内臓脂肪が増える原因とされがちな油ですが、人が生きていくうえで必要となる三大栄養素のひとつでもあります。健康に欠かせない油の特性と種類を知って、上手にとりいれましょう。
内臓脂肪を落とす食事ルール
よい油を適量とる
油は「体に悪い」「カロリーが高いから太る」という人、よい油を適量とれば大丈夫! 脂質には生命を維持し、細胞膜やホルモンを作る大切な働きがあります。
油の摂取基準は1日40~60g。でも食材にも多く含まれているので、スプーン1杯(12g)程度を目安に、油の特性を知って体によい油を取り入れて。
油の分類
不飽和脂肪酸
●亜麻仁油など「オメガ3」を積極的にとりたいわけは?
油脂のうち「不飽和脂肪酸」は常温で固まりにくい油のこと。さらに3つに分けられます。「オメガ6」と「オメガ3」は、体内で作ることができない「必須脂肪酸」で、食べ物からとる必要があります。
このうち、オメガ3は中性脂肪や悪玉コレステロールを下げたり、白血球の働きを抑制するなど、積極的にとるべき抗炎症作用のある油です。多く含まれるのは青魚と、一部の植物油だけで、亜麻仁油などが推奨されるのはそのため。ただし酸化しやすいので調理には不向きです。
一方オメガ6は多くの植物油に含まれ日本人が食生活の中で多く摂取している油です。白血球を活性化させるなど大切な役割がありますが、摂取量が過剰になると炎症を起こしやすくなり病気につながります。
意外なのはオリーブ油に多く含まれる「オメガ9」。体内で作ることができるので必ずしもとる必要のない非必須脂肪酸です
●オメガ3脂肪酸(積極的にとりたい油)
EPA、DHA、α-リノレン酸(青魚 亜麻仁油えごま油など)
●オメガ6脂肪酸(とりすぎに注意したい油)
リノール酸、γ-リノレン酸(サラダ油など)
●オメガ9脂肪酸(適度にとりたい油)
オレイン酸(オリーブオイル菜種油など)
●トランス脂肪酸(なるべく避けたい油)
マーガリン、ショートニング
飽和脂肪酸
●話題の「MCT」オイルは、体脂肪をためにくい!
「飽和脂肪酸」は体内でも作れ、摂取量が多すぎると生活習慣病のリスクが高まるとされています。油のほとんどに含まれる「長鎖脂肪酸」、分子の鎖の長さが約半分の「中鎖脂肪酸」、さらに短い「短鎖脂肪酸」の3つがあり、とるべきは中鎖脂肪酸。
注目され続けている「MCTオイル」もこれ。MCT(Medium Chain Triglyceride:ココナッツオイルなどに含まれる)だけを精製して作り、エネルギーとしてすばやく分解され、体脂肪として蓄積されにくい特徴が。
一方、短鎖脂肪酸は腸内で作られるよい働きの成分ですが、経口摂取してもよい効果は見込めません。
●長鎖脂肪酸(とりすぎに注意したい油)
バター、牛脂、ラード、パーム油
●中鎖脂肪酸(とってもOKな油)
MCTオイル、ココナッツオイル
●オメガ9脂肪酸(とりすぎに注意したい油)
バター、牛乳
監修
横山裕一さん
Hirokazu Yokoyama
1959年生まれ。慶應義塾大学保健管理センター教授。医学博士。当初、アルコール代謝を研究、米国留学中、アルコール脱水素酵素(ADH7)の遺伝子解析に従事。本センター異動後は、飲酒を含めた生活習慣、メタボリックシンドローム、脂肪肝などをテーマに数々の研究成果を報告。著書に『こうして落とす! 女性の内臓脂肪』(PHP 研究所)
栗原 毅さん
Takeshi Kurihara
1951年生まれ。栗原クリニック東京・日本橋院長。医学博士。日本肝臓学会専門医。治療だけでなく病気予防にも力を注ぎ、わかりやすい生活習慣指導に定評あり。肝臓専門医の視点を生かした消化器疾患、糖尿病、高脂血症、脂肪肝、内臓脂肪、肥満などに関する著書多数。クリニックは連日、健康を気遣う中高年で満員に。
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イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子