白内障=単なる目の老化ってホントですか?
白内障は加齢とともに、目の中にある透明な水晶体(カメラでいえばレンズ)が濁り、正しく光を通さなくなる症状のこと。視界がかすみ、視力低下を招く病気です。
白内障と聞くと高齢者がなるものと思われがちですが、40代、50代でも発症します。最近は若い世代にも増えていて、“スマホ白内障”などという言葉もあるほどです。
では、自分で気づくにはどうすれば?
以下のような症状を感じたら、もしかしたら白内障に近づいているのかもしれません。
✓眼鏡をかけても見えにくい
✓ピントが合わない
✓光がまぶしい
✓視界がかすむ
✓目が疲れる
✓物が二重に見える
✓暗いところで見えづらい
✓視力が低下する
どれも誰にでも起こりがちな症状のうえ、ほかのさまざまな目のトラブルと重なるため、白内障とは気づきにくいわけです。
白内障は生活習慣で予防できる!
白内障にも詳しい表参道内科眼科の宮澤先生が教えてくれます。
「緑内障のリスクが40歳頃から高くなるとすると、白内障は少し遅いです。平均すると50歳以降に水晶体の濁りが始まり、65歳を過ぎると視力が低下したり色が変わって見えたりする人も出てきます。
老化と言えば老化なんですが、白内障を進行させる要因はいろいろあります。加齢、紫外線などの酸化ストレス、糖化ストレス、炎症、熱ストレス、喫煙、薬物…多岐にわたるというか、体の老化を早める要因と同じですね」
白内障の進行を遅らせる方法はあります。
加齢による変化は避けられませんが、前述の要因と反対の生活を送ればいいわけです。
● 紫外線対策(サングラス・帽子・UVカット眼鏡)
● PC、スマホなどで目を酷使しすぎない
● 抗酸化作用のある食品をとる(ビタミンC・E、ルテインなど)
● 禁煙、バランスのよい食事
「特に、紫外線対策はとても重要です。屋外で仕事をする人は、サングラスや帽子が必須。紫外線カット効果のある眼鏡やコンタクトレンズを使うのも有効ですね。また、抗酸化作用のある食品を意識してとるのもいいと思います。
糖尿病やアトピー性皮膚炎など、白内障を進行させやすい全身疾患がある人は注意が必要です。定期的な眼科検診を受け、早期発見・早期対応を心がけましょう。
白内障は年齢を重ねれば誰でもなるものといえますが、早めに診断して適切なタイミングで手術を受ければ、十分に視力を取り戻せる病気。緑内障と違って、失われた視野は戻らないということはないので、過度に恐れる必要はありません」
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手術で治る白内障。手術を検討するタイミングは?
「白内障は手術によって視力を回復させることが可能です。年間200万人もの人が手術を受けています。手術を受けた方は『こんなにクリアに見えるなんて!』『世界が変わった!』と驚かれることが多いですね。
個人差はありますが、視力が1.0以上に回復する人もいます。ただし、合併症のリスクもゼロではないので、どのタイミングで手術をするかは医師との相談が必要です」
【手術を検討する目安】
● 夜間の運転がしづらい(対向車のライトがまぶしい)
● 目がかすんで本や新聞が読みにくい
● 物が二重・三重に見えることがある
● まぶしさで外出がおっくうになる
● 眼鏡を新しく作っても視力が改善しない
手術は怖い? それとも簡単?
「白内障の治療としては、軽症であればまず薬物治療です。「ピレノキシン点眼薬」には、進行を遅らせる効果があったという報告があります。将来的には、水晶体の軟化剤が開発されそうです。
進行が進めばやはり手術ですが、白内障の手術は昔と比べると大幅に進化し、日帰りでできるようになりました。
30年前は角膜の半分を切開し、2週間入院するのが普通だったんですよ。現在は超音波で水晶体を砕いて取り除き、新しい眼内レンズ(IOL)を挿入する方法が主流です。傷口もごく小さく、縫合の必要がないことがほとんど。術後1日~数日で普段の生活に戻ることができます」
現在、眼内レンズには大きく分けて2種類あります。
● 単焦点レンズ … ひとつの距離(遠くor近く)にピントを合わせる(保険適用)
● 多焦点レンズ … 遠くも近くもある程度見える(保険適用外が多い)
「手術を受けた方の多くが『もっと早くやればよかった!』と言われます。手術は怖いと感じるかもしれませんが、今は負担が少なく短時間で終わるので安心してください」
白内障は誰にでも起こりうる目の変化。でも、怖がりすぎず、必要なときに適切な治療を受けることが大切です。
【教えていただいた方】

表参道内科眼科。医学博士。日本眼科学会認定専門医。日本眼科学会、日本眼科手術学会、日本眼科医会、東京都眼科医会、港区医師会会員。 「クリニックは、東邦大学眼科名誉教授が開設した所で、眼科の中でも、専門は白内障、網膜硝子体疾患を得意としています。日本大学病院教授、准教授が非常勤で、高度な大学医療レベルを保っています。内科を併設していて、網膜疾患を発症した方が、かかりつけ医ではコントロール不良の、高血圧や糖尿病を管理しています。私は、医局の人事異動で配属され、全体のサポートとしてかかわってきました」
取材・文/蓮見則子