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知っていますか? ミネラルにも悪いミネラルがいることを

ミネラルの中には、「必須ミネラル」と呼ばれる、体の機能を維持するために欠かせないものがあります。一方、私たちの健康を害するものも。こうした「有害ミネラル」には、どんなものがあるのでしょうか? どうすれば、これらからの悪影響を避けることができるのでしょうか?

【教えていただいた方】

登坂正子
登坂正子さん
医学博士。日本循環器学会認定循環器専門医。日本抗加齢医学会専門医。
公式サイトを見る

東京女子医科大学卒業。医療法人 淳信会 ホリスティキュア メディカルクリニック院長。米国コロラド州NTI認定栄養コンサルタント。米国PHYTOMEDIC LABS認定栄養&酵素セラピスト。産業医。 2014年、米国ベストドクターズ社日本支部から「医師が自分自身や家族が病気になった場合受診したいベストの医師」として、Best Doctors in Japanに選出される。

♦体に少しずつ蓄積していく有害ミネラル

「ミネラル」と聞くと、一般に体によいというイメージがあるかもしれませんが、実は、有害なものもいろいろあることをご存じでしょうか?

そして、そういった有害ミネラルが、いつの間にか体内に蓄積され、それが不調の原因になっていることがあります。

 

なぜ、こうしたミネラルが体内に入ってしまうのでしょうか。

 

それは、おもに環境汚染が原因です。

のちほど詳しくお話ししますが、その一例が有害金属(有害ミネラル)
です。

 

文明の発達に伴い、工業用水、排気ガスなどによって、大気や海の水は有害ミネラルで汚れるようになってきました。

(イメージphoto/chrisleboutillier on Unsplash)

 

そして、そこに生息する魚介類や海藻もそれらを取り込みます。

また米や野菜類などの農作物に使用される農薬、また、農薬を使用した飼料を食べた家畜の肉、さらには食品を加工する際に使用する添加物なども、人間の体に蓄積される有害ミネラルです。

 

これらは1回に摂取する量は少ないものの、排出されずに体内に残ってしまうと、少しずつ少しずつ蓄積され、長い年月を経た結果、健康に害を及ぼすまでになります。

 

♦体内に蓄積されやすい有害ミネラル

 

体内に蓄積され、健康を害する恐れのあるミネラルにはどのようなものがあるか、以下ご説明しましょう。

■アルミニウム
アルミホイルや一円玉、やかんや鍋などの調理器具、缶詰、乾燥材、歯磨き粉など、身近な日用品に使用されているほか、食品添加物(ベーキングパウダー等)にも含まれています。
アルミニウムは脳に対して毒性があります。

■水銀
マグロ、カツオ、キンメダイ、カジキマグロなどの大型魚は、海中に排水された工業用水などから水銀を体内に取り込むのに加えて、水銀を体内に取り込んだ小魚をエサとして食べることで、より多くの水銀を体内に蓄積させています。

■鉛
体内の酵素の働きを阻害し、さまざまな病気を引き起こすことがわかっています。排気ガスに含まれるほか、古い水道管や自動車の鉛蓄電池にも使用されています。

■ヒ素

ヒ素は自然環境中に広く存在する元素です。

地殻中に分布しており、火山活動や森林火災、鉱物の風化などの自然現象によって環境中に放出されるため、土壌や水中に天然由来のヒ素が含まれています。

したがって、ヒ素は微量ながら多くの食品に含有されており、日本人は1日に約200μgのヒ素を摂取しているといわれていますが、多くは排出することができます。

ヒ素の排泄は主に腎臓からですので、腎機能の悪い方は特に注意が必要です。

 

■カドミウム
皮膚や髪の健康に欠かせない、亜鉛の吸収を阻害します。タバコや絵の具、排気ガス、メッキ、塩化ビニール、プラスチック製品に含まれるほか、農薬にも含まれることがあるため、皮ごと食べる野菜、外皮ごと食する玄米から体内に入ることも。

