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大人も快眠で快調に!カギは正しい寝返りだった/寝相・寝姿勢で決まるあなたの“睡眠充実度”

寝ても疲れが取れない、起きたら体が痛い…OurAge世代になると睡眠にこんな不満を感じている方も多いはず。実は寝相・寝姿勢(寝ている間の姿勢)を整えれば睡眠の質が向上するだけではなく、なんと睡眠中に体の不調が改善するそう。二人のドクターに正しい寝相・寝姿勢について教えていただく連載です!

(PHOTO/Maxim Mushnikov on Unsplash)

 

「夫の寝相が悪くて、隣に寝ている自分はよく目が覚めてしまう」

「子どもの頃、親によく寝相が悪いと言われていた」

「ふと気づくと、枕から頭が落ちていたり、掛け布団がずれたりしている」

……このように、寝相について皆さんそれぞれエピソードや癖があるかもしれません。

 

そもそも寝相とはどんなことを指すのでしょうか?

 

最初にお話しを伺ったのは整形外科医の山田朱織先生。

2002年に「枕外来」を開設し、これまで12万人以上の寝姿勢の調査と睡眠の質の改善をサポート、また『枕診断士®』の育成やオーダーメイド枕の開発・販売も手がける山田朱織枕研究所の代表でもあります。

 

「寝相とは、寝ているときの姿勢や動き全般を指します。

睡眠中に体が動くことは、汗をかいたり、排泄するのと同じ生理現象のひとつ。

特に睡眠中の動きといえば代表的なのが寝返りです。

 

寝返りは誰でも必ずするもの。

動物は長時間同じ姿勢が続くと、体の一部に負担がかかってしまいます。

起きているときであれば、伸びをしたり腕を回したりして体をほぐすことができますが、寝ている間はそうはいきません。

そのため、睡眠中、無意識に寝返りを打つのです。

 

ただ、寝返りにも理想的な寝返りというのがあります。

 

それは体全体が同時に動いて、軽い力でコロンと簡単にできる寝返りです」(山田先生)

 

でも寝返りというと、なかなか寝つけないとき、あるいは寝苦しいときにコロコロと何度も寝返りを打った経験があるという人も多いのでは。

 

眠れないときにしている寝返りも”理想的で適度な”寝返りなのでしょうか。

 

そこでもうお一人、睡眠専門医として30年以上にわたって多くの患者を診てきたほか、睡眠障害の予防・睡眠の質向上の普及と指導に尽力している雨晴クリニック院長の坪田聡先生に、その点を伺ってみました。

 

「人は一晩にだいたい10~30回寝返りを打つといわれていますが、自然に行う生理的な寝返りは、睡眠の邪魔をしません。

ですから自分が寝返りを打ったと覚えている時点で、眠れないときにしている寝返りは理想的なものではありません」

 

 

冒頭で山田先生が「寝返りは生理現象のひとつ」と教えてくれましたが、ではどんな役割があるのでしょう。

 

 

♦寝返りの大事な3つの役割

 

1.体液を循環させる

「体の中には血液、リンパ液、そして節々の関節にある関節液などの体液が流れています。ずっと同じ姿勢で寝ていると体重による圧迫が特定部分に集中してしまい、体液の循環が悪くなってしまいます。しっかり寝返りをすることで体液の循環を促すことが、寝返りの第一の役割です」(山田先生)

 

2.体温の調節

「もしも一晩中同じ格好で寝ていたら、特定の場所に熱がこもってしまいます。

例えばあお向けで寝ていたら背中に、横向きで寝ていたら体の片面が暑くなってしまいます。寝返りによって、そうならないよう布団や枕と接触している部分を替えながら体を動かし、熱を放散しているわけです。

また暑いときだけでなく、寒いときも寝返りは大切な役割を果たしています。

体を動かすことで血流をよくし、体の節々や指先、足先まできちんと血液が循環し、暖かさが保たれるのです」(山田先生)

 

ただし寝室が暑すぎると、寝返りだけで体温調節をするのが難しく、必要以上に寝返りをして、結果目が覚めてしまったり眠りが浅くなったりするそう。

 

「室温が26度以下で、湿度は50~60%くらいの寝室環境がいいといわれていますので、そのように整えることが大切です」(坪田先生)

 

3.姿勢のリセット

「日中は起きて活動し、立ったり座ったりしているとどうしても頭から足の先に向けて重力がかかり、背骨に負担がかかって歪みがちです。これをリアライメント(背骨の並びをもう一度リセットすること)してくれるのが睡眠中の寝返りです。

寝ているときに動くことにより、骨や椎間板などの組織が元の状態にリセットされ、背骨の並びがよくなるのです」(山田先生)

 

「人間の背骨は骨と骨の間に椎間板という、いわゆるクッションの役目を果たしているものがあるのですが、立ったり座ったりしている間、その椎間板が重力でギュッと押されています。

特に一番負荷がかかるのが腰で、上半身の重さで圧迫されています。

でも横になって寝ると重力による圧迫がなくなり、自然と椎間板が伸びて牽引されている状態になるので、背骨が元に戻るのです」(坪田先生)

 

 

寝返りの重要さがおわかりいただけたでしょうか。

 

さらには「『私は一晩中全く動かず、寝返りを打たないで寝ています』と言う人がいますが、そんな人は絶対にいません。

もし行儀よくまったく動かずに寝ているとすれば、それは体にとってよくないことです。

なぜならば、寝返りにはこのような3つの役割があり、これが果たせないと体液や血行の循環、体温調節といった大事なメンテナンスができていない状態になるし、その結果寝苦しくもなってしまうからです」(山田先生)

 

無意識に打つ適度な寝返りの大事さがよくわかりましたが、どうしたらそんな寝返りが打てるようになるのでしょう?

