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【西村宏堂の言葉】嫌なことを言う人は「自分の中の嫌な感情をこちらに向けて、反射させている」だけ。同じようにやり返さないで

LGBTQ活動家、アーティスト、そして僧侶。世界的に活躍中の西村宏堂さんにも、かつては生きづらさを感じて、「みんな、嫌い」と思っていたことも。今回は、仏教の教えにある「慈悲の心」や、人に不快な思いをさせられたときの思考の転換法について話していただきました。

かつてはLGBTQであることを隠して、生きづらさを感じていた私。子どものころの私は「女の子みたい」とバカにされると、「そんなことを言うあなただって、可愛くないのに」と、相手を否定することによって自分を肯定していました。当時は「自分がこんなにつらいのに、ほかの人にやさしくするなんて、ありえない」と思っていたのです。でも、今では「相手を許す慈悲の心があると生きやすくなる」と感じています。

 

「みんな、嫌い」と思っていた私がいかにして「つらい思いをしている人を応援したい」と思うようになったのか心の持ち方についてお話しします。

 

「LGBTQの誇り」を否定され、私の心の水面はふつふつと沸騰した

 

18歳のときにアメリカに留学し、メイクの仕事をするようになってから、私は「LGBTQである自分自身」に自信を持てるようになっていきました。そこに至るまでには勇気と努力が必要だったし、多くの出会いと経験を経て、「恥ずかしくない」と思えるようになったんです。

 

大学卒業後、日本に帰国して「お坊さんになるための修行」をしました。そして、仲よしになった修行僧の友人のお寺に遊びに行きました。最初は皆さん、すごく歓迎してくれたのですが、2回目に行ったときに友人のお母さんの態度がガラリと変わりました。「私が同性愛者で、彼に好意を持っている」と知ったからです。

 

「同性愛はホルモンの異常で起こる。『体が冷える食べ物を食べ続けると同性愛に走る』と書かれたマクロビの本がある。食事を変えると同性愛者であることを治すことができるから、宏堂くんは玄米と梅干を食べるとよい」と、その本をすすめられて…。

 

その瞬間、私の内側にすごい怒りがわき起こりました。今まで平らで波打っていなかった水面に隕石がボーンと落ちてきて、「なんて差別的なことを言うんだ!」と私の心は激しく揺れた状態。隕石の熱で私の心の水面は沸騰して、怒りが収まらず。次の日すぐに東京に帰って、ずっと泣いていました。その後2年間ほど、私の心の水面はふつふつと沸騰したまま。ずっと怒りに燃えていたんです。

 

そんなある日、信頼している人に相談したら、「怒りというのは愛の裏返しなんだよ」と言ってくれて。自分が同性愛者であることを差別され、いちばん大切にしている「私の誇りを否定されたこと」がこの怒りにつながったんだと気づきました。

 

他人から不当な仕打ちを受けたとしても、自分は気高く生きていきたい!

 

そして、もう一つの気づきがありました。その修行僧の友人のお母さんから聞いた「私も大学に行きたかったけど、学ぶ自由が得られなかった」「留守をしないように、いつもお寺にいなければいけないので、ボランティアや旅行にも行きにくい」「息子をお坊さんにしなさいと、いつも舅と姑から言われていた」という話。

 

それにひきかえ、私は、アメリカ留学して英語を話せるようになった。海外を行き来してメイクの勉強をして、お坊さんの資格もとれた。そんな自由な生き方をしている私が同性愛者で、息子に好意を持っていると知り、「今まで無理をしてでも守ってきた人生プランを脅かす存在」と思ったのでしょう。もしも、その人自身が幸せで、「いろいろな生き方があってもいい」という気持ちで過ごしていたなら、LGBTQを非難する必要はなかったと思うのです。

 

