猫の額ほどのスペースに、地球環境とつながる入り口を手に入れた「テラサー」のワタシ
小学生の時に、飼っていたセキセイインコを看取って以来、「もうペットは飼わない」と決めたワタシ。でも、その禁を破って? 猫の額のような自宅マンションのテラスで、あるものを飼い始めました。その子(たち)の名は・・・ミミーちゃん!
名前ほどに「可愛い!」とは言い難い(そしてほぼ姿も見えない)彼らですが、実はとても働き者です。日常生活でどうしても発生してしまう、野菜やお茶など、食品の残りものを食べて消化し、それをとても豊かな「肥料」に変えて産出してくれるという、素晴らしい開拓者&土壌改良者!
もう、わかる方にはわかりましたね。そろそろ種明かしすると、「ミミーちゃん(たち)」とは、何を隠そう、ミ○ズさんたち!(字を見るだけで無理!って人もいるかもなので、伏字にしました。写真には出てきませんからご安心を!)
でも、「飼う」ってどゆこと? と思いますよね。そこは、これから説明させていただきます。
想像していたよりずっと素敵な「寄せ植えコンポスター」に出会って
ことの発端は、先月のGWのステイホームの最中に、ふとSNSを見ていたら、10年超来のお仕事仲間であり今はギャラリー&カフェ「ツォモリリ文庫」も開いて気鋭のアーティストさんたちを次々と招いている、ライターのおおくにあきこさんからの、こんな告知を見たことから。
【「ミミズガーデニングのすすめ」byたなかやすこ 明日、オンラインでレクチャー開催です!】
仙川の会場で現地参加もできる設定でしたが、私は自宅から参加にしました。緊急事態宣言下の東京で、まったりとGWを過ごす毎日にちょっと退屈していたこともあり、「面白そう」と感じて、直前でしたがすかさず申し込みました。ちなみにオンライン視聴料は1200円でした
おおくにさんの主催するそのギャラリー&カフェ「ツォモリリ文庫」は、アートの紹介とともに、地球環境のことにもコンシャスで「水」や「土」、生き物や人間の暮らしに関して、専門家を招いていろんなイベントを主催しているのです。
日本だけでなく、インドともご縁があって、子どもたちの教育を支援したり、「足るを知る」暮らしをインド先住民の人々に学んだり。さまざまなアイデアを形にしているプロデューサーでもあるおおくにさん
「アート」とも、いわゆる「丁寧な暮らし」とも縁遠いワタシですが、「地球環境をできるだけ傷めずに暮らしたい」とは思っているので、再生可能なものはリサイクルし、生物の多様性に良くないものはできるだけ使わないなど、できることを実践しています。そんな中で、日々どうしても出てくる生ゴミなども、本当は自然に還るものなのに、燃やせば温暖化を亢進させる、ということが気になっていました。なんとか上手く循環させることができないかな、と考えて、生ゴミや植物を発酵させたりして堆肥(コンポスト)にする器具や設備=「コンポスター」について、以前から興味をもっていました。
ミミーちゃんたちの「生きてるだけで生ゴミを堆肥に変える」パワーのすごさも10年くらい前に知って、プランターなどにいるのを見つけると大事に処遇してきましたし、数年前にかなり大掛かりなミミーちゃんハウスのセットがあることを知った時は、正直「買ってみようかな?」と思ったのですが、問題はその大きさ。ドラム缶を横半分に切って台に載せたようなそれは、「猫の額」のような我が家のテラスには存在感ありすぎ。そう思って導入を断念しました。
でも、今回惹かれたのは、講師が、たなかやすこさんだったから。
たなかさんは、「ベランダ寄せ植え菜園」の本を出していらっしゃるなど、狭い場所でも、プランターでも、美味しい野菜が育てられる!といううれしい提案をされているガーデニングクリエイター&イラストレーターさんです。
ベランダを立体的に使うことで、光を取り込み、植物がよく育つ。そんな工夫をこらした、たなかさんの「菜園」の本は、読みだすと野菜づくりがしたくなります。中国や台湾などでも翻訳されて読まれているのだそう
「ベランダー」(©︎いとうせいこうさん、かな?)の向こうを張って?「テラサー」(©︎オチャリーナ・笑)を名乗るワタシも、以前からたなかさんの発信は、参考にさせていただいていました。
しかも、春先に先のご本をチラと拝見した時に、ベランダにも置ける手ごろな大きさのプランターを使った、ミミーちゃんコンポスターを紹介されているのを見て、興味を持っていたところだったのです! そのたなかさんのレクチャーなら!と、参加を決めました。もちろん、本も購入。