 

♦悪いミネラルをいかに排出するかが重要

 

こうした有害ミネラルは、現代の日常生活において、その摂取を完全に排除することは残念ながら不可能でしょう。

有害ミネラルについては、「完全に避ける」ことにとらわれて神経質になるよりも、「いかに排出するか」に重きをおいて考えるほうがはるかに現実的です。

 

そのためにはまず、腸内環境を整えることが大切です。

 

なぜなら、有害ミネラルが体内に入り込んだ場合、便や尿、汗、毛髪、爪などから排出されますが、その割合はというと、便から75%、尿から20%、汗から3%、毛髪と爪からそれぞれ1%。

大部分が便から排出されます。

 

こうしたことから、便秘にならないよう、きちんと排出できる体、生活習慣を心がけることが大切です。

便秘になると、老廃物が体内に滞り、それが腐敗し、有害物質が体内に漏れ出します。

食物繊維をとる、水分を十分にとる、適度な運動をする、などを心がけるようにしましょう。

 

また、腸内環境が整っていて、腸粘膜が健康な状態であれば、有害物質を通しにくいことがわかっています。

腸粘膜が弱っていると、そこから有害ミネラルが吸収され、体内に蓄積されやすくなってしまいます。

オメガ3系の油(亜麻仁油、エゴマ油など)の摂取を意識することも腸の健康に重要です。

 

有害ミネラルを排出する成分、硫化アリルを積極的にとるというのも有効です。

硫化アリルは、にんにくやにら、長ねぎ、玉ねぎなどに多く含まれています。

なお、有害ミネラルの摂取をゼロにはできないとはいえ、できるだけ摂取を抑えるよう意識しておくことも重要です。

例えば、厚生労働省は、妊婦は胎児への水銀の害を抑えるよう、マグロなどの大型魚を食べすぎないように注意を促しています。

これは、胎児が大人よりもはるかに体が小さいためですが、妊婦でなくても、毎日マグロを食べる、というような偏った食事は避けるほうがよいでしょう。

 

またミネラルによっては、調理法で減らすことができるものもあります。

 

例えば、ひじきにはヒ素が含まれるといわれますが、注意が必要なのは無機ヒ素です。

食品を通じて摂取したヒ素による健康影響は認められておりませんが、ヒジキをより安全に食べるためには、乾燥ヒジキを調理するときの水洗いや水戻し、ゆでこぼしなどにより無機ヒ素を減らすことができます。

 

農林水産省の試算によれば、乾燥ひじきを水で戻したあと、戻し水を捨ててから、熱湯でゆでてお湯を捨てて流水で水洗いをするという「ゆでこぼし」で無機ヒ素を9割程度減らすことができます。

また、ヒジキに含まれる鉄分、カルシウム、食物繊維は、「水戻し」、「ゆで戻し」、「ゆでこぼし」をしても、7割以上残ります。

 

♦健康は、75%が食と環境、25%が遺伝
食の改善でミネラルバランスを整え病気を防ぐ

 

高血圧や糖尿病は、遺伝によるものが大きいといわれてきました。

ですが、最新の医学では、病気の原因について遺伝子の関与は約25%、残りの75%は食と環境といわれています。

 

つまり、何か特定の病気の遺伝子を持っていたとしても、栄養と環境によって、その病気を発症させにくくすることが可能だということがわかっています。

 

こうした考え方を「エピジェネティクス」といいます。

簡単に言うと、特殊な遺伝子疾患の場合を除き、あなたに病気の遺伝子があったとしても、【食+環境】が病気を予防したり病気の発症を遅らせる可能性があるということです。

 

ミネラルバランスを整えるよう、食生活を整え、生活環境や生活習慣を改善することは、まさに、こうした健康維持のために、最も重要な要素といえます。

 

取材・文/瀬戸由美子

 

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