遠くを見ることは、確かに老眼予防になる!
老眼は病気ではなく自然な加齢現象、つまり目の老化です。
眼科医で医学博士の宮澤優美子先生によれば、「老眼鏡をかけてもかけなくても、老眼は加齢とともに進んでいくもの」とのことでした。
それでも、「少しでも老眼を遅らせたい」「できれば改善したい」と思いますよね?
眼科医・宮澤優美子先生に伺うと、こんなアドバイスがありました。
「近くを見ること自体が目の負担になるので、なるべく遠くを見る習慣をつけるのがおすすめです。
近方と遠方を交互に見る訓練を一日数回行うことで、老眼の進行を若干遅らせられる可能性が示された論文もあります。この方法は続ける価値があると思いますよ。
また、『眼精疲労の改善には目のまわりの血流をよくするといい』といわれますが、血流改善が老眼に直接の効果を及ぼすかは不明です。
まぶたを温めるのはドライアイにはいいけれど、角膜など目の中を温めるのは逆によくないという研究もあるほどです。
老眼は老化ですから、遅らせるには生活習慣も大きいと思います。
きちんとした食生活や運動習慣はもちろん、喫煙しない、睡眠不足にならない、ストレスをためない、など基本的な生活習慣の見直しも重要です。
そして、目の紫外線対策も大事。日中はサングラスをかけて紫外線をガードすると、白内障の予防、また白内障の進行を遅らせるのに効果があります。
直接的に老眼を予防したり改善するわけではないんですが、老化の一種である白内障を遅らせることは、老眼を遅らせることにもつながると思いますね」
サプリメントの力を借りる手もあり。 眼科医がすすめる成分は?
老眼の予防や改善に食生活の影響があるならば、薬やサプリメントの力を借りるのもひとつの手です。
「現状、老眼そのものを抑える薬はまだ開発されていませんが、有効とされるサプリ成分がいくつかあります。
ヒト臨床試験で論文が発表されている成分は4つです。
はっきり『老眼に効く』とは断定できないとしても、老眼初期や目の加齢性トラブルに対応する成分として、信頼していいと思いますね」
その4つの成分とは…
【老化に伴う目のトラブルにおすすめの成分】
① アスタキサンチン
サケやエビ、カニなどに含まれる赤色の天然色素で、強力な抗酸化作用を持ちます。目の疲労を軽減し、調節力の低下を抑える効果が期待されています。
② ビルベリー
北欧原産の果実で、ブルーベリーよりも豊富なアントシアニンを含みます。網膜や毛様体筋を保護し、目の健康をサポートします。
③ ルテイン
1日20㎎とることで加齢黄斑変性の予防になるというエビデンスも。緑黄色野菜に多く含まれる黄色の天然色素。網膜や水晶体を保護し、視覚の劣化予防に役立ちます。
④ ヒシエキス(ヒシ果皮ポリフェノール)
水生植物「ヒシ」の果皮に由来するポリフェノール。抗酸化作用で目の筋肉を保護し、調節機能の維持をサポートします。
【①~④のいずれかの成分を含むサプリメントの例】
えんきん
アスタキサンチン・ルテインに加えて、ゼアキサンチンにより光の刺激から目を保護する。
[機能性表示食品] 30粒(30日分)¥2,160/ファンケル
ロートV5 アクトビジョン
ルテインとゼアキサンチンを機能性関与成分として5:1の黄金比で配合。ぼやけ、かすみを軽減。
[機能性表示食品] 62粒(約2ヵ月分)¥5,400(編集部調べ)/ロート製薬
メタボ予防も目の健康と深い関係がある!
ちなみにドライアイや眼精疲労など、目の不調をケアをせずに放置していると、老眼が進む原因になりますか?
「それはないですね。ドライアイや眼精疲労は、老眼の進行に直接影響を与えるわけではありません。
体全体に影響を及ぼす病気のほうが気になりますね。病気は生物学的な加齢を加速させる原因ですから。
例えば、生活習慣病の原因となるメタボリックシンドロームは内臓や血管など体中の老化を促進させます。
アメリカの論文では、メタボの結果、糖尿病に進行することで生物学的年齢が12〜31歳も進むとされています(2023年 Wolf J.et al, Cell)。
老眼を遅らせるには、体全体の健康を維持して病気を予防することも大切です。
健康的な生活習慣は、目の健康にも直結すると思います」
【教えていただいた方】

表参道内科眼科。医学博士。日本眼科学会認定専門医。日本眼科学会、日本眼科手術学会、日本眼科医会、東京都眼科医会、港区医師会会員。 「クリニックは、東邦大学眼科名誉教授が開設した所で、眼科の中でも、専門は白内障、網膜硝子体疾患を得意としています。日本大学病院教授、准教授が非常勤で、高度な大学医療レベルを保っています。内科を併設していて、網膜疾患を発症した方が、かかりつけ医ではコントロール不良の、高血圧や糖尿病を管理しています。私は、医局の人事異動で配属され、全体のサポートとしてかかわってきました」
取材・文/蓮見則子