これは私が19歳のときに思ったことです。マンガ家が集まるパーティに行ったとき、大先輩のマンガ家さんがこう愚痴るのを聞いたんですね。「前はあんなにチヤホヤしてくれたのに、ちょっと人気がなくなったからって編集部の人はひどい!」「私はずっと同じように努力しているのに!!」と。
それを聞いて、「同じ努力だけだからよ」と思ってしまいました。あなたが同じだけ努力していたとしても、時代はどんどん進んでいるのだから、そのぶん取り残されてしまうのだと。
とくに人気商売はそうです。時代によって女性の生き方も変わるし、人間の暮らしも進化しますから、同じ努力をキープするだけでは、ただの「変わらない人」になってしまいます。今回1の努力をしたら、次回は2の努力とか、違う努力とかもしないと、「進歩のない人」「古い人」になってしまうんですね。
たとえばマンガ家の場合、ありがちなのは、ひとつウケたら、同じことをするというパターン。スポーツものがウケたから、また次もスポーツで……と、自分で自分の二番煎じ、三番煎じをやる。編集部もそのほうが計算できるし、安全だから、やらせたがる。でも、それでは作品はどんどん古びていきます。
私自身は、この仕事をやるにあたって、自分の性格で良かったと思うことがいくつかあって、そのひとつが「飽きっぽい」ということ。二番煎じは愚か、今やっている連載に、もう飽きてくる(笑)。
『プライド』も途中で飽きて、主人公を海外に行かせたりしました(笑)。そうすると、「外国のコンセントはどうなってるんだ?」なんて調べものが増えるから飽きないわけです。
つねに自分を飽きさせない工夫をする必要があったおかげで、つねに新しいものを取り入れて、前へと進むことができたと思っています。
「プライド」コーラス2007年4月号扉
取材・文/佐藤裕美