こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。
全国の寺社を中心とした旅の情報をお届けしています。
今回は、京都の定宿のひとつとして、10年以上前からたびたびお世話になっている仁和寺の宿坊、御室会館をご紹介します。
仁和寺は、京都の北西部の「きぬかけの道」と呼ばれる道沿いにあります。
平安時代に、宇多天皇が、初夏に雪を見たいと所望したため、背後の衣笠山に白い絹をかけて雪に見立てたという伝承から、「きぬかけの道」という名前がつきました。この道沿いには金閣寺、竜安寺などもあり、仁和寺御室会館に宿泊すれば、徒歩でも観光することができます。いずれも世界遺産の寺ですが、祇園や清水寺周辺と比べれば混雑もやや少なめで、落ち着いて京都歩きを楽しめるエリアと言えます。
仁和寺御室会館をご紹介する前に、宿坊全般について、簡単に説明しておきましょう。はじめて宿坊に泊まる方は「敷居が高いんじゃないか」と思われるようですが、近年の宿坊は、多くが一般観光客にも門戸を開いているため、どなたでも簡単に泊まれます。普通の宿に泊まるのと同じように、電話をかけて予約すればよいのです。
しかし、普通の宿と少し違う部分もいくつかありますので、予約の際はご注意ください。
●食事の条件を確認。宿坊は一般には一泊二食付きですが、京都では、外にお店がたくさんあるため、夕食はオプションというところが多いです。
●食事は精進料理とは限りません。特に京都の場合、宿坊にも地元の料理屋さんが入っているケースもあり、肉や魚を使った京料理やおばんざいが出るところもあります。精進料理にこだわる方は、予約の際に確認してみましょう。
●ほとんどの場合、アメニティはあっても最小限です。中にはまったくないところもあります。予約の際に確認し、各自必要なものを持参しましょう。
●門限があります。お寺の施設ですから、これは当たり前のことです。
●坐禅、写経などを体験したい方は、事前に確認しましょう。写経は多くのところで受け付けてくれますが、中には、対応のないところもあります。坐禅は、禅宗の寺の修行なので、禅宗以外の宗派の寺ではほとんどできませんし、禅宗の寺であっても、住職さんが多忙の時などは対応していただけないこともあります。真言宗の寺では、「阿字観」という坐禅に似た瞑想を体験できることもあります。
●朝のお勤めに参列しましょう。お勤めとは、僧侶の方が朝いちばんにする読経のことです。寺によって、全員参加のところとオプションのところがありますが、これに参列しないと宿坊に泊まる意味がないので、この日だけはがんばって早起きしたいものです。
では、仁和寺御室会館のご案内をいたしましょう。
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御室会館は、世界遺産仁和寺の境内の一隅にあります。
建物は鉄筋で、冷暖房もきいて快適です。
お部屋はこんな感じです。一般旅館に近い施設なので、テレビ、冷蔵庫、金庫などがそろっており、すでにお布団も敷かれています。宿坊によっては、テレビがない場合もあります。
お茶もこのようにセットされています。
アメニティです。小さいタオルと歯ブラシ、小袋に入ったシャンプー。館内に大浴場があり、そちらにもボディソープ類が備えられています。それ以外に個人的に必要なものがある方は持参しましょう。
食事は併設の食事処、「梵」でいただきます。精進料理ではなく、一般の旅館に近い豪華なものです。この写真は夕食の一例です。季節によって献立は違います。
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二日目の朝はまだ少し暗いうちから起き出し、お勤めに出かけます。
外の世界との境界である三門の扉はまだ開いておらず、境内に一般観光客はいません。
お勤めに向かう僧侶の方々がやってきました。
わたしたちも、お勤めが行われる金堂に向かいます。これが実は仁和寺御室会館に泊まる最大の特典です。金堂は国宝の建造物で、普段は公開されていません。宿坊に泊まってお勤めに参列する人だけが、内部に祀られた仏様を拝むことができるのです。
お勤めは30分ほど。参列者は焼香もさせていただけます。終了後、僧侶の方による法話もあります。この日のお話は、仁和寺の歴史についてでした。仁和寺は最初の門跡寺院(皇室の方が僧となって入る寺)で、皇室との結びつきが強い格式の高い寺です。
創建は平安時代ですが、応仁の乱で荒廃。江戸時代になって、御所の紫宸殿だった建物を賜って、この金堂となりました。この建物は、もともと御所の建物だったという意味でもたいへん価値が高く、国宝に指定されているのです。
お勤め終了後はまだ人影の少ない境内をゆっくり散歩します。これも宿坊に泊まった人だけの特典です。桜や紅葉の時期などに泊まれば、一般の観光客が来る前に満喫できます。
宿坊に戻ると朝食が準備されています。早朝から起きて活動しているので、ひときわ美味しく感じられます。いただいたあとは、仁和寺の拝観を続けます。
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仁和寺は、京都でも数少ない、境内だけなら拝観料を支払わなくてよいお寺ですが、一隅にある「御殿、庭園」だけは拝観料がかかりますが、御室会館に泊まれば、このような無料チケットをいただけます。
こちらには、皇室ゆかりの寺らしい典雅な庭園や美しい襖絵のある建物があります。午前中の早い時間ならまだ観光客が少なく、ゆっくりと贅沢な時間を過ごすことができます。
この写真の宸殿は、歴代の門跡(住職)が公的な行事を行った建物で、江戸時代には御所から賜った建物が使われていましたが、明治時代の大火で失われたため、大正時代に再建されました。伝統にのっとった形ながらも、細部に近代的な装飾があります。
壁や襖には、四季の風景が描かれています。
宸殿前の庭園は江戸時代に造られたものです。ここから眺める五重塔がもっとも美しいと言われます。
黒書院と呼ばれる建物内部には、堂本印象が描いた襖絵があります。秋草が繊細に描かれています。
時間をかけてじっくり回っても、午前中ならまだまだ人影が少ないです。こんな素晴らしい景観を独り占めできるなんて、宿坊に泊まって本当によかったと思えます。
このように、仁和寺御室会館は、こちらに泊まった人ならではの素敵な特典がいっぱいです。料金も一般の宿に比べるとかなりリーズナブル。夕食はオプションでほかで食べてもいいし、門限も不自由なほど早い時間ではないので、使い勝手もよいです。次の京都旅のお宿の候補にしてくださいね。
料金などの詳細は、仁和寺のサイトをごらんください。
http://www.ninnaji.or.jp/syukubou/
吉田さらさ
公式サイト
http://home.c01.itscom.net/sarasa/
個人Facebook
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