人生100年時代、女性はその半分の50年近くを月経のない=女性ホルモンが出ない状態で生きていくことに。だからこそ知っておきたい、閉経前後に起こること。対策を、婦人科医の松峯寿美先生と寺内公一先生に聞きました。
松峯寿美さん Hisami Matsumine
1970年、東京女子医科大学卒業。
東京女子医科大学病院に〝不妊外来〞を創設。
その後がん研究会病院勤務を経て、
’80年、東 京・木場に東峯婦人クリニックを開院
寺内公一さん Masakazu Terauchi
1994年、東京医科歯科大学医学部卒業。
2003年、医学博士。’05年、米国エモリー大学リサーチフェロー。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科女性健康医学講座教授
女は死ぬまで女!
「閉経したら女じゃなくなるの?」と言う人がいます。女は死ぬまで女。月経のあるなしは関係ありません。女性ホルモンが出なくなっても脳と心は女のままです。考えるべきは「女性ホルモンが出ていない状態で、どうしたら女性らしく楽しく生きていけるか」ということ。QOLを上げ、快適な人生を送るための対策をとっていきましょう。(松峯先生)
更年期ファクター
知っておくべきこと
1 加齢に伴う女性ホルモンの急激な減少および欠落
2 家庭不和、介護など、ストレスが多い生活による環境因子
3 完璧主義、マイナス思考など、その人の性
自律神経の乱れが引き金になって起こる更年期症状。病気ではないため、70%の人はさほど深刻にならずに乗り越えられます。一方で生活に支障が出る「更年期障害」までいってしまう30%の人たちには、左のような3つのファクターが関与しています。なかでも完璧主義の人は、症状が重くなる傾向が強いようです。(松峯先生)
50歳でするべき検査
1 子宮頸がん検査
2 子宮体がん検査
3 乳がん検査
4 骨粗しょう症検査
5 コレステロールの検査
6 糖尿病の検査
子宮頸がんには症状がないので、毎年必ず検査を受けてください。子宮体がん検査は出血があってからでも間に合うため、何も症状がない場合は無理に受けなくてもいいでしょう。ほかに、一般的な特定検診に含まれているコレステロールの検査、糖尿病、脂質検査や、骨粗しょう症の検査などを受けておくと安心です。(寺内先生)
すべては自律神経の乱れから
自律神経は体中を駆け巡り、生命活動をコントロールしています。更年期の症状にも、自律神経のアンバランスに起因するものが多く見られます。例えば更年期になって、今まで問題がなかった食べ物や化粧品が合わなくなり、不調が出てしまうのもそのひとつ。自律神経の中枢は脳にあり、ホルモンの中枢と隣り合っているため、一方が乱れるともう片方にも影響が及びやすいのです。(松峯先生)
不調を感じたらまず婦人科へ
不調を感じたら、まずは婦人科へ。どこにかかればいいかわからない場合は、「日本女性医学学会」というサイトを見てください。どのエリアにどういう医師がいるかすぐにわかります。また、このサイトに載っていないクリニックの場合、ホームページを参照して、更年期症状、ホルモン補充療法、骨粗しょう症など、いわゆる中高年女性の健康管理的な項目があるかどうか、チェックしてから診察を受けるといいでしょう。(寺内先生)
間違えやすい病気も知っておく
例えば、更年期の症状と似ているものに「甲状腺疾患」があります。甲状腺ホルモンが過剰に分泌するバセドウ病(ほてり、動悸、多汗などの症状)と、甲状腺機能が低下する橋本病(気分の落ち込み、冷え、皮膚のかさつきなどの症状)です。これらの症状とともに首に腫れが見られたら、速やかに病院で診察を。(松峯先生)
次回は、閉経したら起こりうる症状について先生方に教えていただきます。
撮影/伊島 薫 ヘア&メイク/Yoboon モデル/田村翔子 スタイリスト/安野ともこ(CORAZON) 取材・原文/上田恵子