お腹をへこますというと、昭和生まれの私たちは腹筋運動をしなくてはならないと思いがち。でも、頑張ったけれどへこまなかったという声が多いのも事実です。では、どこを鍛えればいいのでしょう?
お話を伺ったのは
金岡恒治さん
Koji Kaneoka
1962年生まれ。整形外科医。早稲田大学スポーツ科学学術院教授。筑波大学整形外科講師を経て、2007年から早稲田大学にてスポーツ医学、運動療法の教育・研究に携わる。シドニー、アテネ、北京五輪の水泳チームドクターを務め、ロンドン五輪にはJOC本部ドクターとして帯同。日本における体幹深部筋研究の第一人者
ぽっこりお腹に関係するのは、最深部の腹横筋!
腹筋とぽっこりお腹の関係、筋肉に詳しい金岡恒治先生に聞いてみました。
「昔からよくある腹筋運動は、いちばん外側にある腹直筋を鍛えるためのもの。ぽっこりお腹に関係するのは、もっと奥にある筋肉です。特に最深部で内臓を押さえ、姿勢や呼吸のサポートをしている腹横筋が大きくかかわっています。
腹横筋は目に見えず動きもわかりにくいので、衰えていることや正常に機能していないことに気づけません。腹横筋が使えていないと腰痛が起きたり姿勢がくずれたりしますが、それをフォローしようと、背中にある多裂筋が余計に働くことで骨盤が前傾します。すると圧に負けてお腹がぽっこり出てしまうのです。
腰が反ってお腹がぽっこりしている人は『腹横筋がうまく働いていないのでは?』と疑ってみてください」
コルセットのように働く「腹横筋」が最重要
お腹まわりにはおもに3つの筋肉があります。外側から順に腹直筋、次が腹斜筋、いちばん奥にあるのが腹横筋。腹横筋が働かないと背骨や骨盤が不安定となり、悪姿勢、腰痛、そしてぽっこりお腹の原因に。
腹直筋
腹筋運動で鍛え上げるといわゆる「シックスパック」になるのがこれ。
腹斜筋
外腹斜筋、内腹斜筋が重なり、体幹を安定させます。ちょうど横腹にあるため、鍛えるとウエストにくびれができやすい。
腹横筋
深部でコルセットのように腹部全体を、背中のほうまで覆うようについているのが腹横筋です。
腹横筋がうまく働かないと、体はこの役割を腹斜筋や腹直筋をはじめとする別の筋肉でカバーしようとします。すると、それらの筋肉は本来の役割がおろそかになり、結果的にどの筋肉も機能が衰えてしまうことに…。
骨盤が前傾した「反り腰」に注意!
腹横筋が働かないことにより骨盤は前側に傾き、いわゆる反り腰の姿勢に。こうなると腹圧が低下し、お腹がぽっこり出てしまいます。「骨盤は立てておいたほうがいいといわれますが、前傾しすぎは考えもの。可動域の観点からも、やや後傾しているほうがいいのです」(金岡恒治先生)
骨盤が真っすぐ正常な人
腹横筋が正常に働いていれば骨盤は真っすぐに立ち、背骨が緩やかなS字カーブを描きます。腹圧を上げることができ、体幹が強化されるので、ぽっこりお腹にはなりにくい。
骨盤が前傾していると…
腹横筋が使えないと、骨盤は前に傾き、背骨が腰のあたりから極端にお腹側にカーブした「反り腰」の状態に。これでは下腹部が前に押し出され、ぽっこりお腹へまっしぐら。
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子