長年、寄せ植えコンポスターを利用して、ミミーちゃんたちと「共生」してきたというたなかさん。鉢の中で完結するシンプルな装置が魅力です。(同書より、許可を得て掲載しています) 最初に紹介した、イベント告知にあしらわれている写真も、コンポスターの一つ。テラスに置いても違和感も圧迫感もなく、自然に溶け込む優しい雰囲気
当日のレクチャーは盛り沢山。前半は、ミミーちゃんたちの生態や、肥料が生まれる仕組みなどの説明。後半は、その場で実際にコンポスターを作って見せてくれました。これが、意外と簡単そう。材料が揃っていればあっという間に出来ちゃいそうです。
長年実践してきた、たなかさんだから、その楽しさと便利さ、手軽さを語る言葉にも説得力が!(写真提供:ツォモリリ文庫)
可愛らしい寄せ植えができていく様子や、楽しそうな皆さんの作業風景を見ていたら、「ムクムク」と、「やってみたいゴコロ」が刺激されて。それでつい、ウェビナーの最後の方で手を挙げて、「実際にやってみたいけど、ミミーちゃんを手に入れたりするのが大変ですよね?」と、質問してみました。そうしたら、やはり専門の業者さんがいらっしゃるそうで、ひと単位がわりかし大きいのだそう。「でも、ほしい方が他にもいらっしゃるようでしたら、まとめて購入してお分けすることもできますよ」とのこと。「わ、いいじゃん!」と勢いでつい、「ぜひ!」と返信してしまいました。
ただ、コンポスター作りにはもう一つ難関が。「植木鉢の底を、のこぎりで切って蓋にする、縁も3箇所くらい三角に切り落としてミミーちゃんたちの出入り口を作る」と言うのが必須だということで、これが結構大変そう。どうしようかな、と迷っていたら、ミミーちゃんを受け取りに行く前日に、おおくにさんから天の助けのようなメッセージが。
「植木鉢も底や縁をカットしてすぐ使えるようにしてお分けすることもできますが、購入されますか?」
なんと、渡りに舟、とはこのこと!
「ハーーーーイ!」とすぐ乗って、ミミーちゃん到着の連絡をもらうとすぐに、キャリーケース持参で、ギャラリー&カフェ『ツォモリリ文庫』を訪れたのです。
MCを務めながら実演コーナーではいとも軽々と華麗なノコギリさばきを見せているのは、サスティナブルライフをテーマに漫画を描いている、ファミリーの息子さん(兄)の小栗千隼さん。(写真提供:ツォモリリ文庫)
ミミちゃん受け取りもしながら、ギャラリー詣でも愉しみました
うれしいのは、受け取りに行きがてら、ちょうど拝見したかったアーティストさんの展示が見られること。この日のギャラリーは、気鋭のアーティスト、松岡亮さんの展示「目を瞑って。見る。」「何も見えない。」が開催中でした。迫力のある作品を前に、しばしウットリ。
小さい頃からいつもそばに「ミシン」があった、という松岡亮さんの作品は、絵筆の線のような勢いやニュアンスを自在に表現したミシンの「ステッチ」でできているものが多い。ひとつひとつ違う抽象的な絵柄は「日記」なのだそう(会期はすでに終了。作品や店内の写真は全て許可を得て掲載しています)
ちょうど訪ねたのはお昼を回った頃。ランチのカレーとチャイ、デザートのメロンチーズケーキを、壁いっぱいの作品を「かぶりつき」で堪能しながら美味しく食べてしまいました。贅沢すぎる時間です。
日印のアーティストが交流するアートの祭典、「ウォールアートプロジェクト」をゼロから立ち上げて、インドの小学校への支援を続けてきたツォモリリ文庫のみなさんだけに、現地仕込みのカレーやチャイが美味しいのもうなずけます。
と、ワタシは昼過ぎにノコノコ行って、素敵な作品を眺めて美味しいものを食べて、すっかりいい気分ですが、朝から大変な思いをして植木鉢をカットしてくれたのは、おおくにさんのパートナーさんの小栗雅裕さん。カフェの美味しい食べ物も、青熊父さんこと、小栗さんの手になるもの。いろいろ器用で、おおくにさん同様センスが良いのです。
アーティスト松岡亮さんの手になるオリジナルシャツを素敵に着こなす小栗さん
先日のレクチャーの際に作られて、すでに窓際に並んだ、コンポスト寄せ植えの世話を担当されている、旧知のツォモリリ・メンバー(普段はインド在住)の「おかずくん」から細かい管理ノウハウも聞きました。
セミナー参加者に手渡す用の、途中までできたコンポスターのチェックをするおかずくん
ツォモリリ文庫は京王線の仙川駅近くに佇む、洒落たビルの一階にあります。そのウインドウには、ギャラリーの展示に合わせて作品が展示されています。その手前に並ぶのも、よく見ればいくつかはコンポスターさんたち。もちろん、そこでもミミーちゃんたちがせっせと働いています。
それぞれのコンポスターにはセージやミント、ナスタチウムなど、食べられるハーブが植え込まれていて。優しい色のハーモニーが素敵です!
