2年前、「母のナチュラルメイク」「母のグラマラスメイク」という、母にメイクするビデオをYouTubeにアップしました。母のメイクを練習しながら感じたのは、年上世代の方は、メイクしすぎると実年齢よりも老けて見えてしまうことがあるということ。自分の魅力を引き出すために、どこを足し算して、どこを引き算するかを研究するのがメイクの面白いところだと思います。今回は若々しく見えるメイクのコツについて、お伝えしますね。
アイカラーは茶色・黒・ベージュをグラデーションにして、陰影をつけすぎないのがコツ
みなさんはメイクするとき、まずはファンデーションを塗ってベースを整えてから、眉を描いて、アイシャドウをつけて、というのが正しい手順だと思っていませんか?でも、メイクには「こうじゃなきゃダメ」という決まりはないんです。
私はアイメイクからスタートして、アイメイクの完成後、目の下に落ちたアイシャドウの粉をふき取ってからベースメイクをすることが多いんですよ。というのも、目の下にアイシャドウの粉が落ちたままだと影のようになって、目元を明るく見せることができないからです。しかも「目をパッチリさせよう」とアイシャドウをのせすぎると、目がくぼんで見えてしまいがち。陰影をつければつけるほど年齢を重ねた人のように見えてしまうんです。「若々しく仕上げるには、暗い色をのせすぎないほうがよい」というのが、母のメイクを練習したときの大きな発見でした。
40~50代以降の方たちには、茶系のアイカラーをおすすめしています。茶色、黒、ベージュというのは私たちの肌にもともとある色。これらは調味料の「塩」にたとえることができるんです。たとえば肉や魚に塩をふると、素材そのもののうま味が引き出されて、おいしくなりますよね。それと同じように、茶系のアイカラーには目をパッチリさせる効果があるんです。
一方、緑や青、ピンク、オレンジなどのカラーは「スパイス」にたとえることができます。これらはシナモンやバニラ、カレーのように風味をつける調味料と同じ。素材の味を濃くする働きはありません。なので、もともと目元がはっきりしている人の場合は、ピンクやゴールドなどで風味づけするといいかもしれません。
魅力的でナチュラルな目もとにするには、黒のアイライナーを茶色のアイシャドウでぼかして、肌色と黒のラインの隙間をグラデーションにするのがコツです!その際、茶色のアイシャドウをのせすぎると、陰影が濃くなって目がくぼんで見えたり、両目がへこんで見えたり、「骸骨メイク」になりやすいので要注意。アイシャドウは、アイラインをぼかすくらいの2~3ミリ幅でのせるように意識するとよいですよ。
キラキラしたラメ入りのものをつけると、目のまわりのしわを際立たせてしまうので、気になる方はマットなタイプ、または、ちょっとだけつやがあるタイプを選ぶといいでしょう。
そして、眉毛はしっかりと生えているところは描かず、薄くなっているところだけを埋める感じにして、眉尻を整えるのがポイント。眉毛に白髪が出始めた方は、眉マスカラで色を整えるのもありですよ。
©Adrián Jaramillo
ファンデーションはのせすぎない!チークとリップはローズ系がおすすめよ
年上世代の肌はファンデーションをのせるときも、引き算で考えるほうがいいでしょう。たくさんのせると肌が重たく見えてしまうので、必要なところに必要な分だけのせるのがコツ。目の下のクマ、鼻のまわりの赤み、しみが気になる部分だけをコンシーラーでカバーして、できるだけ顔全体にファンデーションを厚塗りしないようにしています。そのほうが若々しく見えるんですよ。パウダーもテカりが気になる部分だけにのせて、もともとの肌のつやを出すようにしています。
また、チークはローズなどの色で華やかさを演出すると若見えします。パウダータイプは乾燥して見えるので、気になる方はクリームタイプを使うといいかもしれません。もみあげの生え際から口に向かうラインをイメージして、指で少しずつのせていきます。チークは適当にぐるぐるっとやると、雑な仕上がりになってしまいます。どこにどのくらい乗せるかを丁寧にしてみてください。細かいところにこだわることでワンランク上の仕上がりが手に入りますよ。
そして、リップにはローズなどのはっきりとした色を選ぶと、あなたのよさをアピールできます!リップスティックを塗るだけだと輪郭がぼやけてしまうので、リップペンシルで唇の形をきれいに整えるのもおすすめ。リップカラーを選ぶときには、下唇の内側の粘膜の色を濃くしたような色があなたに似合う色よ!
年上世代はアイカラーは控えめにして、リップを赤やローズなどのきれいな色にするほうが若々しく見えます。唇に色がのるだけで、“きちっとメイク”した印象になるんです。
顔のパーツを左右対称にするのが腕の見せどころ。日々練習あるのみ!
メイクで一番難しい技術が、顔のパーツを左右対象にすることです。私もアメリカでメイクの勉強をしていた当時、「左右が違う」とよく師匠から注意を受けました。そもそも私たちは手相も左右が違うし、顔のパーツも左右が違うのは当たり前のこと。それを左右対称に見せるのがメイクの腕の見せどころです。私は鏡に向かって、メイクした自分の顔写真をスマホで撮り、左右の眉の太さや角度、目の大きさなどをチェックしたり、左右を反転させたりして、「左右のパーツの違いをいかにして補うか」を研究しました。
メイクの技術を磨くには、日々練習あるのみ!お習字をするとき、極上の墨と筆があればきれいな字を書けるわけではないのと同じだと思うんです。
「年齢を重ねたせいか、最近メイクのしかたがわからない」という人は、メイクをしすぎると実年齢よりも老けて見えるので、まずはファンデーションを引き算メイク。そしてローズ色のチークとリップで顔を華やかに見せるテクニックを味方につけてみてください。
また「アイシャドウをぼかすこと」「リップラインがゆがんでいないこと」、そして「顔のパーツが左右対称になっているかどうか」も意識してみてください。メイクの練習を楽しみながら、あなたの魅力をアップさせていただければと思います!
お話をうかがったのは
1989年生まれ。ニューヨークのパーソンズ美術大学卒業後、アメリカを拠点にメイクアップアーティストとして活動。ミス・ユニバース世界大会などでメイクを担当する。2015年、修行を経て浄土宗僧侶となり、現在は、僧侶であり、メイクアップアーティストであり、LGBTQでもある独自の視点から「性別も人種も関係はなく、人は皆平等」というメッセージを発信。著書に「正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ」(サンマーク出版)
■Youtubeで、西村さんの講話を見ることができます。
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取材・文/大石久恵