京都の8月は、「五山の送り火」や「万灯会」など、先祖を迎え、共に過ごす時間です。お盆になると、「六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)」や「千本えんま堂」などで「迎え鐘」と「送り鐘」を撞き、ご先祖様を迎え、そして送ります。いつもバタバタと過ごす私も、さすがにこの時期は、ご先祖を思い、日頃の無沙汰を仏壇にお詫びする次第です。仏壇といっても、引っ越しが多く、また狭いマンション暮らしでは、小さな位牌と小さな阿弥陀様の木像があるだけのスペースです。
大好きだった父を思い、先祖代々と書かれた金箔の位牌に手を合わせますが、海外での時間が多かった父のイメージからして、その位牌がどうもしっくり来ないという感覚にとらわれていました。そんな時、出会ったのが「位牌の森」のオブジェのような位牌です。
主宰をしているのは、大阪芸術大学で近代彫刻を学ばれた彫刻家の三田一之さん。ご自身のお父様を看取られたことをきっかけに、故人への思いや故人の個性が表現される位牌づくりを始められます。
京都の町から車で30分ほど、比叡山に連なる比延平の住宅地に、三田さんのアトリエとお住まいがあります。アトリエの中には、さまざまな形の作品が並び、それが位牌とは思えぬほどスタイリッシュ。魂、光、永遠などの言葉が思い浮かぶ抽象的な形は、見る人の心に沿ったものになります。
素材は、黒檀、柏などをはじめ、天然木で、自然の恵みとパワーをも感じさせるもの。「注文される方には、故人などの写真や思い出の品を見せて頂いたり、またお話を伺ったり、また故人への思いを込めて、製作させていただきます」と三田さん。
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位牌の表に刻む言葉も、戒名ではなく、故人への思いなどです。仏像なども彫られる三田さんは、故人の思い出の品などを取り入れたり、思い出の場所をイメージした作品なども手掛けられています。
近年、家庭用の仏壇の需要は急激に減少。それは黒塗りの従来の仏壇が、住まいの雰囲気に合わないことが最大の理由とか。「しかし、亡くなった家族への思いが薄れているわけではないのです。仏壇じゃなくても、故人を思い、手を合わせ、祈るよりどころになるものは必要ではないでしょうか」とおっしゃいます。
実は、位牌は、人間だけに留まらず、家族として長く暮らした犬や猫などを思い注文される方も多いそう。
家族が集うリビングなどに、ピッタリのスタイリッシュな形。故人と共にすごし、家族を見守る位牌です。思わず手を合わせたくなる…そんな身近な位牌になります。
愛するものを思う…その心を表現できる位牌。
大きさや素材、デザインなどにより価格は変わりますが、12万円からが目安。注文してから1か月ほどかかり、ホームページからも注文できます。
宗派などに関係なく、故人を思う心が求める位牌なのです。
位牌の森
滋賀県大津市比叡平1-12-6
077‐529-0711 アトリエに訪問の折は、事前に連絡を
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」