食器もミチョアカン州のものとこだわりを見せるオーナーシェフのルセーロ(愛称ルー)氏の作る料理は、メインのトラウトのソテーをはじめ、素材の生きる優しい味付けで、スパイシーなメキシコ料理という概念を変えるものでした。
レストラン・ルー Restaurant LU
https://www.hotelcasino.com.mx/restaurante-lu-morelia
翌日は、メキシコ全土の“魔法の村”が、ブースを出してその魅力をアピールするフェスティバルをのぞいてから、ミチョアカン州の“魔法の村”の一つ、パツクアロを訪れました。
「魔法の村フェスティバル」では、それぞれの村がブースでご自慢の工芸品やフードを出品。村の文化を披露する音楽や祭りのダンスなどのパフォーマンスもあって、本当に楽しい。1日中いても飽きないと思います。
メキシコ全土から集まった工芸品や雑貨などは、その場で購入もできます。
ランチのフードブースでは、メキシコの街角では普通のことながら、なんと会場に窯を設置してトルティーヤを焼き上げています。
熱々タコスが抜群においしい。左はミチョアカン州の名物の小魚チャラレス(Charales)のフライ、左はモレソース。
午後は、車で約1時間の南西部のパツクアロへ。“魔法の村”の認定を受けているこの町は、パツクアロ湖岸にあって、ミチョアカンの伝統カラーである赤と白に2色に塗られた建物が並びます。
マグラダのマリア像が美しいバシリカやカトリック教会など16、17世紀の建物が残る町は、歩いて回れます。
訪れた日は、コロンブスがアメリカに上陸しことを記念するコロンブス・デーで、町も音楽団や屋台が出て賑やか。
この町から見えるパツクアロ湖にある小さなハニツィオ島は、“死者の日”には島中にがい骨など伝統的な飾り付けがされ、マリーゴールドの黄色の花に彩どられる美しい島として、人気の行き先なのだそう。
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モレリアに戻り、もう一カ所、“死者の日”にははずせない、有名な「死の貴婦人カトリーナ」の粘土像を作るアーティストであるファン・トレス Juan Torres の工房があるカプラの町へ。町の入り口では、カラフルなカトリーナ像がお出迎え。
元々は、風刺画家ホセ・ポサダが1913年に描いたイラストだったカトリーナ。その後、フリーダ・カーロの夫でもあり、有名画家であるディエゴ・リベラの作品に登場して大人気となり、今やすっかり“死者の日”のアイコンとなっています。
このカトリーナ像をはじめ、“死者の日”をモチーフとする作品で有名なアーティストなのが、ホアン・トレスです。工房には、若いアーティスト達が住み込みで工芸やアートの製作に励んでいて、作品を売っている人も。
メキシコらしいカラフルなアクセサリーを作っているベリア・カナリスさんもそんな一人です。シンプルなドレスにとても映えそうな、華やかなビーズで飾られたハートのモチーフのネックレスは、4,000ペソ(約2,400円)前後。造り手から直接に購入できるのもうれしく、写真を撮らせてもらいました。
ファン・トレス工房 Juan Torres’s Workshop
住所:Santos Degollado s/n, Col. Capula. 58331 Capula, Morelia
素朴で昔ながらの村々、カラフルに死者のことを祝う文化、素材感の生きた料理と、メキシコに今までにない魅力を感じた旅でした。
取材協力/メキシコ観光局 www.visitmexico.com