寺社部長の𠮷田さらさです。
今回は、現在、上野の東京国立博物館の平成館で開催中の
特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」(2021年4月13日〈火〉~5月30日〈日〉)をご紹介します。
数ある日本美術の中でも特に人気が高い鳥獣戯画。今回は、一度にすべてを見られます。
これまでも展覧会が行われてきましたが、絵巻物は長い上に、甲乙丙丁の四巻もあるため、一度に全巻を展示するのは難しかったようです。
東京国立博物館でも、2015年に甲乙丙丁四巻の一部を見られる特別展が開催されました。
あの時は、驚くほど大勢の人が鳥獣戯画を見るために行列したものですが、今回はコロナ禍のため事前予約制です。早めに予約して鑑賞するのがよいですが、感染対策を忘れずに。博物館側でも、できるだけの対策は取ってくださっています。
今回の特別展には、もうひとつ、これまでになかった特徴があります。
それは、もっとも人気が高いと思われる甲巻を、動く歩道に乗って観る仕組みになっていることです。今の時期、混雑を避けることはとても大切なので、これはとてもよいアイディアですね。動く歩道の流れはそれほど早くないため、じっくり見ることができます。ガイドフォンの解説を聞きながら見て行くと、動画を見るようで楽しいです。
こちらは甲巻の一部の模写です。甲巻は、鳥獣戯画と言えばだれもが思い浮かべる擬人化された動物たちの絵はこの巻です。猿やうさぎ、カエルなどの面白い動きに注目。
続くは乙巻。ここからは動く歩道でなく、通常の形で観ていきます。この巻は擬人化されていないさまざまな動物が描かれています。前半は馬、牛、鶏など、当時の人々にとっても身近な動物が登場。
後半は、象やヤギなど、実在するが当時の日本の人々が見たことがなかった動物と、架空の動物が描かれます。こちらは白象。海外から取り寄せた絵などを参考にしたのでしょうか。
麒麟など、想像上の動物も動きが感じられて、生きているかのようです。
丙巻も前半と後半で画題が変わります。前半は人間戯画。面白い遊びをする庶民の人々の姿です。これは、「首引き」という遊び。年取った尼僧さんと若い僧が対戦して、みんなが大笑いしています。人間も動物の一種で、生態を観察するのが面白いということがわかります。
丙巻後半は、再び動物戯画。甲巻にも登場した擬人化された動物たちが、レースやお祭りをしています。こちらは、蓮の葉を被ったカエルです。手に数珠のようなものを持っているので、お坊さんかもしれません。
丁巻は人間主体です。曲芸、流鏑馬、田楽などの行事が楽しげに描かれています。こちらは牛車。貴族階級の人々の服装が、簡略だがわかりやすいです。
第2章「鳥獣戯画の断簡と摸本」では、伝来の過程で一部のみが切り取られて掛け軸になったものや、ある段階で分かれて別の巻物になったものなどが見られます。過去の摸本もあります。それを見ると、今では伝来していない失われた部分もあったことがわかるようです。
こちらは東京国立博物館所蔵の甲巻の断簡です。左端に描かれている点描が甲巻に描かれた萩の花の一部であったことがわかり、断簡であることが証明されました。
第3章「明恵上人と高山寺」。高山寺は、鳥獣戯画が伝来した寺です。明恵上人は、その寺の寺域を後鳥羽上皇より賜り、華厳宗の道場として再興した鎌倉時代の僧侶です。
こちらが明恵上人の像で、高山寺の開山堂に安置されています。学問と修行に打ち込んだことで知られます。右耳の上部に少し欠損した部分がありますが、これは、明恵上人自身が、求道のために切り落としたと伝わっています。
高山寺と言えば、この子犬の像も鳥獣戯画に負けないくらいの人気者。明恵上人は犬が好きだったらしく、この像をそばに置いていた可能性もあると言われます。
今回の音声ガイドは山寺宏一さん。ウサギと子犬の役を恒松あゆみさんが担当し、鳥獣戯画の見方と明恵上人の物語をわかりやすく解説してくれます。
みんなが大好きな鳥獣戯画。ミュージアムショップのオリジナルグッズも充実しています。
なんと、ミッフィーと鳥獣戯画のコラボによる手ぬぐいもある。かわいすぎて使えない?
特別展 国宝 鳥獣戯画のすべて
東京国立博物館 平成館
2021年4月13日(火)~5月30日(日)
開館時間:午前9時-午後7時(最終入場は午後6時)※総合文化展は午前9時30分~午後5時
チケット予約など詳細は公式サイトをごらんください。
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