拡大鏡(ルーペ)と老眼鏡の違い、知っていますか?
「まず、拡大鏡と老眼鏡は別物です。この違いを知らないと失敗することに。
せっかく購入したのに『使えなーい』と後悔している人、けっこういるんですよ。
どんな形をしていても、たとえ眼鏡の形をしていてもルーペはルーペ。つまり拡大鏡であり、老眼鏡とは異なります。
眼鏡型のルーペは両手が自由に使え、見える範囲が広いのがいいところなんですけどね」
そう話すのは、眼科医・宮澤優美子先生。
拡大鏡は虫眼鏡と同じ仕組みで、小さなものを拡大して見るための道具。手芸やネイル、裁縫など近距離での細かい作業に適しています。
一方、老眼鏡は遠近を調整して、手元の文字や細かいものを快適に見るための補助具。ピントが合っても小さな字は小さいまま見えます。
また、拡大鏡では1.3倍や1.5倍など倍率で表すのに対し、老眼鏡は+1.0や、+2.5というレンズの度数で表しているのも大きな違いです。
【老眼鏡はピントを合わせる】
【拡大鏡(ルーペ)は拡大する】
100円ショップの老眼鏡でもいい? 高額なレンズとの違いは?
「初めて老眼鏡を試すのであれば、100円ショップの老眼鏡でも悪くありません。『ああ、こんな感じに見えるんだ〜』というイメージを確認するには十分です。
ただし、長時間使用する場合や、快適な見え方を求めるなら、質のよいレンズを選ぶことをおすすめします。
特に、乱視がある場合などは、100円ショップをはじめ、度数だけで選ぶ既製品の老眼鏡では矯正することができないんです。
つまり、実は自分の目に合っていない、決して快適ではない眼鏡をかけ続けることになり、眼精疲労を招きます。
また、既製品の眼鏡は1カ所にだけピントが合う“単焦点”レンズ。
手元だけを見るなら単焦点でもいいのですが、眼鏡をかけたまま少し遠くを見たり部屋の中を移動したりしたい場合は、遠近両用レンズのほうが便利ですよ」
ただ、老眼鏡をオーダーで作るにしても、価格がピンキリで迷ってしまいそうです!
10万円もするような高額なレンズと数千円のレンズ、どう違うのかも教えていただきました。
【レンズの価格差はどこからくるの?】
■素材の違い
軽くて割れにくいプラスチックレンズが主流。ガラスレンズ(25年ほど前までは多かった)は重いが、高品質で高額のものもある。
■屈折率の違い
屈折率が高いほどレンズは薄くなり、価格が上がる。
■設計の違い
球面レンズは度数が強いほど周辺部の歪みやずれが強い。対して非球面レンズは薄く軽く、周辺の歪みが少ないため視野が広いが、高額に。
■表面処理の違い
コーティングの問題。反射防止や傷防止がしっかりされていると耐久性が上がり高額。またブルーライトカット、裏面のUVカット、曇り防止の防曇コートなどの加工がされているものほど高額。
初めて老眼鏡を作るとき、どこへ行くべき?
老眼鏡を作るときは、まず眼科で検眼を受けることをおすすめします。
40代以降は緑内障のリスクも高くなるため、検眼とともに目の病気が潜んでいないかどうか一度は眼科で調べてもらいたいもの。
特に乱視がある場合は正確な矯正が必要で、これがきちんとされていないと視界が歪んでしまうことも。
検眼後には、眼鏡の度数や用途、瞳孔間距離を記載した処方箋が発行されます。眼鏡店では、これをもとにフレームやレンズを選び、目の状態と顔に合った調整をしていきます。
眼科の処方箋は医療行為なので、処方箋通りに老眼鏡を作るのは眼鏡店の基本ですが…。
「人の顔はそれこそ十人十色で、左右非対称だし、目の離れ方や耳の位置、鼻の高さも異なります。
処方箋通りだと不具合が出てしまうこともあるのですが、その場合は眼鏡店が調整してくれることも。この技術が腕の見せどころで、調整技術に長けた眼鏡店に相談すると安心です。
また、目の病気の心配がない場合は、眼科に行かずに直接眼鏡店に出向いて作ることも可能です。
ただ、作った眼鏡が合わない、不快感があるなどの場合はぜひ、眼科へ持ってきてください。
レンズの度数などを確認することができますよ」
通販や老眼コンタクトレンズを選ぶときの注意点
最近では、通販でも手軽に老眼鏡を購入できる時代。ですが、注意が必要です。
「通販で購入する際は、自分の正確な度数を把握しておくことが重要です。
左右で度数が違う人もいますが、ちゃんと右と左の度数を変えて作ってくれるサイトもあるんですよ。
少なくとも半年以内に眼科で検査を受け、右目と左目の度数を確認しておきましょう」
また、老眼鏡のほかに老眼コンタクトレンズも選択肢のひとつです。
「最近は遠近両用コンタクトレンズも進んでいて、合う人は視野が広くなり、とても便利だといいますね。すでにコンタクトに慣れている方にはスムーズに使えるでしょう。
コンタクトレンズが初めての場合は、テストレンズを2週間ほど試して、自分に合うかどうか判断するのがいいと思います。
ただし、コンタクトレンズは涙液の上に浮いている状態のため、瞬きで動いてしまい、視認性が落ちることもあります。
その欠点を補うコンタクトレンズが海外では市販されているので、日本でももうすぐかもしれません」
さらに、遠近両用コンタクトが合わない場合には、片方の目を遠方重視、もう片方の目を近距離重視にする「モノビジョン法」を試すことも可能です。
いずれにせよ、まずは専門家のアドバイスを受けることが、最適な老眼サポートアイテムを選ぶ近道です。
【教えていただいた方】
表参道内科眼科。医学博士。日本眼科学会認定専門医。日本眼科学会、日本眼科手術学会、日本眼科医会、東京都眼科医会、港区医師会会員。 「クリニックは、東邦大学眼科名誉教授が開設した所で、眼科の中でも、専門は白内障、網膜硝子体疾患を得意としています。日本大学病院教授、准教授が非常勤で、高度な大学医療レベルを保っています。内科を併設していて、網膜疾患を発症した方が、かかりつけ医ではコントロール不良の、高血圧や糖尿病を管理しています。私は、医局の人事異動で配属され、全体のサポートとしてかかわってきました」
取材・文/蓮見則子