新型コロナに感染しても症状が出なかったり、急激に悪化して命の危険にさらされることも。軽症化と重症化の分かれ目は一体どこにあるのでしょうか? ハーバード&ソルボンヌ大学医学部・根来秀行教授に詳しく伺いました。
5〜7日目に免疫の暴走が起きると一気に重症化へ
新型コロナに感染しても多くは症状が出ません。症状が出る場合も、大半の人は咳や発熱などの軽症で終わるので、感染していたことに気づきません。
そのため、感染が急速に広がる恐れがあります。
進行の分岐点は、一般的な風邪症状が出てから5〜7日目くらい。軽症の人はそのまま快方に向かいますが、重症化する人は急激に悪化し、肺炎に至ります。
その背景にあるのは「サイトカインストーム」。免疫細胞がウイルスと戦うために作るサイトカインが制御不能となって放出され続け、自分の細胞まで傷つけてしまう現象、いわゆる免疫暴走です。肺胞のまわりの間質や毛細血管でサイトカインストームが起きると、肺で過剰炎症が起こり、突然悪化するのです。
新型コロナウイルスの場合は、サイトカインの中でも「インターロイキン6」という物質がたくさん出ています。これが毛細血管を介して全身に運ばれ、さらなる炎症を引き起こし、症状を悪化させていきます。最悪の場合、多臓器不全に至って命を落とすことになります。
根来秀行さん
Hideyuki Negoro
1967年生まれ。医師、医学博士。ハーバード大学医学部PKD Center Visiting Professor、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、杏林大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授、社会情報大学理事。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など。最先端の臨床・研究・医学教育の分野で国際的に活躍中。本連載から生まれた『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業「毛細血管」は増やすが勝ち!』『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』(ともに集英社)が好評発売中
撮影/森山竜男 イラスト/浅生ハルミン 取材・原文/石丸久美子