風吹ジュンさんが、とびきりチャーミングでカッコイイ母親役を演じているのが、10月2日に公開される注目の映画『浅田家!』。
カメラマンとなった次男坊を中心に、さまざまな写真を通じて「家族」というものを、ふんわり温かく描き出す。
その家族のムードメーカーであり、大黒柱でもある母親役は、風吹さんにとってやり甲斐のある、楽しい仕事だったようだ。
撮影/萩庭桂太 ヘア&メイク/長井かおり スタイリスト/岡本純子 取材・文/岡本麻佑
風吹ジュンさん
Profile
ふぶき・じゅん●1952年5月12日、富山県生まれ。1975年に女優デビュー。1991年、『無能の人』で日本アカデミー賞助演女優賞を受賞。『魂萌え!』(07)、『海街diary』(15)、『家族はつらいよ』(16、17、18)など多数の映画に出演。第74回毎日映画コンクール田中絹代賞受賞。『浅田家!』に続き、10月23日には『きみの瞳が問いかけている』も公開される。
ゴレンジャーのコスプレが、楽しかったですね!
この作品、恋愛映画ではないし、刑事モノでも社会派の問題作でもない、素敵な家族映画だ。
プロのカメラマンとなった次男坊の浅田政志(二宮和也)を中心に、父(平田満)、母(風吹ジュン)、長男(妻夫木聡)の4人家族を描いている。
そして現在も活躍中の写真家・浅田政志氏を巡る、実話を元にした物語でもある。
「クランクインの前、最初の顔合わせとして、三重県津市の浅田さんのご実家に俳優陣が集合したんです。そこには本物のお父さんお母さん、そしてお兄さんもいて歓迎してくれました。こんなの初めてだし、楽しかった!
それにキャスティングされた俳優陣がみんなすごい人たちばかりだし、役にぴったりなんです。二宮さんはもちろんのこと、妻夫木さんのお兄さんなんて、優しくてしっかりしていて。ふたりとも、ステキな息子でした(笑)」
浅田政志氏が世に知られるきっかけとなったのは、第34回木村伊兵衛写真賞(2008年度)を受賞した写真集『浅田家』。
「家族がなりたかったもの」「家族でやってみたいこと」をテーマに、両親と兄を動員し、さまざまなシチュエーションを背景に、家族全員がコスプレしてカメラの前に立った。消防士、レーサー、極道、ラーメン屋などなど、もともと普通の人である家族が一丸となって撮影しているのだ。
その「コスプレ家族写真」を、浅田氏自身が、風吹さんたち俳優陣を使って撮影するところから、この映画の撮影は始まったという。
「消防士の格好なんて、たぶんこれが一生に一度のことですよね。本物をお借りしたので、制服は大きくて重くて、煙の匂いがしました。ちょっとゾクッとしましたね。極道の妻とか、ゴレンジャーの格好をしたのも楽しかったです」
「自分がやりたいこと」を突き詰めて、とうとうプロのカメラマンになった次男坊を見守る母親の目は、厳しくも優しい。風吹さん演じるこの母親は、看護師として働く、一家の大黒柱。主夫として家庭を支える夫や息子たちを、大きな懐で包み込んでいる。
「こういう家族、いいなと思いました。男も女も関係なく、働ける人が働けばいいし、家族のあり方はそれぞれですもの。
この家族はひとりひとりが自分のやりたいことをちゃんとやって、でも変に主張することなく、絶妙なバランスで仲良く生きているんです。
それに、私は今まで、母親役は何度も演じて来ましたけど、母親その人自身のバックボーンが書き込まれている脚本は意外と少ない。母性としての存在感は大きいけれど、個人のエピソードは少ないんですね。
でもこの作品では実物のお母さんにお目にかかりましたし、彼女は口数少ないけど、すごくチャーミングでカッコいい方なんですよ。そのピリッとしたカッコ良さを意識して演じました」
映画の後半、舞台は東日本大震災後の東北沿岸部に移る。被災地の泥の中から拾い上げた写真を洗い、再生して持ち主の元に戻す「写真洗浄」というボランティア活動、それを通じて浅田氏が感じた「家族」というものへの想いが、静かにていねいに、描かれていく。
「私自身、すごく好きな作品です。たくさんの方に見ていただけると、うれしいですね」
(「風吹さん自身の身体を強くする生活と食事」について語った、インタビュー後編はコチラ)
『浅田家!』
ユニークな家族のなりきり写真集『浅田家』と、東日本大震災後の写真洗浄作業に励む人々を約2年間に渡って撮影した『アルバムのチカラ』。浅田政志氏の2冊の写真集から実話を元に描かれた、普遍的な「家族」の物語。
10月2日(金)より、全国東宝系にて公開
配給:東宝
監督・脚本:中野量太 原案:浅田政志 脚本:菅野友恵
出演:二宮和也 黒木 華 菅田将暉 風吹ジュン 平田満 妻夫木聡ほか
©2020「浅田家!」製作委員会
公式サイト:https://asadake.jp/