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毎日の暮らしの中に 『民藝』を取り入れる素敵な展覧会

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。

 

わたしはずっと昔から『民藝』の世界が好きだったのですが、近年展覧会も何度か行われ、ますます注目されているように思います。

コロナ禍を経て、家の中の暮らしに関心が向くようになったから?

しばらく海外に行けなかったため、改めて日本の伝統美に注目する人が増えたから?

理由はいろいろ考えられますが、これだけ繰り返し注目されるのは、『民藝』の価値が流行とは関係なく永遠であることの証拠だと思われます。

 

現在、世田谷美術館で開催中の『民藝MINGEI─美は暮らしのなかにある』(~2024年6月30日〈日〉)は、『民藝』がどのように人々の暮らしに生かされてきたか、そして今も作られ続ける『民藝』の広がりと自分の暮らしへの取り入れ方を学ぶことができる展覧会です。

ところでその『民藝』とは何でしょう。

 

今から約100年前、思想家の柳宗悦という人が提唱した民衆的な工藝のことです。高価な芸術品ではなく、日常の暮らしの中で使われてきた物たちの中に美を見出し、作り手に思いをはせる。それが柳氏とその呼びかけで集まった同人たちによる民藝運動の骨子です。

既存の価値観とは無関係なところで柳氏の美意識に基づいて発見された、素朴な中にセンスが光る工藝品たち。もしかしたら、わたしたちの手にも届くかも知れない愛すべき品々をゆっくり鑑賞しましょう。

 

 

第Ⅰ章は、「1941生活展」。

1914年、柳宗悦氏は目黒に設立した「日本民藝館」で「生活展」を開催しました。自身の目で選んだ品々を使ったダイニングルームを展示したのです。この章では、その展示の再現を試みています。

1941年と言えば太平洋戦争開戦の年です。そんな時代に、このようなライフスタイルを提唱していた人がいたとは、驚きしかありません。

 

日本で作られたものばかりでなく、古い時代にヨーロッパで作られた骨とう品、柳氏自身が現地で買い集めてきた外国の民藝など、さまざまなものが並んでいます。実際に柳氏の家で使われていたものもあるようで、よく見ると、かなりいたんでいる食器類も。

また1941年当時の写真には写っていても、割れてしまったか何かで、集められなかったものもあるとのこと。これぞまさに暮らしに生かされてきた民藝の美。

 

 

第Ⅱ章は「暮らしのなかの民藝」

この章では、柳宗悦氏とその同人たちが収集した民藝の品々が、「衣・食・住」という観点で紹介されます。古い時代のものだけでなく、彼らが活動を行ったのと同じ時代に作られた品物も多く、それらが作られた土地や職人たちにも光が当てられました。

厚司(アットゥシ)
アイヌ(北海道)19世紀 静岡市立芹沢銈介美術館

 

「衣」のパートに展示されているアイヌの衣服。樹木の皮の繊維で織られた布の上に木綿の布を縫い付け、アイヌ独特の渦巻き模様などの刺繍が施されています。

この模様にはどんな物語が秘められているのでしょう。

深鉢 南安曇郡小倉村出土(長野)
縄文時代中期 日本民藝館

 

これまでは、縄文式土器を歴史的遺物、もしくは古代人のアートとして鑑賞していたので、用途という観点で見たことはあまりなかったのですが、煮炊きや食物の保存のために使われたものなので、確かにこれこそが「食」に関する民藝の原点なのでしょう。

日常的に使うものなのに、こんなに美しい装飾をほどこす縄文人のセンスに感動。

中国・清時代のストーブ、東北地方の箪笥、オーストリアの椅子、栃木県で作られた箒など。作られた時代も場所もそれぞれに違うのに、不思議に日本の「住」の空間にマッチしています。

古くから職人が作り伝えてきた品々は、国が違っても、どこかしら共通する部分があるのかも知れません。

柳氏とその同人たちが好んで出かけた琉球(沖縄)の品々。美しい民藝が連綿と作られ、生活の中で使われてきた奇跡のような場所であったとか。

 

 

第Ⅲ章は「ひろがる民藝─これまでとこれから」。

柳宗悦が亡くなった1961年以降、民藝運動はさらなる広がりを見せ、新たな世界を展開しました。

捺染貫頭衣
スーダン 20世紀 静岡市立芹沢銈介美術館

 

柳氏の志を継いだ濱田庄司や芹沢銈介など民藝運動の同人たちは、海外の品々を紹介する『世界の民藝』という本を刊行しました。

こちらは芹沢銈介が初のヨーロッパ旅行の際にパリの骨とう品店で見つけたアフリカの衣服です。

第Ⅲ章の後半では、現在も日本各地で作り続けられる民藝が紹介されます。

こちらは大分県の小鹿田焼。柳氏とその同人たちは、ここで焼かれる品物に魅せられ、しばしば足を運んだそうです。今も変わらず、当時と同じ手法で作り続けられています。

 

深く美しい色合いと味わい深い形が魅力の倉敷ガラス。工場生産によるガラス製品が普及する中、職人による手仕事のガラス作りは、沖縄など日本各所で継承されています。

倉敷ガラスは、1964年に、クリスマス飾りのガラス玉を作っていた職人さんが始めたものです。

 

型染カレンダー 1973年
芹沢銈介 東京 1972年 静岡市芹沢銈介美術館

 

富山県で作られる八尾和紙を使ったカレンダー。民藝運動の同人だった染色家の芹沢銈介は、1945年からこのカレンダーを作り始め、1952年から八尾和紙を使用。現在も復刻版が作り続けられています。

 

セレクトショップBEAMSのバイヤーとして長く活躍したテリー・エリスさんと北村恵子さんによる、現代のライフスタイルと民藝を融合したインスタレーション。

お二人は2022年、東京、高円寺にセレクトショップMOGI Fork Artをオープンし、海外から買い付けてきたクラフトなどとともに日本の民藝の品々も取り扱っています。

 

今回の企画展は特設ショップの充実ぶりも見どころです。手作りのガラス製品、手染の手ぬぐいや布、沖縄のやちむんなど、魅力的な雑貨がぎっしり。

 

 

『民藝MINGEI─美は暮らしのなかにある』

世田谷美術館 2024年6月24日(水)~6月30日(日)

公式サイト

 

富山県美術館 2024年7月13日(土)-9月23日(月・祝)

名古屋市美術館 2024年10月5日(土)-12月22日(日)

福岡市博物館 2025年2月8日(土)-4月6日(日)

※展示作品は会場によって一部入れ替えが予定されています。

 

𠮷田さらさ 公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

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