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菓子職人の娘が引き継いだ老舗の干菓子店 「御菓子司 若狭屋久茂(わかさや ひさしげ)」

小原誉子

小原誉子

「京都観光おもてなし大使」&旅ライター
アナウンサー、テレビ番組プロデューサーなどを経て、集英社「エクラ」などのライターに。
2011年より京都に在住。
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阪急「大宮駅」から徒歩3分ほど、四条通を東に進んだ北側に古い趣ある商家があります。ここは創業享保元年(1716)という「御菓子司 若狭屋久茂(わかさやひさしげ)」。店先のガラス窓には、色とりどりの可愛らしい干菓子が並びます。京都の歴史を感じさせる建物に店を構える老舗の和菓子店は、店に人の姿がなく、ちょっと入りにくい気がするもの。実は、ここもそんなお店のひとつで、初めて訪れるには、ちょっと勇気がいりました。

「すみません、奥で作業しているので、店に立っている時間が少なくて…でも声をかけて下されば、すぐ出てきますから、遠慮なく~」とおっしゃるのは、この店の八代目店主である金澤倫子さん。このお店の娘さんで、昨年から本格的にお店を任されたのだそう。

そもそもここは、江戸時代に、福井(若狭)から京都に出てきた本家から暖簾分けで二条城のそばに店を構えたのが始まり。その後、昭和になって、この場所に移られ現在に至ります。上菓子などを作っていた店で、先代のお父様の代から干菓子づくりが盛んになったそう。

 

「子供の頃は、この辺は普通の商店街で、市電が走っていました」と金澤さん。今は周囲には、高層のビルやホテル、マンションなどが建ち並び当時の面影はなく、古い趣のある建物も、数えるほどしかなく、通りかかった外国人観光客が珍しそうに店内を覗く姿が目立ちます。

店内は、昭和初期の風情がそのまま…。木造の棚や木枠のガラスケース、当時最新モデルだったというレジスターなど、どこか懐かしい雰囲気が漂います。

 

実は、一昨年までお店は、ご両親ががんばってなさっていたのですが、体調を崩され、閉じようか…という状況になった時、娘さんである倫子さんが、本格的に引き継ぐことに。店の中を整えて、店に再び活気をもたらす共に新たなスタートを切りました。

実は、倫子さんは、「京都府菓子技術専門学校」で菓子職人としての腕を磨き、卒業後、家業に従事していたことがあります。その頃は、駅ビルに商品を納めるなど、本当に忙しく、家族で休みなく働いていたそう。しばらくしてお母様が体調を崩され、さらに駅ビルの体制も変化し、納品から撤退することに。家業の規模の縮小で、倫子さんはやむを得ず、他の仕事に。そんな時期、以前から趣味で続けていたインド舞踊を本気でやってみようという気持ちになったそう。それからは、資金を貯めたり、奨学金をもらい、インド古典舞踊を修得するため、日本とインドを行ったり来たりの生活を十数年送ります。今や、プロの踊り手として指導やパフォーマンスをなさるほどに。

 

「ずっと私としては家業を手伝いたいと気持ちが強かったんですが、両親は、自分たちの代だけでいいと言って、やらせてもらえませんでした」と倫子さん。おそらくご両親は、娘さんの将来を心配なさっていたのでしょう。「でも去年、両親の考えの方向転換で、店をやっていいとやっと言われたんです。これは私にとって神様の贈り物みたいです」と、目を輝かす倫子さん。

「もう店は私の代でやめてもいいと思っていたんです。でも娘が店をやりたいというんで…まぁ、どうなることか~」と、大変な仕事を心配しながらも、どこか嬉しそうな先代のお父様です。

 

八代目となった倫子さん、もちろん10年以上の菓子職人としてキャリアはあるものの、今もお父様の厳しい目が光る中、老舗の味を守り続けるための修業が続きます。お父様の優れた技を示す多数の表彰状が、この店の味の確かさを示しています。

四国、阿波特産の特選和三盆糖と若狭の本葛を使った打物の干菓子をメインにした商品展開。老舗の味を守ると共に、倫子さんらしい感性で、次々に新しいお菓子も誕生。「和三盆とお麩のぼうろ」648円は、白玉麩にすり蜜の衣をかけて、きな粉、プレーン、抹茶と和三盆糖による異なる味わいが楽しめるもの。

また洒落たパッケージも倫子さんのアイディアで。

「干菓子って同じように見えて、味って違うんですね~」と試食させてもらい、その上品な甘さに心和むよう。家でも、お茶を煎れると、ついひとつ…。

 

干菓子は、お茶席には欠かせないもの。京の四季を巧みに表現した風情あるお菓子で、日持ちすることから、今は京みやげとしても人気です。

 

ぜひ、京都のおみやげにおすすめしたい品です。

 

 

お菓子司 若狭屋久茂

京都市下京区四条通大宮東入ル唐津町513

075‐841‐4563

営業時間 10:00~18:00 不定休

インスタグラム wasan_hisashige

 

 

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