明治40年以来、寺町二条で洋菓子店を営む「村上開新堂」。歴史ある老舗が多い通りに、ひときわレトロな雰囲気を漂わす店構えが目を引きます。昭和10年に建てられた洋風の構えは、老舗洋菓子店を物語る佇まい。店内に一歩入れば、昭和初期へとタイムスリップした心地に…。
そもそも村上家の歴史は、奈良時代、京都に移り住んだ時から始まります。昔から宮中との関わりが深かった村上家は、天皇の遷都の折に、東京に移り、宮内省に奉仕。この店の初代 村上清太郎氏は、明治4年に皇居内で誕生。後に伯父である「東京開新堂」の創業者の光保氏のもとで洋菓子の製造を習い、明治40年に村上家のはじまりとなる京都へ戻り、現在の店を開くことに。今も、「東京開新堂」とは、親しい繋がりがあるのだそう。
創業以来、京都の洋菓子の先駆者として、地元に愛され続ける「村上開新堂」に、今年3月、新たな歴史が加わりました。それは、店で販売されるケーキなどを味わえるカフェの登場です。
四代目となる若き店主、村上彰一さんは、それまで住まいとして使っていた、店の奥の日本家屋の部分を改装。「奥に、こんな素敵な空間があったのね~」と、初めてそこを訪れた人は、皆、思わず感激の声を上げるカフェなのです。椅子やテーブル、照明などシンプルな北欧家具を取り入れた設えは、趣ある和の佇まいと見事に調和し、緑繁る京都情緒あふれる中庭を眺めながら過ごす時間が、なんとも心地よいです。
さて、ここで頂くのは、「村上開新堂」を代表する焼き菓子のロシアケーキ。バター風味の香ばしい生地とほんのり甘いジャムやレーズンなどが、懐かしさを誘います。また、冬はみかん、夏はオレンジを使ったゼリーは、やはり長年京都の人たちに愛され続ける味のひとつです。それが、店で楽しめるのは、本当にうれしいこと。
四代目は、大学卒業後、菓子職人としての腕を磨き、店主となって35年ぶりの新商品となる「マドレーヌ」「寺町バニラプリン」を発売。それも歴史に新たな風を吹き込んだことのひとつです。贈答品として評判のクッキーは、今や4か月待ち。そんな根強い人気を誇る老舗に留まることなく、今「村上開新堂」は、未来に向かい動き出しました。
今まで、ちょっと敷居が高いイメージを持っていた観光客にとって、その場で老舗の味を楽しめるカフェの誕生、そして親しみあるマドレーヌやプリンという新製品の登場で、グッとこの店を身近な存在に…。カフェ限定のスイーツもあり、「京都に行ったら、このカフェに行きたい~」そんな声が聞こえてくる、今注目のカフェなのです。
村上開新堂
京都市中京区寺町通二条上ル常盤木町62 ☎075‐231‐1058
営業時間:10:00~18:00
日曜・祝日・第3月曜休み(カフェの営業は、10:00~16:30LO)
http://www.murakami-kaishindo.jp/
小原誉子ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」