彼女が私に対していらだちを覚えたのは、「自分はこれまで自由に生きてこられなかった」という状況を引っ繰り返したような気持ちだったのかもしれない。自分の中にある嫌な気持ちを無意識のうちに私に反射させてしまったのかなあと。そう思ったら、私の心の水面を沸騰させていた熱い隕石の温度が下がり、プカリと浮かんできました。悲しい思いをした体験が消えたわけではないけれど、私の心は平らになり、怒りが静まり、「慈悲の気持ち」を持てるようになったんです。

LGBTQ活動家、僧侶、メイクアップアーティスト西村宏堂さん

©Ibuki

 

私の大好きなミシェル・オバマはWhen they go low, we go high」(相手が低俗にふるまったときこそ、気高くいきましょう)という言葉を言っています。これはバラク・オバマが周囲から激しい批判を受けたときに、「相手に同じように仕返しをするのではなく、素晴らしい活動をすることによって、私たちが受けた非難が不当であることを証明しましょう」と訴えた言葉です。たとえ差別や不当な扱いを受けたとしても、自分のことを誇りに思えるような行動をしていくことが大事なんだなと思います。

 

嫌な感情を反射されたとき、それを乗り越えるには相手を思いやること。そして、頑張りすぎない!

 

誰かに嫌なことを言われて怒りがわいたときには、「なんで私にこんなことを言ったんだろう」と、まずは立ち止まって考えてみてください。そして、相手の状況をひっくり返すんですあなたに嫌なことを言ってきたその人は、自分がつらかったんじゃないのかなと、思いを馳せてみるんです。嫌なことを言ってくる人は、「自分の中の嫌な感情をこちらに向けて、反射させている」だけ。同じようにやり返さないで、その人を思いやることが、自分にとっても、相手にとっても、みんなにとっても、いいことなんじゃないでしょう

 

日本人って、「もっと頑張りなさい」とか「これで満足しちゃダメ」と考えてしまいがちですよね。仏教には中道(ちゅうどう)という教えがあります。これは「努力するのは大切なことだけど、頑張りすぎるのはよくない。ほどほどがよい」という考え方。「お釈迦様が苦行をいったん中断したところ、活力がよみがえった」という説もあるのですよ。

 

人はストイックに頑張りすぎたり、我慢しすぎたりすると、無意識のうちにほかの人に厳しくなってしまいがち。自分の中のストイックな感情を反射させてしまって、周囲の人を嫌な気持ちにさせてしまうことがあるんです。「相手が感じた嫌な気持ち」が再び自分に跳ね返ってくることもあるので、頑張りすぎるのは考えもの。周囲の人の負担になるし、自分のためにもよくありません。それに、頑張ってばかりの人生だと、幸せな気持ちを味わうことができなくなってしまう。

 

実は私も頑張ってしまうタイプなんです。よく、スペイン人の親友から「自分が成し遂げたことに満足しないで、『まだまだ』って頑張ってばかりだと、幸せを感じるタイミングを逃して、頑張り続けるだけで終わっちゃうよ!」「むしろ率先的にお祝いしたり、自分にご褒美を与えることも大事だよ。幸せを感じることに罪悪感を感じないで!」とアドバイスされています。

 

そんなわけで、罪悪感を感じないように、自分にやさしくする努力をしているところです。

 

お話をうかがったのは

西村宏堂
西村宏堂さん
僧侶
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1989年生まれ。ニューヨークのパーソンズ美術大学卒業後、アメリカを拠点にメイクアップアーティストとして活動。ミス・ユニバース世界大会などでメイクを担当する。2015年、修行を経て浄土宗僧侶となり、現在は、僧侶であり、メイクアップアーティストであり、LGBTQでもある独自の視点から「性別も人種も関係はなく、人は皆平等」というメッセージを発信。著書に「正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ」(サンマーク出版)

 

 

■Youtubeで、西村さんの講話を見ることができます。

全日本仏教青年会全国大会2022特別講演:西村宏堂「本当の多様性ってなんだろう?」
全日本仏教青年会全国大会2022特別講演:西村宏堂「欲は″良くない″って本当?」
全日本仏教青年会全国大会2022特別講演:西村宏堂「イライラしても慈悲の心を持つヒント」

 

取材・文/大石久恵

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