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博物館で旅行気分 特別展 ポンペイ

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。

おくればせながら、新年あけましておめでとうございます。

 

2022年最初の記事では、東京国立博物館で開催中(~2022年4月3日〈日〉)の特別展ポンペイをご紹介したいと思います。

コロナ禍の先行きが相変わらず不透明で、なかなか海外旅行に行かれそうもない日々が続いていますね。そんな中、この展覧会はとってもお勧め。ナポリ国立考古学博物館所蔵の至宝約150点が展示され、壁画や邸宅の模型、現地で撮影した映像などを見ているうちに、まるで実際にポンペイの遺跡を歩いているような気分を味わうことができるのです。

 

展示は、まずはポンペイがどんなところだったかという基礎知識から始まります。

西暦79年のある朝、イタリア中部にあるヴェスヴィオ火山の噴火が始まり、10キロほど離れたポンペイの街には火山灰が降り注ぎました。翌朝には火砕サージと火砕流が到達し、街はすべて埋まってしまいました。

バックス(ディオニソス)とヴェスヴィオ山

 

噴火前のヴェスヴィオ山の様子を描いたフレスコ画です。

噴火によって山頂部が吹っ飛んだため現在のヴェスヴィオ山は山頂が二つあるような形に見えますが、噴火前は頂上がひとつのとがった山で、山頂までブドウ畑が広がっていたようです。

 

 

女性犠牲者の石膏像

 

噴火物の堆積層の中で見つかった遺体を石膏取りしたもの。

身を守ろうとして瞬間的に伏せた様子がうかがわれ、いたましいです。どれほど多くの命がその日に消えたことでしょう。

 

 

フォルムの日常風景

 

ポンペイは最終的には人口1万人程度。公共の建築物が整備された都市でした。

人々の社会生活の中心は、この「フォルム」と呼ばれる場所でした。

市庁舎、投票所、食物などさまざまなものを売る市場も並んでいたそうです。現在の都市生活とほとんど同じですね。

 

 

(左)俳優(悲劇の若者役)、(右)俳優(女性役、おそらく遊女)

 

娯楽施設も整っていました。この二体は劇場に出演する俳優の像で、仮面をつけています。

背後の写真は大劇場です。

 

 

ビキニのウェヌス

 

沐浴する直前のウェヌス(ビーナス)の像。

レースでできたビキニのように見える金の装飾が残っています。ネックレスやブレスレットもしており、目は練りガラス。華麗なこの像は、一般の人の邸宅跡から発見されたものです。ポンペイの富裕層たちの豪奢な暮らしぶりが偲ばれますね。

 

 

ブドウ摘みを表わした小アンフォラ

 

カメオ・ガラスという手の込んだ技法で制作されています。

この写真は黒っぽく写っていますが、実際は透明感のあるきれいな青色です。正面はブドウ、側面は小さなアモル(クピド)たちがブドウの実を収穫している愛らしい絵柄。

クピドとは、キューピッドのことです。

 

 

マケドニアの王子と哲学者

 

上流階級と見なされるためには、政治的地位や経済的豊かさだけでなく、ギリシャ文化に関する教養も大切な要素でした。そのため、家にこうした歴史的なシーンを描いた絵画を飾ることが多かったのだとか。

 

 

エウマキア像

 

家父長制のローマと同様にポンペイでも女性の地位は高くなかったようですが、このエウマキアさんのように、貴族出身でなくとも裕福で、積極的に商業活動を行い、社会参加をした女性もいました。

 

 

ヘルマ柱型肖像(通称「ルキウス・カエキリウス・ユクンドゥスのヘルマ柱」)

 

奴隷として富裕層に仕える人々も多くいましたが、条件が整えば奴隷の身分から解放される場合もありました。そして解放奴隷の子どもには、完全な市民権が与えられました。

この像のルキウス・カエキリウス・ユクンドゥスは解放奴隷の息子で、銀行業を営み、上流階級の仲間入りを果たした人物ということです。

 

 

猛犬注意

 

侵入者に注意を促すために玄関口に掲げられたモザイク。多くの家にこのようなものがあったようです。

このワンちゃんの図柄は、今回の特別展を象徴するキャラクターで、ミュージアムショップに、ぬいぐるみなどのグッズが売られています。

 

この特別展ではポンペイの三つの邸宅の一部が再現展示されており、歩きながら、当時の人々の生活ぶりを体感できるのも魅力です。中でも「ファウヌスの家」は、約3000平米にも及ぶポンペイ最大の邸宅です。ファウヌスというのは、家の主人の名前ではなく、ここから牧神ファウヌスとされるブロンズ像が出土したことに由来します。

 

 

アレクサンドロス大王のモザイク

 

その「ファウヌスの家」の談話室から発見された床張りの巨大なモザイク。マケドニアのアレクサンドロス大王とアケメネス朝ペルシャの王ダレイオス3世の戦闘場面です。

この展示では、床にそのモザイクが再現されているだけでなく、前方スクリーンに高精細映像が映し出されています。

 

 

イセエビとタコの戦い

 

同じく「ファウヌスの家」のダイニングルームの床に貼られていたモザイク。

さまざまな種類の魚が驚くほど精密に描かれています。

 

 

竪琴奏者の家の一部再現展示。

ポンペイでも指折りの大きな家でした。このような中庭が三つもあったようです。

 

悲劇詩人の家の模型。前記の二つの家より規模は小さいが、多くの神話画が飾られていました。こちらは小さな模型で、全体の様子がよくわかるようになっています。

 

 

音声ガイドは、ポンペイの街で出会った二人の人物の会話形式です。

途中でクイズなどもあり、物語に引き込まれます。

 

 

当時の衣装を身に着けたモデルさんと記念撮影をすることもできます。

会期中、いつもいらっしゃるわけではないそうですが、もしも出会えたらラッキー。

 

ミュージアムショップもいろいろ充実。

「猛犬注意」のモザイクをモティーフにしたグッズなどが数々売られています。

こちらはマグカップとキーホルダー。

 

「猛犬注意」のワンちゃんのぬいぐるみやチェーンマスコットもあります。

バッグにつけておけばスリ除けになるかしら。

 

 

特別展 ポンペイ

東京国立博物館

2022年1月14日(金)~4月3日(日)

詳細は公式サイトをごらんください

 

 

𠮷田さらさ 公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

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