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大嫌いなパートナーが大好きになる「幸福学」の方法って?

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司先生に聞く、OurAge世代のための「幸福学」。パートナーシップにおける幸せのつくり方がテーマ。夫婦生活も長くなると、相手の嫌なところばかりが目につきますが、そんな関係を変えるにはどうすればいいのでしょう?

幸福学の“ある方法”で、夫とわずか1週間でラブラブに!?

 

――この回から、OurAge世代の「あるあるお悩み」について、前野先生に幸福学の見地から解決策を教えていただきたいと思います。読者から寄せられる声で多いのは、コロナ禍以降のリモートワークなどによって、夫やパートナーが一日中家にいることに息苦しさを感じる、というもの。次のようなお悩みです。

 

「コロナ禍からのリモートワークで、夫が家にいることが苦痛になってきました。DVや不倫、借金などがあるわけではないのですが、若い頃のような男女のセクシュアリティも感じず、コミュニケーションも希薄です。パートナーシップにおける幸せはもう望めないのでしょうか?」(50代・フリーランス)

 

実は私にも知人の女性で、とてもよく似た不満を持っておられる方がいました。夫との関係は冷え切っている。リモートワークで家にいられるのも耐えられない。定年後はどうしようかと思っている、と。その方には、僕が幸福学で教えている、ある方法を伝えました。すると1週間後に、「夫との関係が、ラブラブに戻りました! ありがとうございます!」というメールが届いたのです。

 

――えっ! たったの1週間で!?  いったい、どんな方法なのか知りたいです!

 

とてもシンプルなことです。それは、他者に感謝すること。それも、いつもの10倍くらい感謝の気持ちを伝えましょう、ということです。例えばメールの最後に書く「ありがとうございます」の言葉も、形式的に書くのではなく、もっと心をこめて書いてみるんです。「◯◯さんが△△について、すばらしく献身的にお手伝いをしてくださったおかげです。心から感謝をしています」というような。

 

――そういえば、周囲に文句や愚痴ばかり言って嫌われていたおじさんが、自分に感謝する習慣を続けて、好かれるおじさんに変わったというお話がありましたね。

 

ええ、そうです。自分に感謝をすると自分が元気になっていくし、他者に心をこめて感謝をすると、他者が元気になる。そうすると、人間関係がよくなっていくわけです。なぜかというと、「ありがとう」と感謝をすることで、セロトニンやオキシトシンなど、優しい気持ちになる脳内ホルモンが分泌されるから、メンタルも整っていくというわけです。

最初は無理やりでもOK!他者への感謝を口にする

 

――その女性は、夫にどういうふうに感謝を伝えたのでしょうか?

 

夫が食後に食器を流しに持っていったとか、皿洗いをしたときに、「いつも洗ってくれて助かる。ありがとう」と、伝えたそうです。本心では、皿洗いしたくらいで家事をした気になってるんじゃないわよ、とは思っていても、まぁとにかくありがとうと伝えたそうです。そう言われると、旦那さんだって悪い気はしないですよね。すると、「今は忙しいから自分の分しか洗ってないけど、定年後は全部洗うようにするから」という言葉を返してくれたらしいんです。

皿洗いをする夫に「ありがとう」を伝える妻

 

――へぇ〜!?  幸福学では、他者に感謝を伝えると幸せになれる、という知識を得たからこそ、行動できたのかもしれませんね。嫌だなぁと思っているパートナーに、普通はなかなか、素直にそうは言えないと思います(笑)。

 

まぁ、そうですよね。相手のことを「あぁ嫌だ!」と思っていると、相手も自分のことを「あぁ嫌だ!」と思うようになってしまいます。長く暮らしている夫婦にありがちなのは、「あなた全然、ゴミ出ししないじゃないの」「お前こそ、いつも洗濯物をすぐたたまないじゃないか」と、お互いがネガティブ攻撃になってしまうこと。これをポジティブなほうで言い合うように変えるだけで、幸せのループへと入っていけると思うんですよね。

 

――なるほど。最初は無理やりでも、まずは自分から感謝を伝えたということに、大きなヒントがありそうですね。

 

最初は無理やりでいいんです。ちょっとだけ、感謝の気持ちをまず自分から出してみる。すると、「いや、こちらこそ感謝だよ」と相手の気持ちもやわらいで、感謝をどんどん積み重ねていけるんだと思います。このご夫婦は、その好例ではないでしょうか。たった1週間で、嫌だった夫とラブラブになれてうれしいとなったわけですから。

40代、50代からは「負けて勝つ」方法を知る

 

――幸せになれるのであれば、他者への感謝のバリエーションをもっと知りたいです。例えば、ほかにどんなことがありますか?

 

いくらでも出てきますよ。まず、相手のささいな行動への感謝ですね。さっきの旦那さんの皿洗いのような。あと、相手の性格にも何かしらの感謝を探し出すことってできるじゃないですか。いつも真面目に働いて、頑張ってくれてありがとう、とか。もっと言えば、感謝は人間以外に対してもあります。だって太陽のおかげで僕たちは生きているし、植物のおかげで酸素だってあるわけです。ボールペンのおかげで紙に字が書けるし、パソコンのおかげでこうやって仕事もできる。そんなふうに外に対する感謝の視点を持つトレーニングをしていくと、嫌な夫にも、ここにいてくれるだけで感謝だなぁという気持ちが湧いてくるようになるんです。

 

――年をとるほどに、自分から先に感謝するとか、相手によいことを言うのは、なんだか負けた気がするという判断基準に陥りがちなのかもしれませんね。物事を勝ち負けでとらえてしまうというか。

 

夫婦関係も、長年の間に妙なゲーム感覚にとらわれてしまっていますよね。先に褒める、譲歩するのは負け、みたいなね。でも「どうぞお先に」という感覚を持つことは、結果的に勝ちなんです。「いえいえ、あなたこそお先にどうぞ」と、相手の気持ちをやわらかいものに変換することができる。それは合気道や柔道と同じ理論です。相手が力でねじ伏せようとしたとき、その力を利用してすーっと引いてからぽん、と押すと勝つでしょう。

 

――負けたようで実は勝っている。とても成熟した人間関係のコツですね。

 

若いうちは、言葉のチカラで相手に勝ちに行く!というパワーがあってもいい。でも40代、50代からは、いかに引くほうに回るかが大切なのではないでしょうか。そこにうまくシフトできず、勝ち負けにこだわり続けてしまうのは、自分も相手もきっと苦しくなってしまうはずです。

 

――夫婦、パートナーシップも、譲り合うことで幸せになる。今日から感謝上手を目指して、40代、50代らしい幸福を味わっていきたいです!

 

 

【教えていただいた方】

前野隆司
前野隆司さん
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授兼武蔵野大学ウェルビーイング学部長
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1984年東京工業大学卒業、86年同大学修士課程修了。キヤノン株式会社入社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。2024年より武蔵野大学ウェルビーイング学部長兼任。研究領域は、幸福学、イノベーションなど。

 

イラスト/midorichan 取材・文/井尾淳子

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