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「体は柔らかいほどいい」は間違った思い込みです。整形外科医の武田淳也先生に聞きました

腰が痛いと思ったら、今度は肩が上がらない…40歳を過ぎると、体のあちこちに故障や痛みが起こりがち。今まで酷使してきた体が悲鳴を上げているのかも。正しい対処には正しい知識が必要です。なんとなく聞きかじった情報が実は間違っていることも。そこで整形外科医でピラティスのインストラクターの武田淳也先生に痛みについて伺いました。

【教えていただいた方】

武田淳也
武田淳也さん
医師、米国国家認定ピラティス教師
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「整形外科 スポーツ・栄養クリニック」(福岡、東京・代官山)理事長。日本で初めて医療にピラティスを取り入れ、独自の「カラダ取説」プログラムの普及に尽力

 

どうして、肩こり、四十肩・五十肩、腰痛、股関節痛、膝痛が起こるのか? まことしやかに言われていることは、どこまで本当なのでしょうか? ◎、○、△、×で、武田先生に解説してもらいました。

 

姿勢の悪さが、すべての痛みの根源である。△

 

「確かに姿勢の悪さは痛みの一因です。しかし、正しい体の使い方をしているか? ということも重要です!」(武田淳也先生)

良い姿勢悪い姿勢

左/背中が丸まり、お腹が出て、首が前に出た悪い姿勢

右/足の中心の上に骨盤、その真上に頭の中心がきているのが理想です

 

「正しい姿勢とは、最も体に負担がかからない姿勢のことです。骨格や筋肉を最適な状態に保つことができるので、内臓も本来あるべき位置に収まり、それぞれの機能がよりスムーズに働くことは間違いありません。

 

しかしながら、それだけではなく“体を正しく使う”ことも大切です。そのための前段階として、正しい姿勢が必要で、例えば、背中を丸めた姿勢(猫背)のまま、両手を上げてバンザイをしてみてください。真上には上がらないはずです。次に、首と背すじを伸ばした状態で同じようにしてみると、腕がスムーズに上がりませんか?

 

このように、正しい姿勢をしていると、体を動かしたときに関節や筋肉への負担が最小限ですみます。悪い姿勢のまま無理をして体を動かすから、骨格や筋肉に過度な負荷がかかって、やがてその部位に炎症が起こり痛みになっていくのです。

 

痛みの症状が出るのは、変形や変性してしまった『体の構造の問題』だけでなく、『体の機能の問題(間違った姿勢や体の使い方)』が関係しています。レントゲン検査では骨の状態が、MRIやCTでは椎間板や神経の状態がわかります。こうした画像検査で異常が見つからないけれど、痛みがある場合は、間違った体の使い方を疑ってみましょう。

 

また、いったん痛みが治まったとしても、間違った体の使い方を変えなければ、やがてまた痛みがぶり返すことになります。

 

こうした、姿勢と動作を維持、もしくは変化させる能力をつけることを『モーターコントロール=モタコン』と呼び、今、筋トレ、ストレッチ、有酸素運動に加えて、新しい第4の運動の基本要素として、こうした概念を普及しようとしています」

 

 

四十肩・五十肩、ぎっくり腰は年齢のせいだ。△

 

「実は、こうした痛みの原因ははっきりわかっていません。しかし、インナーマッスルが衰えて萎縮したり、筋肉の中に脂肪が入ってくる(サシが入ってくる)と、筋肉の機能が低下します。こうなると関節に負担がかかり、やがて体の痛みになると考えられています。

 

確かにこうした症状は40代、50代に増えてきますが、同じことが起これば、20代でも30代でも起こる可能性はあるし、逆に年齢を重ねても、痛みを起こさない人もいます。正しい姿勢と体の動かし方を身につけることが大切です」

 

年齢のせいと片づけてしまわず、原因を考えて自分の体と向き合いましょう。

 

 

体は柔らかいほどいい。✖

 

「確かに、体が硬すぎると肩こりや腰痛を起こしやすいですが、柔らかければ痛みを起こさないわけでもありません。関節には可動性と安定性があり、そのバランスが大切です。

 