ワタシでもできた! ナチュラルな「寄せ植えコンポスター」
幸い仙川にはホームセンターもあったので、必要な資材を一揃い買い込んで帰ると、翌日にはもう、ミミーちゃんコンポスター@猫額テラスが完成しました!
夏に向かうので、爽やかな緑の葉色のハーブを中心に植え込みました。植えたのは、左手前から右回りにナツメグゼラニウム、アップルミント、イングリッシュラベンダー、葉が大きいのは、少し前に買ってあった エリンジューム ブルーキャップ。
簡単に作り方を紹介すると、大きめの木製プランターの底穴にネットをかぶせ、鉢底石代わりに炭を敷き、その上に底面を切り取って縁に3箇所切り込みを入れた素焼きの植木鉢を真ん中に伏せて置きます。その周りにもみ殻くん炭を多めに混ぜ込んだココヤシの繊維でできた土を足しながら、ハーブ類を植え込みます。最後に鉢の内側に薄く、ココヤシ+くん炭用土を敷いてそこにミミーちゃんたちを解放! あっという間に土に潜ってしまいます。そして、そこがお食事スペースになります。
写真上から、材料一式(牛乳パックに入っているのが共同購入したミミーちゃん)、炭の上に植木鉢を伏せたところ、ココヤシチップにもみ殻くん炭を混ぜる前、植木鉢の周りをココヤシ+くん炭用土で満たしたところ。植木鉢の切り取った底をどけると、下には炭が見えています。ここに薄めにココヤシ+くん炭用土を敷き、ミミーちゃんの食べ物を置きます
ミミーちゃんたちの食堂の上は、切り落とした底面でフタをしますが、フタにした鉢底の穴から虫や雨が入るのを避けるために、穴も塞ぎます。我が家の場合は、似たタイプの古いお皿があったので、それで塞ぐことにしました。
とても良質な肥料になるミミーちゃんの創作物(フン、とも言いますが。笑)は、なぜか逆さ鉢の中ではなく、外側の土の表面に貯まるのだそうです。それがそのまま寄せ植えの苗の肥料になるし、たくさん貯まったら、すくい取ったり削り取ったりして、他の鉢に足しても。
*用具の大きさや加工のしかた、使い方、ミミーちゃんの入手方法など、詳しくはぜひ、先にもご紹介したたなかやすこさんの本『ベランダ寄せ植え菜園』をご覧ください!
蓋を開けると、そこはさながらダイニング・スペース。ミミーちゃんたちが一番喜ぶ食べものは、意外なことに「お茶の葉っぱ」とおかずくんに聞いたので、せっせとお茶の葉っぱをあげると、確かに一番早くなくなります。他にもご飯とか、コーヒーかすとか、じゃがいもの皮とか、枝豆の皮とか、いろいろあげてみたけど、やっぱり一番最初になくなるのは、お茶の葉でした。(ご飯やコーヒーかすにはカビの花が咲いちゃったり、ジャガイモの皮はまったく見向きもされなかったりで、ときどきメゲてます)
実を言うと当初は「あれもこれもぜーんぶ食べてもらって、ほぼゼロウェイストな台所にできるかも!」なんて野望もチラッと頭をよぎったりしたのですが、やはりこの小さな規模では全然無理だと判明。湯呑に一杯分のお茶の出がらし葉も、なくなるまでに2日くらいかかります。(ミミーちゃんは百匹以上いるらしいんですけどねえ) なので、どちらかと言うと、今のところは「ペット感」の方が強いかも。
一瞬姿が見えてもサッと姿を隠すし、見えてもさすがに可愛がることもできない、微妙な関係なのですが、食糧が減っていたりするのを見ると、「生きてる生きてる♪」と思えるのが、楽しみになっています。
植え付けてそろそろ1か月。順調にハーブたちが育ってきています。後ろのもしゃもしゃグリーンが半分被っているのは、日除けのためですが、もう少し暑くなってきたら、雨と直射日光を避けて軒下の方に動かすつもり
自然のままなら森や林の中で枯れ葉や草が積もったところを「食堂兼住処」にして、せっせと土を肥やしているミミーちゃんたち。今は、ちょっと出張して猫額テラスに来てもらっていますが、起こっていることは森でも林でも同じ仕組みだと思うと、ちょっとワクワク。地球のあちこちで起きていることが、目の前でわかりやすく見えるのですから。
おまけにわざわざ肥料を買う必要もなく、ちょっとだけどゴミも減らせる、これできれいな花が咲いたり、美味しい野菜でも作れたら、相当幸せ感あるよなー♪と楽しみです!
さて、コンポスト肥料ができるのは、いつになるかな? それを待ちながら、まずしばらくは、フレッシュなアップルミントの葉でお茶を淹れたりしてみたいと思います。