冬の寒い時期になると増えてくる風邪やインフルエンザ。新型コロナだって症状は同じような感じだし…、実はそんなに心配しなくても大丈夫? 気になる疑問をハーバード&ソルボンヌ大学医学部教授の根来秀行教授に伺いました。
ただの風邪ではありません。2022年まで感染が続く…とハーバード大学は予測
新型コロナウイルス感染症もウイルス性の風邪の一種ですが、咳や発熱、鼻水などの一般的な風邪の原因となるのは、従来からあった4種類のコロナウイルスです。風邪そのものを治す薬はありませんが、安静にしていれば自然に治ります。
さらに、2002年にはSARS(サーズ)、2012年にはMERS(マーズ)の原因となった2種類のコロナウイルスが登場。感染すると肺炎を起こし重症化しやすく、被害も大きかったのですが、患者を隔離するなどの感染症対策でSARSコロナウイルスは消滅。MERSコロナウイルスは中東では確認されていますが、流行は収まっています。
最初の発生地となった中国湖北省の武漢では、感染源の候補として挙げられているコウモリやタケネズミ、アナグマ、アマガサヘビなどの野生動物が市場で売られていたよう
そして2019年の暮れ、それまでになかった7番目のコロナウイルスが確認され、「新型コロナウイルス」と呼ばれるようになりました。それまでのコロナは鼻やのどの粘膜に付着して増殖し、気管支に下りてくることはほぼありませんが、新型コロナは直接細胞に侵入し、気管支から肺にまで炎症を広げ、重篤な症状を招きます。
1年近くたち、獲得免疫に期待が集まり、「新型コロナもただの風邪」「取るに足りない」などという意見もありますが、抗体ができても約1〜2カ月でかなり低下し、再感染も確認されています。
WHO(世界保健機関)は、感染拡大を放置して集団免疫の自然な獲得を目指すのは、「科学的にも倫理的にも問題がある」と警告(2020年10月12日)。今なお、世界中で感染者や死者を出し続け、パンデミックが収まらない現状では、拙速な対応は危険です。ハーバード大学の研究チームは、2022年までは感染の流行が続く可能性があると発表しています。
根来秀行さん
Hideyuki Negoro
1967年生まれ。医師、医学博士。ハーバード大学医学部PKD Center Visiting Professor、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、杏林大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授、社会情報大学理事。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など。最先端の臨床・研究・医学教育の分野で国際的に活躍中。本連載から生まれた『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業「毛細血管」は増やすが勝ち!』『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』(ともに集英社)が好評発売中
撮影/森山竜男 イラスト/浅生ハルミン 取材・原文/石丸久美子