こんにちは小野アムスデン道子です。シンガポールと言えば、高層ビルやラグジュアリーなホテルが立ち並ぶ“今”のシティというイメージがあるかもしれませんが、それだけではない、古きよきエキゾチックな一面も持っています。古来、交通の要衝として発展して来たこの国は、中国やインド、ヨーロッパなどからの移民が形成してきたプラナカンという独特の文化が息づいています。そして、それが華麗なファッションの世界で花開いているのがサロンクバヤです。
サロンは腰衣、クバヤは上衣のこと。渋谷区立松濤美術館で、サロンクバヤとそれを飾るジュエリー、見事なビーズ細工のスリッパなど140点を展示した「サロンクバヤ:シンガポール 麗しのスタイル つながりあう世界のプラナカン・ファッション」展が開かれています。(会期2016年9月25日まで)
サロンは、日本でも馴染みのある更紗の生地。ろうけつ染めの手法で描かれた細かな花模様のなんと美しいこと。それをプラナカンの女性は優雅に腰にまき、上に繊細なレースのクバヤをまといました。クバヤにはボタンがなく、クロサンという金細工に宝石がつくこともあった3連のブローチで留めるというのもまた優雅。足元のスリッパのビーズ細工も美しい手仕事の細かさに驚かされます。
展覧会では時代をおって、クバヤはインド更紗の時代に遡り、日本の着物との関わりに触れもします。そして、ヨーロッパからの白いレースやオーガンジーが取り入れられた時代、そしてミシンの登場でスタイルも身体にそったものになっていった変遷などを見ることができます。どのサロンクバヤもそれぞれに美しく、模様や図柄にストーリーを持っているようです。
もし身にまとったら、心まで優雅になりそうだと思えるサロンクバヤ。美しい身のこなしで評価の高いシンガポール航空の制服も、サロンクバヤなのです。シンガポールには、国立アジア文明博物館やプラナカン博物館のほか、カラフルなプラナカン建築の残るエリアもあります。
この展覧会は、2016年に日本・シンガポールが外交関係樹立50周年を迎えることを記念して開催されたもの。移民の子孫としてシンガポールで独特の文化を築いてきたプラナカンの人々。その美しい衣装の数々が時代を越え、そして国を越えて繋がりあっていることに、感動を覚えるおすすめの展覧会です。
渋谷区立松濤美術館
東京都渋谷区松濤2−14−14
電話: 03-3465-9421