気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【おいしく正しく食べるための「習慣」】では、食べ物をしっかり、そして楽しく食べることに関するしきたり22~43をご紹介します。
今回は、しきたり35:持ち寄りパーティは、気取らず気張らず自分流にする、についてです。
●おいしく正しく食べるための「習慣」●
四季があることは、食材にも四季があるということ。四季は身体にも影響があり、身体をスムーズに動かすためにも、四季に合った食べ物を取り入れることが必要です。
食べられればなんでもいいのではなく、四季に合わせた食べ方、食材の選び方を考えましょう。
おいしく、楽しく食べることも大切です。姿勢、 箸の持ち方、食べる順序なども、昔から伝えられた習慣です。これらを守ってこそ、おいしく、そして楽しくいただくことができるのです。
しきたり35
持ち寄りパーティは、
気取らず気張らず自分流にする
気のおけない仲間で、一品持ち寄りの会をすることがあります。気のおけないとはいっても、一品となると、気を張ってしまいます。張らないつもりでも、つい張ってしまうのです。持ち寄りはいいことですが、どうも気疲れが先に立ってしまいます。私が人の評価を気にするせいでしょう。
人のことを気にしないといえば、フィンランドやオランダの人ほど気にしない人たちもいないのではないか、と思います。というのは、フィンランドでのこと。ふらりと立ち寄ったホストファミリーの友人宅。立ち寄っただけなので、コーヒーを飲んでちょっとおしゃべりをして帰る、とホストファミリーは言っていました。ところが、私はもの珍しさも手伝い、家中のあちこちを見学してまわり、キッチンのゴミ箱の合理的なのに驚いたりしてしまいました。こんな日本人が来たのですから、家には次々と友人が集まってきたのです。一人、二人……と気軽に立ち寄り、腰を落ち着けて話し込んでいきます。そのうち夕食時間となりましたが、話しは終わりません。誰も夕食だからとか、夕食どうするとか、何か夕食を作ろうかなど、まったく気にする様子がないのです。
どうするのかな? と見ていると、友人の夫が仕事から帰ってきて、話しに加わりながら、自分でパン、チーズなどを冷蔵庫から出して、目の前で食べ始めました。それでも、誰も夕食! などと気を張りません。ちょっとお腹の空いた人が、夫と同じように、冷蔵庫からチーズ、ハム、スライスきゅうりなどを出し、パンに挟んでコーヒーと一緒に食べだします。つられて私も食べたのですが、これがフィンランド流気取りのなさというのでしょうか、正直少々ビックリしました。
イラスト/みひらともこ
遠路訪ねてくれた人をもてなすでもなく、帰らないかなあというのでもなく、といって気張って夕食をというのでもなかったからです。とても自然で、気張らず、気取らず、でも気にしてくれていたからです。みんなはフィンランド語で話していましたが、時おり英語で話してくれ、私が退屈しないように気をつかっていたのです。
気張るのは、人の評価を受けたいためではなく、話しに熱中するのに、気張っていたのです。それは自分の考えを表現することだったのです。考えに気張りがあったわけで、夕食などどうでもよかったのでしょう。これこそ、フィンランド流。同様にオランダでも、食に気取り、気張りなどはありませんでしたが、それだからと気をつかっていないのではなく、部屋が寒くないよう暖房したり、リサイクルパークを案内してくれたりと、とても気配りをしてくれました。これが彼ら流気張りなのかもしれません。
この経験から、持ち寄りでも人の評価を気にするのではなく、自分流に手をかけた持ち寄りにしたい、とつくづく思ったものです。
次回は、しきたり36:お酒の席では、酒量や話しの内容など自分のルールを守って飲む、についてご紹介します。