コロナ禍がまだまだ続いている今、おうち時間の過ごし方をいっそう考えるようになりました。「もっと心地よい過ごし方はないかしら?」鬱々とした気分になりやすい自分を奮い立たせ、より快適に過ごすための方法をいろいろ考えます。
そんな時に、散歩の途中訪れた寺町通にある創業寛文元年(1661)の「京漆匠 象彦 京都寺町本店」。2014年に岡崎から移転しています。
店に並ぶのは、薄手の木地にまるで水を含んだような艶を湛える優しい姿の漆器。その美しさは、昔から人々を魅了してきたのです。
全国各地で作られる漆器…その歴史は古く、なんと縄文遺跡からも出土するとか。中国、ベトナムなど、漆の木が育つ地域で発展した漆器の技術。日本において、その技法が発達したのは、平安時代からで、金を使った豪華が蒔絵などの技法がいっそう漆器の世界を広げます。
特別な日のお客様用の器というイメージも強い漆器ですが、実は、とても使いやすく、持つ手に、そして料理自体にもやさしいことをご存じですか。熱伝導率が低い漆器は、熱い料理や汁物の温度低下が少なく、陶磁器よりも長く温かい状態を保て、また反対に冷たいものは、その冷たさ保てます。
戸棚の奥に、いつ訪れるかもわからないお客様のために仕舞っておくのは何とももったいないこと…どんどん使ってこそ、器も喜ぶというもの。
ところで、日本全国に産地をもつ漆器の中でも、特に繊細さが感じられる京都生まれの京漆器。なんとも口当たりが薄目でやさしく、椀など直接唇が触れる器の心地よさは格別。
この店で今回、特に心惹かれたのが、コロンとした愛らしい形の多様性を感じさせる器です。おうち時間で、コーヒー、紅茶、日本茶などを飲む機会も急増。今まで使っていた陶磁器のコーヒーカップと異なる手触り、口触り。カップの新たな仲間を増やしてみてはいかがでしょうか。スープカップにもピッタリです。
さらに2つが寄り添うような姿のペアカップは、人気の品のひとつ。
結婚のお祝いなどにもふさわしいのですが、キャリアを積んだご夫婦にもおすすめ。大きさが異なる従来の夫婦茶碗とは違い、対等の大きさで寄り添っているのが、なんとも今らしいのでは…。
依然として、和食のイメージが強い漆器ですが、モダンなデザインや色のものも次々に登場し、料理を選ばず使える幅広さも注目したいところ。
器の元となる木地の持ち味をそのままの透明な塗りの加工は、木目の美しさと共に木から彫り出されたフォルムの正確さに魅了されます。
「こういう器で食事をしたら、もっと美味しく感じるかも…」と思わず声に…。
花のような形になる5枚組の銘々皿。新鮮な色合いも素敵。
花びらだけでなく、三日月にも見立てて使いたくなります。
まるでギャラリーのように品々が並ぶ店内。
ひとつひとつ見ていくだけで、心豊かになるよう…。
美しいものに触れる機会に恵まれた京都。長引くコロナ禍の閉塞感が募る日々、本当に美しいものを身近に感じられることのありがたさを痛感します。
モノを減らした生活を目指しながらも、やっぱり美しいものを身近に置きたい…。
この時期出会った小さな器が、疲れた心を元気してくれる…そんな時間になりました。
京漆匠「象彦」では、8月から直営のオンラインショップを開設しました。
ぜひ覗いてみてください。なお、店頭でしか扱ってない品もあり、それは京都旅に来た時のお楽しみに…。
京漆匠「象彦 京都寺町本店」
京都市中京区寺町通二条上ル西側要法寺町719-1
☎075‐229-6625
営業時間10:00~18:00 不定休
*コロナ禍のため、現在、営業日および営業時間などに変更があります。事前のご確認を
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