体が柔らかいということは、関節が緩く、“遊び”があるということです。こうした人が正しく体を使い鍛えていくと、大谷翔平選手のように、とんでもない身体能力が発揮される可能性があります。一方で、間違って使うと、逆に体を痛めてしまう危険性もあります」

 

一時期、開脚健康法のようなものがはやりましたが、柔軟性はもともとの骨格も関係するので、無理なストレッチは禁物のようです。

 

 

体の痛みと肥満は関係がある。◎

太った女性 イラスト

「肥満の人は膝や股関節に過剰な負担がかかるため、特に膝や股関節の痛みを起こしやすい傾向です。また、見た目はそれほど太っていない、隠れ肥満の人も注意が必要です。こうした人は、骨や関節を支える筋肉が痩せてしまって、体脂肪率が高い状態なので、関節が不安定になり、やはり関節にストレスがかかってしまいます。適正な体重、体脂肪率、筋肉量を維持して、バランスをとることが重要です。

 

肥満と四十肩・五十肩などは、一見、関係なさそうに感じますが、糖尿病や生活習慣病の人は発症しやすいことがわかっています」

 

適正体重を維持することも、痛みのない体づくりには必要なようです。

 

 

呼吸と体の痛みは関係している。◎

 

「普段、私たちは息を吸って吐いていますが、それをあまり意識していません。しかし、例えば背中が丸まった姿勢のまま、息を思い切り吸ってみてください。吸い込みにくくないですか? 一方、姿勢を正すと息が吸いやすくなります。このように姿勢の良し悪しが呼吸の深さに影響します。

 

また自然と、息を思い切り吐こうとするときは背中を丸めて、吸おうとすると背すじを伸ばします。このように、呼吸と動作は切り離すことができません。どのような呼吸をしながら動くかによって、動きに安定感が生まれ、これが体を正しく動かすことにつながっていきます。

 

腹式呼吸と胸式呼吸という言葉を聞いたことがありませんか? 腹式呼吸はお腹を膨らませて息を吸うことで、副交感神経が優位になり、心身はリラックスします。一方で、胸式は胸を膨らませて吸うイメージで、交感神経が優位になり、やる気につながります。

 

ですから、どちらの呼吸がいいということではなく、必要に応じて使い分けるのがいいと思います。重要なのは“しっかりと横隔膜を動かす”ことです。横隔膜は胸部と腹部の間にあるドーム形をした薄い筋肉です。呼吸筋(呼吸を司る筋肉)は多数ありますが、横隔膜が最も重要。これをしっかり使うことで、体幹の安定にも繋がります。

 

体幹を使って体を動かすことは、正しく体を使う基本。痛みを起こさないためには、正しい呼吸が必須なのです」

 

 

痛みを感じたとき、病院に行っても意味がない。✖

 

四十肩・五十肩、ぎっくり腰などになって病院に行っても、湿布薬を出されるくらいで、なにもしてくれない…という声を時々聞きます。

 

「症状にもよりますが、炎症が本当にひどいときには安静が第一です。もちろんそのようなときには痛みもひどいので、湿布や経口薬、注射などで消炎鎮痛を図り、症状を抑えることが大切です。リハビリでストレッチなどを始めるのは、炎症が治まったあとです。その前に自己流のマッサージやストレッチを行うと、逆効果になることもあるので注意が必要です。

 

その痛みの原因を診断できるのは医師だけです。痛む部位や痛みの程度&強さを診たり、レントゲンやMRI、エコーなどの画像検査などで、きちんと診断をしてもらうことが先決です。思いがけない病気が隠れていることもあるので、まずは整形外科を受診してください。もしも整骨院や整体、あん摩マッサージ指圧師などにかかりたいのであれば、診断を受けてからにするのが鉄則です」

 

いかがでしたか? 意外と勘違いしていることが多いものです。ここに挙げたものは、痛み知らずの体をつくるための基礎知識です。まずは正しい知識から!

 

イラスト/内藤しなこ 構成・文/山村浩子

 

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第2回/歩き方、スマホ操作時の姿勢、立ち上がり方・・・何気ない体の使い方が痛みを起こす!

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