 

♦適度な寝返りは自分に合った寝具から

(PHOTO/jennysjacksonon Unsplash)

 

山田先生によれば「先ほどもお話ししたように体全体が同時に動いて、軽い力で簡単にできるのがいい寝返りです。それには自分に合った寝具を選ぶことがまず第一。

自分に合った寝具とは、”適度な硬さがあり、スムーズに体を動かせるかどうか”。

これには寝具を選ぶ際、実際に寝て、寝返りも打ってみるのが必須です」

 

そこで自分に合った枕とマットレスを選ぶ際のポイントも教えてもらいました。

 

 

枕を選ぶときのポイント

「その人に合ったよい枕とは、寝返りのしやすい枕。

枕を試すときは上向き、横向きになって寝やすさを確認し、最後に寝返りがきちんとできるかを確かめてみましょう」(山田先生)

 

「枕は高すぎると首が曲がってしまうし、低すぎると頭が落ちてしまいます。上を向いたときに、首に負担を感じない高さであること。そしてフラットで寝返りをしやすいことが大切です」(坪田先生)

 

布団やマットレスを選ぶときのポイント

「寝返りの打ちやすさを考えるとき、枕とともに大切なのがマットレス。

適度な硬さをもったマットレスが理想です。

では、適度な硬さとはどれくらいですかと聞かれたとき、強いてお答えするとすれば、”畳に昔ながらの綿布団を敷き、その上に寝てみたときのような硬さ”と言えばいいでしょうか。

 

ふんわり柔らかすぎるマットレスだと、体を横たえたときに体が沈み込んでしまい、轍(わだち)にはまった車輪のようになって身動きが取れなくなってしまうからです。

 

頭・胸・腰・脚はそれぞれ重さが違うため、支えるのに必要な力も異なります。

人間工学の分野では”頭を1としたとき、胸が3、腰が4、足が2の力で支えることが大切”といわれており(一般的な体型の場合。肥満体の場合はまた異なります)、各パーツの重さに合わせてマットレスがしっかりと支えてくれることが大事です。

 

最も重たい腰がマットレスにグーッと沈み込んでしまうと、スムーズな寝返りができなくなってしまうので、腰が沈みすぎていないかチェックすることが特に重要。

 

・肩と腰が同時に寝返りを打てる

・体のどこにも力が入らずコロコロと転がれる

このようなら自分に合ったものだと思ってOK。

 

また布団でもマットレスでも、長年使っているうちにへこみができてきます。

 

特に腰の部分がへこむ場合がよくありません。

寝返りがしにくくなるようなへこみができたら、交換が必要と考えましょう」(山田先生)

 

 

とはいえ、マットレスや布団といった大きなものはそうそう簡単には買い替えられません。

 

そんなときにおすすめの方法を坪田先生が教えてくれました。

 

「マットレスの上下を逆にしたり、身長が違う家族のマットレスと交換してみてください。また、へこんでしまった部分にタオルを置き、高さを出すようにするのもいいですよ。

そういった対策をとっても寝返りがしづらいようだったら、交換のタイミングです」

 

〈教えていただいた方〉

 

山田朱織
山田朱織さん
整形外科医。医学博士
公式サイトを見る

16号整形外科院長。株式会社山田朱織枕研究所代表取締役。1989年東京女子医科大学卒業。同大学病院整形外科教室、成瀬整形外科を経て2007年に現職。2002年より整形外科の診察として特殊外来「枕外来」を開設。2003年に睡眠姿勢の研究およびオーダーメイド枕の整形外科枕開発のための山田朱織枕研究所設立。2014年にはオーダーメイドベッドのMAKURAinBEDの販売を開始。全国の整形外科医と共同研究ネットワーク“睡眠姿勢研究会”を立ち上げ研究中。『首姿勢を変えると痛みが消える』(フォレスト出版)ほか著書多数。

 

 

坪田聡
坪田聡さん
睡眠専門医、整形外科医。医学博士
公式サイトを見る

1963年生まれ。雨晴クリニック院長。睡眠専門医として30年以上現場に立ち続ける。日本睡眠学会に所属。ヘルスケア・コーチング研究会代表世話人も務める。医師として診療にあたるうちに、睡眠障害がほかの病気の発症や経過に深く関係していることに気づき、睡眠障害の治療を開始。その後治療から予防に重点をシフトし、睡眠の質を向上させる指導や普及に尽力。2005年に生涯学習開発財団認定コーチを取得。『女性ホルモンが整う オトナ女子の睡眠ノート』(総合法令出版)ほか著書多数。

取材・文/倉澤真由美

 

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